2014年8月18日(月) 東奥日報 特集

スクランブル

INDEX▼

  
■ 飼育数は最盛期の半分以下/来日30年、人気のコアラ

 オーストラリア原産のコアラが国内の動物園で飼育されるようになってから10月で30年。愛くるしい姿から人気は高いが、高齢化で繁殖は進まず、高額な餌代もネックとなり、飼育数は最盛期の半分以下に。「このままでは国内からいなくなる」と、新しい個体の受け入れも決まった。

 ▽半減

 日本動物園水族館協会などによると、国内での飼育数はピーク時の1997年には九つの動物園で96匹だったが、17日現在、41匹まで減った。

 高齢化で繁殖できる個体が少なくなった上、国内での交配を繰り返したため、血統のことを考えると、雌雄の組み合わせも難しくなっている。

 現状を打破するため、埼玉県こども動物自然公園と鹿児島市平川動物公園はオーストラリアから計6匹の譲渡を受けることを決めた。3年ぶりのコアラ輸入となる。

 日本での繁殖調整を担当する名古屋市東山動植物園の黒辺雅実(くろべ・まさみ)さん(55)は「これ以外、打つ手はないが、コアラにも相性がある。即座に繁殖につながるかは未知数だ」と気を緩めない。

 ▽高額

 飼育の足かせとなっているのは、餌となる植物ユーカリの確保だ。コアラはユーカリしか食べず、オーストラリア側も譲渡の条件に動物園ごとの栽培を挙げている。

 現在5匹を飼育している東山動植物園は国内4カ所で約30種を栽培。コアラが口にするので農薬は使えず、害虫駆除はすべて人の手で行い、年間経費は5千万円以上に上るという。

 1匹当たりの餌代は、ゾウの3倍以上、ライオンの約17倍と破格。名古屋市は、コアラ1匹に、河村たかし市長の年間給与(800万円)を上回る経費を掛けている。

 栽培にお金と手間がかかるユーカリだが、コアラはえり好みが激しく、同じ種類を出し続けると、すぐに食べ飽きる。

 東山動植物園では、飼育係が毎日午後1時、3種類のユーカリを“献上”。眠っていた5匹はのっそり起き上がると、大きな鼻をヒクヒクさせ、むしゃぶりついた。

 「沖縄こどもの国」は3匹を飼育していたが、2010年に最後の1匹が死んで以来、飼育をやめた。担当者は「ユーカリは倒れやすく、台風や潮風の影響を受けやすい。飼育員は常に振り回されていた」と振り返る。

 ▽意義

 東山動植物園では昨年、飼育の難しさを知ってもらおうとインターネットで餌代の寄付を募り、目標額を上回る約500万円を集めたが「わざわざ大金をかけて飼育する必要があるのか」との批判も上がった。

 黒辺さんは「コアラは生態を熟知した人材と充実した施設でないと飼育できない。オーストラリアでも野生のコアラは急速に減っており、日本で飼育を続けていることが、絶滅したときの保険になるかもしれない」と国内飼育の意義を訴えている。

(共同通信社)




HOME