宇宙ごみ:人工衛星守れ!防衛省概算要求、監視部隊を新設
毎日新聞 2014年09月21日 09時10分(最終更新 09月21日 09時48分)
防衛省は、情報収集や通信に使用している人工衛星を「宇宙ごみ」との衝突や衛星攻撃兵器から守るため、宇宙空間を監視する専従部隊を自衛隊に新設する。数十人規模で発足させる計画で、来年度予算の概算要求で調査費1億円を計上した。
各国は人工衛星を航空機、艦船との通信やミサイルの監視、偵察など軍事目的で広く利用している。日本政府では内閣衛星情報センターが情報収集衛星4基を運用。防衛省は民間の通信衛星を利用しているが、3年以内に2基の運用を開始する予定だ。
地球の周囲ではロケット部品や衛星の残骸が宇宙ごみとなって飛び交っている。財団法人日本宇宙フォーラム(東京都千代田区)によると、運用中の人工衛星などに宇宙ごみが衝突したトラブルは4回発生している。2009年には運用を終えたロシアの通信衛星に、米国の通信衛星が衝突する事故も起きた。
また07年には中国が弾道ミサイルで自国の衛星を破壊する実験を成功させた。こうした現状から、同省は地球の周辺を監視する態勢が必要と判断した。
レーダーや大型望遠鏡で宇宙ごみを観測する施設は岡山県に2カ所ある。日本宇宙フォーラムが運営し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が活用している。同省は今後、宇宙監視部隊の創設に向けてJAXAなどと連携し、ごみの追跡や解析のシステムを整備する方針だ。
また、同省は、人工衛星に搭載して弾道ミサイル発射の兆候を探知する赤外線センサーの開発に乗り出す。火山や山火事を監視するためにJAXAが19年に打ち上げを計画している先進光学衛星に搭載し、宇宙空間で実証研究を行う計画だ。【斎藤良太】
◇宇宙ごみ
役目を終えた衛星や打ち上げに使用したロケットの破片などのこと。「スペースデブリ」とも呼ばれる。8月現在、10センチ以上のものが約1万7000個、浮遊しているとされる。秒速7〜8キロの猛スピードで地球の周りを回っている。