御嶽山噴火:捜索20日間「発見に至らず申し訳ない」
毎日新聞 2014年10月16日 22時30分(最終更新 10月17日 00時28分)
56人が死亡、少なくとも7人が行方不明になっている御嶽山(おんたけさん、長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火で、長野県と岐阜県の災害対策本部は16日、年内の捜索を同日で打ち切ることを決めた。
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「凍った火山灰にスコップが入らない」「自分たちの身を確保するのが精いっぱいだった」。今季最後となった16日の捜索を終えた捜索隊員たちは疲れ切っていた。標高3000メートル前後の山頂付近で火山灰に埋もれた行方不明者を捜すという前例のない活動は、冬の到来に行く手を阻まれ、20日間で終了した。
積雪は約5センチ。長野県警の山崎守・機動隊長(53)は「人海戦術だけでは厳しい。岩場や火口付近では氷で滑って落ちる危険もある」と2次災害の危険性を指摘した。
山梨県笛吹市消防本部の斉藤貴亮・司令補(37)は「ふもとに下りても手がかじかんでいる。足は凍るような冷たさ」と語った。名古屋市消防局の鈴木斎・消防司令長(56)は「8〜9合目のぬかるみで体力を奪われた。自力では足が抜けなかった」と話した。
20日間の捜索は圧倒的な自然の猛威に振り回された。雨、火山ガス、台風、そして強風と雪。ある隊員は「火山灰の硬さも、固まった場所も天候次第で日々変わる。それが一番難しかった」と振り返る。棒を刺して捜す方法からスコップで掘り進む方法に切り替え、人の体の一部や遺留品を見つけ人海戦術での掘り返しに自信を深めた。その直後の台風19号。2日間の中断を余儀なくされ、今度は雪に見舞われた。
この日は最新鋭の金属探知機を初めて使用し、約20センチ下から折れた黒いストック1本を探り当てた。だが、新たな行方不明者は発見できず、タイムリミットを迎えた。「できることは100%やったと思う」と警視庁の池田安夫・第7機動隊副隊長(50)。一方で、捜索を終えた隊員たちは同じ言葉を口にした。「行方不明者を家族に帰したいと思ってやってきたが、発見に至らず申し訳ない」【稲垣衆史、松岡大地、金森崇之】