小笠原近海:「宝石サンゴ」根こそぎ密漁 中国船が続々

毎日新聞 2014年10月18日 12時37分(最終更新 10月18日 12時47分)

領海内で密漁していた中国のサンゴ漁船(下)を取り締まる海上保安庁の巡視船=小笠原諸島の父島沖で2014年10月5日、横浜海上保安部提供
領海内で密漁していた中国のサンゴ漁船(下)を取り締まる海上保安庁の巡視船=小笠原諸島の父島沖で2014年10月5日、横浜海上保安部提供

 ◇地元漁業に深刻な影響 取り締まり強化を求める声

 世界自然遺産の小笠原諸島(東京都)の近海で、中国のサンゴ漁船による密漁が急増している。背景には中国で宝飾品として珍重される「宝石サンゴ」の価格高騰があるとみられ、地元漁業に深刻な影響が出ている。住民の不安も高まっており、取り締まり強化を求める声が上がっている。【佐藤賢二郎】

 海上保安庁によると、小笠原近海に中国のサンゴ漁船が出没し始めたのは今年4月という。当初は数隻だったが、9月に入って10〜20隻規模に増加した。海保は大型巡視船2隻を送り、航空機も投入して態勢を強化。

 今月5日には、父島沖10キロの領海内で操業中の中国人船長(39)を、外国人漁業規制法違反容疑(領海内操業)で逮捕した。しかしその後も中国漁船は減らず、13日に46隻、14日にも31隻が確認された。16日にも嫁島(よめじま)沖の日本の排他的経済水域で、停船命令を無視し逃走したとして中国人船長(39)を漁業法違反容疑で逮捕した。

 日本周辺の中国漁船によるサンゴ密漁は、これまで沖縄近海が中心だった。17日にも沖縄・宮古島の東約72キロの排他的経済水域で、中国漁船の船長(51)が漁業主権法違反容疑(無許可操業)で逮捕された。昨年は同島周辺で3隻を拿捕(だほ)した。海保の佐藤雄二長官は今月、記者会見で「沖縄周辺の中国漁船が(小笠原諸島に)移動してきた可能性がある」と指摘。水産庁も漁業取り締まり船と航空機を派遣する準備を進めている。

 日本珊瑚商工協同組合(高知市)によると、宝飾品となる宝石サンゴの中でも特に「アカサンゴ」に高値がつく。2012年の平均取引価格は1キロ約158万円で、05年の約27万円から5倍以上に高騰。同組合の吉本憲充理事(68)は「アカサンゴは中国で魔よけとして古くから珍重され、官僚への賄賂としても需要が高まっている」と話す。

 小笠原諸島周辺の水深200〜300メートルの海底は良質なアカサンゴの産地として国際的に知られており、水産庁関係者は「沖縄での取り締まり強化や、乱獲によるサンゴ資源の枯渇が(小笠原での密漁増加の)要因ではないか」と分析する。

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