認知症:「現実伝えたい」国内初の当事者団体発足

毎日新聞 2014年10月17日 15時00分

 認知症の本人の意見を社会に発信し、政策に反映させることを目指した当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」が今月、東京都内で発足した。本人による全国組織は国内初。認知症になると何も分からなくなるという偏見が強い中、本人が前面に立って発言することで、認知症の施策が進むきっかけになると期待されている。

 設立メンバーは仙台市や神奈川県、静岡県など全国各地の40〜80代までの認知症の男女11人。意思を表明できる初期段階の人が中心だ。

 共同代表の一人、鳥取市在住の藤田和子さん(53)は2007年、45歳でアルツハイマー病と診断された。しかし医師から症状についての詳しい説明はなく、得られる情報も介護者対象のものばかりで役に立たず、自分がこの先どうなるのか、強い不安を感じていた。

 診断技術が発達し、認知症は早い段階で見つけられるようになった。一方、診断後の適切な支援は整っておらず、早期診断を受けた人の多くが藤田さんのような不安を抱えている。藤田さんは「当事者が発言することで社会の偏見をなくし、認知症になっても安心して暮らせる社会にしていきたい」と話す。

 今後、診断直後から役立つパンフレットの作製や、認知症施策の推進に向けた法整備を働きかける。

 認知症に詳しい、東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一研究部長は「団体の設立は認知症施策に当事者の視点が入る歴史的な転換点につながり、医学分野への貢献も期待されるだろう」と話した。【細川貴代】

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