ノーベル賞 中村修二さんが語る10月18日 7時41分
青色LEDの開発に成功し、ノーベル物理学賞を受けることになったカリフォルニア大学教授の中村修二さんが、受賞が決まってから初めて帰国し、17日夜、NHKの単独インタビューに答えました。
中村さんは、みずからの力で道を切り開いてきた研究者人生を振り返るとともに、独創的な成果を出す人材が育ちにくい現在の日本の研究環境に苦言を呈しました。
日本時間の今月7日、ノーベル物理学賞の受賞が決まった中村修二さんは、住んでいるアメリカから今月15日に帰国し、17日夜、東京都内で、NHKの単独インタビューに応じました。
中村さんは、研究者として生きてきた人生を振り返り、「子どもの頃、算数が苦手だったが、父が教えてくれる『父ちゃん算数』で好きになり、理科系の勉強が好きになった。本を読むのは嫌いだったが、物心が付いたころから、1人で物事を深く考えることは好きだった。大人になって研究で行き詰まって、どん底まで落ち込んでも、深く考えれば、いいアイデアが出て解決すると信じて頑張ってきた」と明かしました。
地方の大学や企業の出身であることについては、「地方大学では、すべてを自分でしなければならないので、独立心が芽生えることが強みになると思う。会社に就職してからも初めの10年間は、さまざまなことを自分の力でしなければならず、そのとき苦労して習得した技術がその後の青色LEDの開発に生かされた」と振り返りました。
一方で、日本の研究者を取り巻く環境については、苦言を呈しました。
社員の開発した特許の権利を初めから「企業のもの」とする特許制度の見直し案については、「アメリカのように研究者が簡単にベンチャー企業を立ち上げられる環境なら見直しもよいと思うが、現状では反対だ。日本では企業に所属する研究者の待遇が悪く、プロスポーツ選手のように、研究者にも成果に見合った報酬を出すべきだ」と批判しました。
また、すぐには実用に結びつかない基礎研究の支援態勢について、「民間では、時間がかかる基礎研究にお金を投じることは難しいので、国が主導して、長期的な基礎研究にお金を出すようにする必要がある」と指摘しました。
さらに、中村さんは、生まれた科学技術を生かすべき立場にある日本のメーカーの弱点も指摘しました。
携帯電話や液晶テレビ、半導体チップを例に挙げ、「日本はすぐれた発明をして、よい製品を送り出してきたが、市場は国内ばかりで世界に製品を売る力が弱く、世界標準に至らないのが問題だ」と述べました。
そして、みずから開発に携わった青色LEDについても、「何年かすれば海外に押され、日本のメーカーの製品が無くなってしまうかもしれない」と危機感を口にし、「背景には、日本人が英語に弱いということばの問題がある」と分析していました。
今後の目標について中村さんは、「今、市販されている発光ダイオードは使用した電力の60%程度が光になり、残りは熱となって消えてしまう。これを100%に近づけることが研究開発の次の目標だ。ノーベル賞の受賞はうれしいが、あくまでも有名な賞をもらったというだけで、研究はこれまでどおり続けていきたい」と話しています。
中村さんは若い研究者に向けて、「一番大切なのは、自分が何を得意として何をやりたいのかを見つけ、基礎的な勉強をきちんとやることだ。好きなことであれば勉強は苦にはならない」とエールを送りました。
そのうえで「日本の研究者が世界を相手に勝負をするには、まず、ことばの問題がある。そこで、研究者を志す人には若い頃に5年以上海外に住んでほしい。英語の習得は出来るし、日本を外から見ることで物事の見え方ががらりと変わる。日本の若者の夢は大企業に就職することになりがちだが、アメリカに行くとベンチャー事業を始めることが夢になる。私は米国での生活を45歳で初めて経験したが、それを是非、若いうちに経験したうえで、将来を考えてほしい」と訴えました。