サウジアラビアが新たに原油価格戦争を仕掛け、関係がぎくしゃくしている米国に対して周到に計算された賭けに打って出ている。米シェール業界に打撃を与えつつも、同国政府に地政学的恩恵や経済的利益をもたらすことで埋め合わせできると踏んでいる。
米国とサウジがイラクとシリアでの戦いで手を携えるなか、サウジは原油市場での自らの重要な役割を主張し、立ち上がったばかりの米シェール業界の資金調達を巧妙に絞るという大胆な手段をとっている。それでも、原油価格の下落は米消費者にとって事実上の減税となり、低価格が続けば米政府が圧力をかけるロシアとイランへ打撃が及ぶ。
米カーネギー財団エネルギー・気候部門のデボラ・ゴードン氏は、サウジの原油価格への圧力は慎重に計算された動きで、ロシアやイランなどのライバル国や敵国にとって問題になると指摘する。「サウジはこれが事態を一変させると結論づけたようだ。望まない相手に打撃を与えずに恩恵を得るからだ」と話す。
■米国との緊張の高まりが背景に
世界の原油需要は急激に落ち込んでいるのに米国の産油量は急増しているため、サウジアラビアは選択を余儀なくされた。相場安定のために減産に踏み切り、負担をかぶることもできた。しかし、原油価格の下落を静観し、これまで支持してきた1バレル100ドルではなく80ドル前後でもよしとする姿勢を示すことにしたようだ。米国などでの新たな原油産出が石油輸出国機構(OPEC)の将来に影を落としているなか、サウジは石油市場に対し、価格決定における自らの主要な役割を改めて強調している。価格低迷が続けば、サウジは財政赤字に陥り、政治的安定に新たな問題が持ち上がるかもしれない。だが、サウジは巨額の外貨準備を抱えるため、歳入が減っても耐えられると多くのアナリストはみている。
サウジのこうした判断の背景には、米国との緊張の高まりがある。両国はこの1年間、オバマ政権がイランと核開発問題で合意を目指していることを巡り対立してきた。それはサウジにとって宿敵とのナイーブな和解にみえる。一方で、サウジはイラクとシリアのイスラム過激派に対抗する米主導の有志連合の中核を担っている。同国は原油価格の低下を促すことで、米政府が望む地政学的状況の実現を支えている。ウクライナ介入に伴う負担や米欧の経済制裁に苦しむロシア経済にとって、原油価格の下落はさらなる問題となる。
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