御嶽山噴火:「一生懸命がんばる」山梨・猪岡さん長男
毎日新聞 2014年10月16日 22時56分(最終更新 10月17日 09時20分)
56人が死亡、少なくとも7人が行方不明になっている御嶽山(おんたけさん、長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火で、長野県と岐阜県の災害対策本部は16日、年内の捜索を同日で打ち切ることを決めた。
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行方不明のままとなっている山梨県甲斐市の猪岡哲也さん(45)と妻の洋海(ひろみ)さん(42)=死亡確認=は、高校2年の長男を残して2人で御嶽山に登っていた。哲也さんの下山は火山灰と降雪に阻まれてかなわず、洋海さんの母(69)は「夫婦を早く一緒にさせてあげたいが、冬の捜索は無理。言葉が出ない」と語った。
夫婦とも耳が不自由だった。約20年前、県内の聴覚障害者らで作る和太鼓サークル「甲州ろうあ太鼓」で出会い、1996年に結婚。披露宴ではメンバーとともに新郎新婦もバチを握って太鼓を披露した。結婚後のこの年、サークルの一員としてハワイで太鼓を披露する機会があり、新婚の2人は「サプライズ」のハワイアンダンスで祝福されたという。
間もなく長男が誕生し、哲也さんは子煩悩で知られた。子どもが同じ小学校に通っていた知人によると、哲也さんは運動会で望遠レンズのカメラを構え、熱心に撮影していたという。
洋海さんは遺体で見つかり、火葬を済ませて甲斐市の自宅に戻っている。捜索打ち切りを知った洋海さんの母は、残された長男について「両親のために手話を覚えるなどしっかり者。弱音も吐かないが、あまりにふびんでならない」と語った。長男は「一生懸命、がんばる」と話しているという。
行方不明のままの哲也さんについて、洋海さんの母は「あきらめていない。一日も早く見つかってほしい」と願う。一方、これまでの捜索活動について「雪や灰で大変な作業だったと思う。本当に感謝している」と話した。【山縣章子、片平知宏】