リニア新幹線:「経済活性化の起爆剤」期待は膨らむが…

毎日新聞 2014年10月17日 12時41分(最終更新 10月17日 13時17分)

 JR東海は、リニア中央新幹線の早期建設を目指す一方、米国を中心に超電導リニア技術の海外への売り込みにも力を入れる。量産化によるコストの引き下げが狙いの一つだ。安倍政権も同技術の海外輸出を成長戦略の一つに掲げる。安倍晋三首相は今年4月、ケネディ駐日大使とともに山梨リニア実験線に試乗。JR東海の葛西敬之名誉会長が説明役として同乗した。

 リニアを経済活性化の起爆剤にしたいという政府の思惑は、着工認可までの政府のスムーズな対応からもうかがえる。建設工事は沿線地域の環境への影響が懸念されているが、国土交通省は同社の計画に抜本的な見直しを求めることはなかった。こうした姿勢が「はじめに認可ありき」との印象を与えていることは否定できない。

 リニア中央新幹線は、国が公共事業として関与してきた従来の新幹線と異なり、JR東海がプロジェクトの全額を自己負担する。そのことを理由に挙げ、「政府は法律に従って審査するだけ。あとは(JR東海に)しっかりやってもらうしかない」(国交省幹部)と企業まかせの姿勢を示すような声も聞かれる。

 東西を結ぶ高速鉄道のスピード化は、歓迎する人々も多い一方、「東京一極集中」に拍車をかけ、地方の活力をそぐ可能性があるともいわれている。人口減少が進む中、将来的に需要を維持できるのかという疑問も根強い。リニア中央新幹線は、国民生活に深く関わる問題として今後も官民の幅広い議論が必要だ。【佐藤賢二郎】

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