日本政府が、旧日本軍による慰安婦強制動員を否定する対外広報戦を本格化させる。関連予算も来年は2倍以上に引き上げる。
菅義偉官房長官は15日の国会答弁で「(慰安婦問題に関する)日本の名誉や信頼の回復を図るべく、戦略的に(国際)広報戦略を行っていきたい」として、来年度の国際広報予算を2倍に引き上げる考えを示した。日本政府は、昨年度8億5000万円だった国際広報予算を今年度は18億円に増額している。産経新聞によると、内閣府は来年度の関連予算の概算要求で52億2000万円を計上しているという。
日本政府は14日の閣議で、朝日新聞が慰安婦関連の記事を取り消した問題などについて「国際社会で客観的な事実に基づいて正しい歴史認識が形成され、日本の基本的立場や取り組みが正当な評価を得られるよう対外広報を強化したい」という答弁書を採択。朝日新聞が今年8月、済州島で女性たちを慰安婦として強制連行したとする故・吉田清治氏のインタビューについて「裏付ける証拠がない」との理由で関連記事を取り消して以降、日本政府と与党・自民党は慰安婦の強制動員を否定する動きを本格化させている。慰安婦強制動員を認めて謝罪した河野談話は、吉田証言とは関係なく日本政府の文書と被害者の証言を元に作成された。
自民党は今月中に、慰安婦問題に関する国際広報戦を担当する「特命委員会」を党内に設置する。稲田朋美・自民党政調会長は「朝日の誤報のせいで日本の名誉は地に落ちた」として、(特命委員会を通じて)国連や各国政府、海外報道機関に対する広報について研究し、政府にも対策の取りまとめを促していく考えを示した。
河野談話を否定する動きが本格化していることについて、日本共産党の機関紙「赤旗」は「首相を含め、閣僚19人のうち10人が『日本の前途と歴史教育を考える議員の会』に所属しているため」と報じた。1997年に結成されたこの会は当時、中学校の教科書に記述されていた慰安婦関連の内容の削除運動を主導した。発足当時は安倍晋三現首相が事務局長、高市早苗・現総務相が幹事長代理、下村博文・現文部科学相が事務局次長を務めていた。
一方、岸田文雄外相は14日の国会で「わが国固有の領土である竹島(独島の日本名)は、わが国の主張をしっかりと伝え、粘り強く対応する」と述べた。