リニア新幹線:着工認可 膨らむ期待、消えぬ不安
毎日新聞 2014年10月17日 12時20分(最終更新 10月17日 12時39分)
JR東海が2027年の開業を目指すリニア中央新幹線について、国土交通相の着工認可を受け、リニア中央新幹線は東京・品川−名古屋間の建設に向けた動きが本格的に始動する。中間駅の設置が予定される地域では、建設事業や観光客の流入がもたらす経済効果への期待が膨らむ。一方で、山岳地での大規模なトンネル工事が環境に与える深刻な影響を懸念する声は根強い。
長野県飯田市の飯田商工会議所の柴田忠昭会頭(72)は「いよいよという感じ。リニア開業は地域発展の大きな足がかりになる。多くの人に飯田を訪れてもらうために、観光資源の開発に取り組みたい」と期待を寄せる。
岐阜県中津川市の中津川商工会議所は「リニアの見える丘公園構想」を掲げるなど意欲をみせる。鷹見直基事務局長(67)は、「ゼネコンを中心に地元業者の仕事が増える。工事関係者が多数やってくるので、地元への経済効果は計り知れない」と話す。
中津川観光協会「観光センターにぎわい特産館」の鈴木とも子店長(65)も「くりきんとんなど和菓子の町をアピールするチャンス。日帰り観光のスポットとして脚光を浴びるはず」と大歓迎だ。
一方、飯田市の住民団体「飯田リニアを考える会」代表の片桐晴夫さん(75)はリニア新幹線の建設を疑問視する。「この地域で一番誇れるものは自然だが、リニアはそれを壊す。今後も人口減少が見込まれる中、本当に建設する必要があるのか」
工事が始まると多数の工事車両が通行する長野県大鹿村の「大鹿の100年先を育む会」代表、前島久美さん(32)は、車両の一部が通学路を通ることを危惧するという。「生活道路をたくさんの工事車両が走るというのは衝撃。安全や環境面で不安は大きい」と話す。車両通行の時間制限や道幅の拡張を要望しているが、明確な回答はないという。
リニアの線路建設予定地から50メートル以内に自宅がある山梨県富士川町の60代男性は「目の前に『コンクリートの壁』ができることになる可能性があるが、町内でも景観や環境への悪影響に対する切迫感には温度差がある」と話す。同町内には中間駅の建設予定はなく「直接的な経済波及効果もない上、一つの地域が線路で分断されるなどマイナス面が多い」と話す。