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【社会】

植木等さんの反戦 幻の映画 33年ぶり発見、25日上映

降旗康男監督

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 喜劇映画の無責任シリーズやヒット曲「スーダラ節」で知られる俳優で歌手の故植木等さんが主演した反戦映画「本日ただいま誕生」が、33年ぶりに見つかった。監督は網走番外地シリーズや「鉄道員(ぽっぽや)」などで知られる降旗(ふるはた)康男さん(80)。25日、東京国際映画祭で特別上映される。 (前田朋子)

 映画では、僧侶を目指して修行中の男が徴兵され、シベリア抑留中に凍傷で両足を切断。帰国後、社会が混乱する中で自らを再発見する物語だ。原作は禅僧の故小沢道雄さんの自伝で、植木さんが映画化を熱望。破格の製作費を掛けて一九七九年に公開されたが、宣伝費をまかなえず、数週間で打ち切られた。

 フィルムは二年前に偶然、植木さんが所属した芸能事務所の倉庫から見つかった。BS放送の「日本映画専門チャンネル」を運営する日本映画衛星放送(東京)などが、二年がかりでハイビジョン化した。

 喜劇俳優やコメディアンとして親しまれた植木さんが、俳優として転機を迎えた異色作だ。降旗さんはテレビドラマの制作を通じて植木さんを知っており、監督を引き受けたという。

 寺の息子に生まれた植木さんには修行経験があり、空襲で東京の自宅を焼かれた経験もある。降旗さんは植木さんの八歳下で、少年時代にやはり戦争を体験。植木さんが作品に情熱を傾けた理由を「俳優として『俺は(スーダラ節の)スーダララッタだけじゃない』という思いがあったんじゃないかな」と推し量る。

 降旗さんによると、資金不足で撮影が止まり、千葉県内のロケ地でホテル代を踏み倒したことがあった。数カ月後に手当てはついたが、逃げた手前、現場には戻りづらい。

 スタッフが悩んでいるとホテルから連絡があり、「植木さんからごあいさつを頂いた。お金は後でいい」と激励された。降旗さんは「俳優としても人間としてもがっちり作品にぶつかる人だった」と懐かしむ。

 映画に銃撃戦や戦場は出てこないが、歩けない主人公が旧満州(中国東北部)の平原に置き去りにされる場面が一つのヤマだ。降旗さんは「敵を撃ち殺し銃剣を突きつけるだけでなく、生き残るために隣人も見捨てなければならないのが戦争。いかにあのしんどい時代を生きたかが自然に伝われば」と、いま上映する意義を語る。

 「本日ただいま誕生」は二十五日午前十時五十分から、TOHOシネマズ日本橋で上映。チケット、問い合わせは東京国際映画祭インフォメーションセンター=電0570(006)506=へ。

 

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