特許庁は17日の有識者会議に、これまで「社員のもの」だった仕事上の発明の特許権を原則として「会社のもの」にする制度改正案を示した。ただ、発明に貢献した社員への報奨のルール作りなど事務負担が増えることに日本商工会議所が反発。企業側の判断で特許権を社員に帰属させることも可能にする案も新たに提示した。
11月に有識者会議を再度開き、特許法改正案をまとめる考えだ。特許庁の有識者会議は、これまでは発明した従業員が持っていた特許を会社のものとするよう検討してきた。製品開発を早め、発明報酬などを巡って企業と従業員の訴訟リスクを減らす狙いもあった。
同時に会社が特許を持つ際には、従業員に報奨を払うルールづくりを全社に義務付ける方向だった。多くの大企業は既に報奨ルールを定めているが、大半の中小企業には報奨のルールがない。
日本商工会議所などは「報奨のルールを義務付けることは負担が大きい」と反論した。議論はまとまらず、妥協案として、特許は「会社のもの」という原則を維持しつつ、会社の判断で特許を社員が保有できるようにする案を示した。
日本の特許制度は90年以上、企業ではなく発明した従業員が特許を持つ仕組みだった。一方、英国やフランスなど欧州の多くの国は初めから会社が取っている。さらに最近の発明はチームでの研究開発が主流になっており、特許の帰属先を特定の個人にせざるを得ない仕組みを改めるよう求めていた。
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