太田昭宏国土交通相は17日午前、JR東海が2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の東京(品川)―名古屋間286キロの工事実施計画を認可した。大阪まで45年の開業を予定する総工費約9兆円の巨大プロジェクトは、1973(昭和48)年の国の基本計画決定から41年を経て、JR東海が事業費を全額負担して建設に入る。同社は今後、沿線7都県で自治体や住民向けに事業説明会を開き、測量や用地取得手続きを進める。
太田国交相は同日の記者会見で「確実な実施を求める三つの事項」として、地元住民への丁寧な説明を通じて地域の理解と協力を得ることや、環境保全、南アルプスの長大トンネルなどの安全かつ確実な施工―を挙げた。国交省として「事業の安全かつ円滑な実施が図られるよう、JR東海を指導、監督していく」と強調した。
その後、同社の柘植康英(つげこうえい)社長に認可書を手渡した。柘植社長は、太田国交相に「環境の保全、工事の安全、何より地域との連携を重視して、早期実現に向けて全力で取り組む決意だ」と述べた。
工事実施計画によると、東京―名古屋間の総工事費は5兆5235億円。南アルプスに長大トンネル(全長約25キロ)を掘削、全区間の86%に当たる246キロが地下となる。
長野県内路線は計52・9キロで、東から西へ、下伊那郡大鹿村、豊丘村、喬木村、飯田市、阿智村と、木曽郡南木曽町を通過する。このうち92%が長短5本のトンネル区間。飯田市上郷飯沼・座光寺に長さ約1キロ、最大幅約50メートルの中間駅(地上駅)を建設する。
リニアは超電導磁石で車両を浮かせて最高時速約500キロ超で走行し、品川―名古屋間を最短約40分で結ぶ。県内駅と品川の所要時間は40分程度、名古屋へは25分程度になる見込みだ。
環境影響評価(アセスメント)をめぐっては、太田国交相が7月、計画に対する行政の意見反映の最終機会となる国交相意見をJRに送付した。9月29日までのアセス評価書縦覧で、着工前手続きはすべて終了している。