刑事司法改革は冤罪(えんざい)防止が目的だったはずだ。だが新たな冤罪を生みかねない内容であり、矛盾していると言わざるを得ない。
法制審議会が、警察と検察による取り調べの録音・録画(可視化)を義務付ける一方、「司法取引」を導入したり通信傍受の対象となる犯罪を大幅に拡大したりして、刑事司法制度を大きく変えるとした法改正要綱を法相に答申した。
刑事司法改革の議論は大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件などがきっかけだ。冤罪防止に向け密室での取り調べや供述調書への過度の依存を見直すため、法制審は2011年6月に特別部会を設置し、捜査や公判の改革について議論してきた。
だが今回の要綱では可視化の対象は、殺人や強盗致死などの裁判員裁判対象事件と、検察の特捜部や特別刑事部の独自捜査事件に限定された。全事件の2〜3%にすぎない。幅広い例外規定も設けられ、捜査機関が恣意(しい)的に運用する懸念を残したままだ。
一方、米国などが導入している司法取引を制度化する。容疑者や被告が共犯者など他人の犯罪を解明するために供述したり証拠を提供したりすれば、検察が起訴の見送りや取り消しなどを合意できるとした。経済事件や薬物事件などに限定するというが、うその供述で無実の人が巻き込まれかねない。真実の解明、刑事手続き上の公平性といったマイナス面も残る。
通信傍受の拡大では、捜査機関が電話やメールを傍受できる対象犯罪に組織性が疑われる殺人や放火、強盗など9類型を追加したが、政府が新設を目指す「共謀罪」と連動しているとの見方もある。犯罪の謀議に加わっただけで処罰されるのが共謀罪だ。盗聴内容をどう監視するかなど、通信傍受拡大については依然疑問も多い。
司法取引や通信傍受拡大は可視化義務付けとの「バーター」で浮上した。それらの手段で得られた情報は捜査機関が取り調べで利用するため、取り調べ依存がより強まりかねないとの指摘もある。可視化の見返りに、捜査機関が「焼け太り」することがあってはなるまい。
法務省は刑事訴訟法などの改正案を来年の通常国会に提出する方針だが、現在の内容では反対せざるを得ない。冤罪や誤判の防止という原点に立ち返り、警察段階での全面的な可視化や証拠開示を含めて議論し直すべきではないか。
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