対策マニュアルA

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  1. サイト管理者等に対する請求

    1. webフォームやメールでの請求をする場合

      掲示板管理者等のサイト管理者等に対して請求する方法としては、web上のフォームから行う方法、プロバイダ法ガイドラインに則った方法、裁判手続き(仮処分)を利用する方法があります。
      弁護士さんに最初から仮処分を選択してもらう方法もありますが、他にも以下のような方法があります。

        webフォーム等からの依頼 ガイドラインに則った請求 裁判などの仮処分
      期間 1日から数日で対応される
      またはなんらの回答もなしの場合も
      回答までに1月前後のサイトが多い。
      1週間程度で回答が出るサイトも。
      裁判所の決定が出るまでに2週間くらい。
      効果 フォームからのメッセージを管理者が確認しているのであれば、
      削除してもらえる可能性が高いけれども、
      発信者情報開示請求については難しい
      削除に関しては対応されることが多いけれど、
      発信者情報開示請求については慎重に。
      裁判所の決定を取得できれば
      削除も発信者情報開示請求も速やかに対応。
      コスト・手間
      (裁判所に出頭するための費用や保証金を供託する必要も)
      適しているケース
      1. フォームからの依頼で適切に対処されることが判明しているサイト
      2. 早急に削除したい場合、書面と並行して行う場合など
      1. 個人情報の記載、差別的表現など記載内容自体から権利侵害が明らか
      2. 発信者情報開示請求を求めない
      1. 権利侵害の判断において記載内容の真実性が問題になる
      2. 確実に対処したい

      問題のサイトにwebフォームやメールアドレスの記載など、管理者と連絡が取れる窓口が用意されていれば、それを利用して法的請求を行うこともできます。
      ただし、webフォームから削除請求をした場合、問題の情報が削除されるのと同時にその書き込みが行われた時のアクセスログも消されてしまう可能性もあります。
      発信者情報開示請求を予定しているのであれば、web上のフォームから削除請求を行う場合、併せて発信者情報開示請求を予定している事やアクセスログを消さないでほしいという事を記載した方が良いです。

    2. プロバイダ責任制芸法ガイドラインに則った請求をする場合
      1. 削除の方法

        プロバイダ等で構成される一般社団法人テレコムサービス協会は、プロバイダ責任制限法の運用についてのガイドラインを制定しており、発信者情報開示請求の書式なども公開しています。
        大手のプロバイダ各社の運用も基本的にはこのガイドラインに沿ったものです。
        なお、請求書類の送付先や必要な添付資料に関しては、請求先のサイト管理者等が持つサイトに記載がある事も多いので、まずは管理者側のサイトを確認するようにします。
        ガイドラインの書式を用いないで内容証明郵便などで請求を行ってもいいですが、プロバイダ側で本人確認に必要な添付書類や権利侵害の各類型に必要な証拠資料を定めているケースが大半なので、資料を同封できない内容証明郵便よりはガイドラインに従って請求を行ったほうが良いです。

        • ガイドラインで請求書に添付することが求められる書類

          1. 委任状(弁護士さんによる請求の場合)
          2. 印鑑登録証明書
          3. 個人による請求の場合:公的な身分証明書の写し
          4. 請求書の権利が侵害されていることを示す証拠資料
      2. 請求を受けたサイト管理者の対応

        請求を受けたサイト管理者等は発信者に連絡が取れない場合を除き、原則として発信者に意見照会をします。その後、回答期限を経て請求者に対し正式な回答を行うところが多く、意見照会の期間は7日〜14日とされていることが多いです。
        また、意見照会のほかに、発信者に示しても良い情報の範囲や削除対象についてサイト管理者より問い合わせが出ることがありますから、連絡があった場合は速やかに対応するようにします。
        請求を行ってから回答がなされるまでの期間は、多くの場合1か月程度かかりますが、最初から仮処分を行う方法だと早く確実です。

      3. サイト管理者等を相手方とする仮処分について

        裁判外で請求をしても望ましい結果が得られない場合は、裁判を起こすしかありません。削除や発信者情報開示を求める場合、訴訟ではなく民事保全法の仮処分手続きを利用する方が迅速かつ簡便に実行可能です。

        1. 裁判管轄について

          インターネット上の権利侵害に対して裁判を行うなら、どこの裁判所に申し立てを行うのかが問題になりますが、原則として裁判を起こす相手の住所地を管轄する裁判所となります。
          ただし、例外規定も多いので、それらを利用してなるべく自分に有利な裁判所へ申し立てることができないかを検討できるので、管轄については、裁判の相手の状況や請求する内容によっても考え方が違います。

          1. 削除請求の場合…削除請求は不法行為に関する裁判なので、「不法行為があった地」にも裁判管轄が認められます。
          2. 発信者情報開示請求を行う場合…発信者情報開示請求は不法行為に関する訴えではないので、基本的には裁判を起こす相手の住所地の裁判所にしか管轄が認められません。
          3. 日本国内に支店や営業所を有しない海外法人の場合…海外の法人に対して発信者情報開示請求を求める裁判は日本の裁判所では出来ないように感じますが、日本に支店や営業所を有している海外法人の場合は、代表者や問題のサイトの管理についての主たる業務担当者が日本国内にいれば、その人の住所地に裁判管轄が認められますので、日本の裁判所で裁判を行うことは可能です。
          4. 日本国内に営業所などを有しない海外法人の場合…海外企業でも日本人向けの日本語ウェブサービスを提供している場合は、「日本に置いて事業を行う者」なので、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。
        2. 申し立ての添付書類の提出方法

          添付書類として準備するものは、以下のとおりです。

          1. 仮処分命令申立書正本(収入印紙2000円を貼用)
          2. 証拠説明書
          3. 証拠資料の写し
          4. 訴訟委任状
        3. 仮処分手続きの流れ
          1. 申し立て書の提出
          2. その場で裁判所書記官による形式管理…疎明資料の追加などを指示されることもありますから、指示があれば債権者面接のときまでに追完をします。
          3. 形式面で問題が無ければ事件番号付与・債権者面接日調整…裁判官の予定によるのですが、通常は当日中に債権者面接が入ります。翌日以降でも、予約枠の10時または13:30を選びます。
          4. 債権者面接…債権者の主張を確認し、双方審尋期日を調整します。債務者審尋を行わないで発令を行う場合は、担保決定がこの場であります。
          5. 面接後、呼出状送付用の切手を納付(債務者1名につき350円)…債務者の呼出審尋期日が決定したら、債務者へ呼出状を送るための切手を裁判所に納付します。
          6. 申立書副本・疎明資料等一式を債務者に直送…申立書類一式の副本を債権者から債務者当てに速達で直接郵送します。
          7. 双方審尋期日…債権者面接から1週間程度で、ほとんどのケースでは双方審尋期日は1回で結論が出ることになります。
          8. 担保決定…債権者の主張が認められてから、仮処分決定発令のために供託する担保金の金額が決定されて、裁判官より伝えられます。
            • 債務者審尋をしたとき…10万円〜15万円
            • 無審尋で発令したとき…30万円
          9. 供託…担保決定に従い法務局で供託を行います。
          10. 供託書・目録の差し入れ…供託が完了したら以下の書類を提出します。
            • 供託書の写し1枚
            • 目録(当事者目録・発信者目録・投稿記事目録など)各3枚 ※ページ番号のないもので、債務者代理人を追記します。
            • 決定正本送達用郵便切手 ※当事者1名につき350円
          11. 仮処分命令発令・決定正本交付…午前11時までに上記書類の提出が済めば、当日の午後4時に発令されますが、午前11時を過ぎた場合、翌営業日の午後4時の発令となります。
  2. アクセスプロバイダに対する請求

    1. 投稿に使用されたプロバイダを特定する

      サイト管理者等から発信者情報の開示を受けた場合でも、ほとんどのケースでは発信者等の氏名は判明せず、IPアドレス等のアクセスログしかわかりません。
      そこでIPアドレスを「whois検索」を用いて調査し、どこのプロバイダなのかを特定します。

    2. アクセスプロバイダに対する請求の方法

      投稿に使用されたプロバイダが判明したら、アクセスプロバイダを相手に手続きを進めていきます。
      アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求で開示できるものは、以下のとおりです。

      1. 氏名または名称
      2. 住所
      3. 電子メールアドレス

    アクセスログの保存や裁判での手続き等はサイト管理者に対するものとほぼ同じです。