Linus Torvalds は、一時はもっと早く Linux カーネル 3.17 をリリースしたいと思っていたのですが、結局のところ日曜日（10 月 5 日）に公開し、「通常」のスケジュールどおりとなりました。
「この 1 週間はまずまず平穏だったので、3.17 を通常どおりのスケジュールでリリースしたことについては、特に気にしていません (1 週間早くリリースできるかもしれないという楽観的スケジュールは達成できませんでしたが)。」と Torvalds は公式発表に書いています。
（Torvalds は 8 月の Linux 3.16 RC2 の際にも通常スケジュールからずれたことに注目すべきです。その時は Linux の 23 回目の誕生日に合わせるために、日曜日ではなく、月曜日にリリースしたいという「感情的理由」を選択したのです。）
いずれにせよ「添付のショートログでも分かるように、この 1 週間大きな出来事はありませんでした」と Torvalds は説明しています。「主にドライバー (i915、nouveau、ethernet、scsi、sound) と一部のネットワーク関連のバグ修正、それとあちこちに雑多なノイズがあったくらいです。」
今後は今月中旬に開催される LinuxCon Europe をはじめとする出張が入っているため、Linux 3.18 のマージ ウィンドウは、通常と少し異なり、3 週間延びるか、単に開始が遅れると彼は言います。
一方で 3.17 はリリースの準備が整い、数々の改善点が詰まっています。以下が 3.17 の重要な新機能です。なお、Linux 3.17 もコードネーム「Shuffling Zombie Juror」シリーズのひとつです。
1. Y2K38 対策
UNIX ベースのシステムでは、時間の保持方法が理由で、2000年に Y2K 問題が生じたのと同様の問題が 2038 年に起きることは以前から知られています。しかし、Linux カーネルの開発者たちは既にこの問題に取り組んでいます。「2038 年に備えて時間管理のコア部分にいくつかの修正を加えました」と開発者の Jonathan Corbet は 3.17 マージ ウィンドウの初期のころに記しています。
2. メモリ管理の改善
Linux 3.17 のもう 1 つの新機能はカーネルのメモリ管理改善を狙った「フェンス」です。「フェンス」はバッファに設定することができます。バッファは、ハードウェアのデータで満たされたり消費されたりしますが、フェンスを設定すれば、ユーザー スペースが待ち合わせをすることなく他のデバイスにバッファを渡せるようになります」と開発者の Maarten Lankhorst は説明しています。それはメモリがより効率的に使用され、ユーザーにとって遅延や割り込みが少なくなることを意味します。
3. 多数のARM サポート
Linux 3.17 に追加された新しいドライバーやアーキテクチャ サポートは数多くありますが、その中でも ARM が大きな割合を占めています。数多くの追加の中で例をあげると、ARM ベースの Broadcom STB SoC や Allwinner A23 のためのインフラストラクチャ サポートなどがあります。
4. プロファイルの整理
「スッキリかつサッパリ」はあらゆるソフトウェア プロジェクトの共通の目標であり、Linux 3.17 はその方向に向けて一歩を示しています。Corbet によると、実際、少なくとも 14 の「愛されることのないドライバー」がステージング ツリーから除かれ、25 万行のコードが取り除かれたとのことです。古い POWER3 と rs64 アーキテクチャのサポートもカーネルから除外されました。「これらのアーキテクチャは何回も新バージョンのリリースが行われているうちに明らかに動作できなくなっていたのですが、誰も気づきませんでした」と Corbet は言います。Samsung S5P6440、S5P6450、および S5PC 100 システムのサポートも同様です。
5. Xbox One コントローラーのサポート
企業ユーザーにとってはあまり関心がないことかもしれませんが、Linux を利用しているゲーマーにとって、Xbox One コントローラーはこれまで問題を引き起こしていました。「Xbox One コントローラーはデータ送信を開始するにあたって初期化メッセージを要求するため、xpad_init_output 関数が必要です」と開発者の Ted Mielczarek は 8 月のコミット リクエストで説明しています。「Xbox One コントローラーには Xbox 360 コントローラーにあるような LED がないので、当該機能は実装されていません。」Xbox One の「ランブル(振動)」機能のフルサポートはまだできていませんと付け加えています。
もちろんこれらは Linux 3.17 のすべての改善点の表面をかすったくらいです。より完璧な詳細については、Kernel Newbies で現在準備中のチェンジログをご覧ください。