特許庁:社員発明「会社のもの」 適切な報奨条件
毎日新聞 2014年10月17日 21時15分(最終更新 10月17日 21時39分)
特許庁は17日、社員が仕事で行った発明(職務発明)の特許権について、社員への適切な報奨を義務づけることを条件に、「会社のもの」とする方針を固めた。これまでは発明による特許は「社員のもの」としていた。企業に特許をより使いやすくさせる一方、社員に不利にならないように報奨を義務付けて研究開発意欲を確保し、競争力の向上を狙う。
17日開かれた特許庁の「特許制度小委員会」で見直し案が提出され、おおむね委員らの了承を得た。早ければ開会中の臨時国会に特許法改正案を提出する。
特許庁の見直し案は、職務発明に関する特許は、初めから会社に帰属すると規定。その代わりに、特許の価値に見合った対価の支払いや、昇進や留学などの報奨が得られることを社員に保障し、研究開発意欲が低下しないようにする。具体的な報奨ルールは労使の合意で決めるが、政府がガイドラインを設け、参考にしてもらう。
ただ、中小企業などにとってこうした取り決めを作る負担は重い。取り決めを設けない場合、現行通り特許を「社員のもの」とすることも認める。
現行の特許法は、職務発明は社員に帰属すると規定している。企業が自由に特許を使うには、契約や社内規則で、特許の価値に見合った「相当の対価」を支払い、権利を譲り受ける必要がある。しかし、どの程度が「相当の対価」に当たるかは不明確で、かつては数千円や数万円しか払わないケースが多かった。
このため、青色LEDの発明でノーベル物理学賞を受賞した米カリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二教授が2001年、勤務していた企業を相手に巨額の対価を求めるなど、「対価が不十分」と不満を持つ社員が企業を訴えるケースが相次いだ。同訴訟では200億円の支払いを認める1審判決が出た後、8億円超で和解が成立。危機感を強めた経済団体などから、制度の見直しを求める声が上がっていた。【平地修、松倉佑輔】