October 17, 2014
飛行中に乱気流に遭遇した場合、鳥は「シートベルトを締める」ことはできないが、代わりに翼を体の下にたたみ込んで飛行を安定させることが新しい研究でわかった。
ソウゲンワシ(Aquila nipalensis)の飛行を調査中、科学者らはワシの面白い行動に気づいた。帆翔(ソアリング)のさい、鳥は通常の飛行を再開する前に翼をたたむことが多い。
ウィングタック(wing tuck)と呼ばれるこの行動は、以前から知られていた。1908年、飛行機の設計を改善しようとライト兄弟が鳥の飛ぶ様を観察していたとき、兄のウィルバーが作った言葉だとされている。
しかし、ワシのウィングタックが飛行に影響を与えているのかどうかは不明だった。そこで研究チームは、小型の超軽量データレコーダーを取付けた特殊なリュックサック型フレーム・・・
ソウゲンワシ(Aquila nipalensis)の飛行を調査中、科学者らはワシの面白い行動に気づいた。帆翔(ソアリング)のさい、鳥は通常の飛行を再開する前に翼をたたむことが多い。
ウィングタック(wing tuck)と呼ばれるこの行動は、以前から知られていた。1908年、飛行機の設計を改善しようとライト兄弟が鳥の飛ぶ様を観察していたとき、兄のウィルバーが作った言葉だとされている。
しかし、ワシのウィングタックが飛行に影響を与えているのかどうかは不明だった。そこで研究チームは、小型の超軽量データレコーダーを取付けた特殊なリュックサック型フレームをワシに取付けた。これは、無線操縦飛行機の自動操縦機を改良したもので、ワシの飛行速度、高度、ピッチおよびロールなどの情報を記録するブラックボックスだ。
研究チームはウェールズ南部のブレコン・ビーコンズ国立公園内でワシを45回飛行させ、2594回のウィングタックを記録した。10月14日「Royal Society Interface」誌に発表された論文によると、レコーダーに記録されたデータから、ワシは大気中の乱気流に反応して翼をたたんでいることがわかった。つまり、エアポケットの中を通過するとき、ワシは翼をたたみ込むことで空気の塊に衝突することから身を守る。
「飛行機が乱気流に当たると、全体が揺れる。しかし、鳥は翼をたたみ込むことでスムーズに飛ぶことができる」と、英国オックスフォード大学の生物学者で今回の論文の筆頭著者であるグラハム・テイラー(Graham Taylor)氏は述べた。
◆でこぼこな飛行
同氏によると、飛行機の機体は硬いため、乱気流内に遭遇するとあちこちバウンドする。それに対し、ワシの翼には柔軟性がある。上昇気流はワシの翼にとても大きなストレスと圧力を与えるが、圧力がかかるとワシは短時間、翼をたたみ、風が収まると再び飛行を続ける。
毎年、中央アジアからアフリカへ熱上昇気流に乗って移動するソウゲンワシにとって、乱気流をうまく乗り越えることは特に重要だという。
ソウゲンワシは、上昇気流を利用することでエネルギーを節約できるが、あちこちバウンドしながら飛ぶことになる。
◆研究結果に対する慎重論も
ロンドンにある王立獣医科大学のアラン・ウィルソン( Alan Wilson)氏は、この新研究を「最新技術を利用したとても画期的なものだ」と評価する一方で、1種の鳥についての研究結果が他の鳥にも当てはまるかどうかについては、さらなる実験が必要だと述べている。
Photograph by Christina Krutz/Radius Images/Corbis