17 10月 2014, 13:41

変異するエボラウィルス

変異するエボラウィルス

   エボラウィルスが変異を始めている。既に変種が300種あまり報告されている。これら変異体が一層の感染拡大につながり、万能ワクチンの開発にも遅れが出ることが懸念される。人類とエボラの戦い、緒戦は人類が負け越している。国連エボラ出血熱緊急対策課のアンソニー・バンベリー代表はそう語る。

   エボラウィルスは急速に進化を遂げている。現在までに6つのタイプが知られており、そのそれぞれが次々に変種を生み出している。一体いまどれだけの種類が存在するのか、正確なところは分からない。そう語るのは、イワノフスキイ記念ウィルス学研究所バイオロジー・アルボウィルスインジケーター研究室長アレクサンドル・ブテンコ氏だ。

   「1976年にザイール(現・コンゴ民主)で発見された第1のタイプに加え、遺伝子型の異なるものとして、スーダン・エボラウィルスがあり、またコートジボワールで発見されたウィルスがあり、ウガンダで発見されたウィルスがある。ついで米国およびイタリアでフィリピンキヌザルから分離されたレストンウィルスがある。それからまた、フィリピンおよびインドネシアで豚を宿主とするウィルスが盛んに循環していることが判明した。ただし、このウィルスには病原性がない。そして最後の遺伝子型がスペインのコウモリに発見された。このように、原型とは異質なエボラウィルスが群れをなしている。これほどの多様性があるところを見ると、進化は進んでいる。変異体は必ず現れるだろう」

   最悪なことに、亜種それぞれに異なるワクチンが必要だ。ザイール・エボラとスーダン・エボラのワクチンはとうの昔に作られている。しかしザイール・エボラのウィルスから作られたワクチンはザイール・エボラのウィルスにしか効かない、という具合なのだ。複合的なワクチンが必要だ、と言われるゆえんである。

   世界中の科学者がワクチン開発に取り組んでいる。前進はある。しかしもう半年ないし一年を待たねば、大量生産には漕ぎ着けない。先日は中国が西アフリカ諸国に試験ワクチンJK-05を送る決定を下した。もともと非常事態に備えて軍医学アカデミーで中国軍向けに開発が進められていたものだ。まずは国内で実験されるということだが、広範囲への適用は禁じられている。

   その間にも蔓延は進行している。米国で2人目の感染者が報告された。両人ともテキサス州の病院でリベリア男性トーマス・ダンカン氏の看護に当たっていた医務従事者であった。ダンカン氏本人は先週死亡している。

   難しいのは、エボラ出血熱の初期症状が、気力の衰え、発熱、喉の痛みなど、インフルエンザや風邪の症状に酷似していることだ。数日遅れてようやく嘔吐、下痢、発疹、内・外出血といった顕著な症状が出る。こうなれば診断も容易で、隔離も行われるが、時すでに遅しである。米国では、エボラに感染した女性看護師が、エボラ感染者の看護に際して必要な予防措置を講じなかったとして、病院の指導部を告訴した。この女性看護師は現在入院中であるが、感染を自覚していない段階で、130人の乗客とともに飛行機に乗っていた。この130人の中に感染者が出ているかも知れず、緊急に対策チームが創設され、捜索が行われている。

   WHOによれば、現在、感染例は9000件に上っている。もし近日中に効果的な蔓延防止策が講じられなければ、一週間の感染者が1万人という状況が年内にも出現する。

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