「親身な人事部」が働かないオジサン化を防ぐ
東洋経済オンライン 10月17日(金)8時0分配信
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| 「なぜあの人は、働かないのか?」「働かないオジサンの4類型」「働かないオジサンにならない4つの働き方」など、研究の集大成がついに刊行! |
どこの職場にもいる、「働かないオジサン」――若手社員の不満が集中する彼らは、なぜ働かなくなってしまったのか? 「どこの職場にもいる」ということは、何か構造的な問題が隠れているのではないか? ベストセラー『人事部は見ている。』の筆者が、日本の職場が抱える問題に鋭く迫る。
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※ 本連載が、単行本になりました。
『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』(税込み1404円)。
働かないオジサンが生まれる構造的な要因を特定し、その要因を避けて何歳になっても成果を出す「4つの働き方」を解明。さらに「働かないオジサンにならない7カ条」もついた、「働かないオジサン」研究の集大成です。
■ 雇用契約から業務委託契約への変更を認めた会社
数年前、大手海運会社の課長職だった田代英治さん(当時44歳)は、上司に「独立したい」と申し出た。「次の異動先として、営業部門から声がかかっているぞ」と上司から伝えられて、転勤は困ると思った。田代さんは「退社」とは言わず「委託契約で会社とかかわりたい」と率直に申し出た。
当時、田代さんは2回目の人事部勤務。人事分野で自分の専門性を高めたいと考え始めていた。同時に会社外の人的ネットワークから、さまざまな刺激も受けていた。とりわけ自分も資格を取得した社会保険労務士で開業している人たちとの付き合いが面白く、刺激的であった。このため、当時は独立にも興味を持ち始めていた。
営業部門に異動しても楽しく仕事はできるだろう。ただ、このまま会社の辞令に従っていると専門性を持てず、人生を振り返ったときに後悔すると考えた。特に40歳を超えたあたりから、強くそう感じていたという。
子供が中学生だったので、当初、妻は難色を示したが、会社との関係は継続するし、一定の収入は確保できると説得。1年後に会社と業務委託契約を交わした。
田代さんは現在も週に2〜3日、半日だけ大手海運会社で働いている。デスクやメールアドレスも現役のときと同じである。ほかの時間は人事コンサルタントとして20社程度の顧問先を抱え、セミナー講師や執筆にも忙しい。仕事に関する時間も経費も、すべて自分でコントロールできるのが何よりうれしいという。家族と一緒に食事をする回数も増えた。それ以後、ずっとその会社に勤めていることを考えると、田代さんと会社の利害がしっかりと一致したことがうかがえる。
■ 選択の提示と個別交渉
このケースでは、業務委託契約への変更を申し出た田代さんもさすがであるが、そのオファーを無視せずに受け入れた会社側の判断もすばらしい。田代さんが、もし自分の意思を示さずに、そのまま営業に転勤していれば、「働かないオジサン」になっていたかもしれない。
前回は、年次別一括型の人事運用の弊害を修正するには、「選択と個別交渉」の方向に進まなければならないと書いた。冒頭で紹介した大手海運会社のケースでは、雇用契約ではなく、業務委託契約で働きたいという田代さんの選択を、会社が彼と個別に交渉して認めたものである。 この「選択と個別交渉」の取り組みで最も問題なのは、個別交渉には手間がかかることだ。選択制の導入には全員が賛成しても、人事部や管理者が個別交渉に十分な労力をかけることができるかどうかがポイントである。
たとえば、前々回に紹介した、中高年社員に対する「道草休暇」を採用するとすれば、就業規則に「道草休業規程」を盛り込むとともに、対象とする希望者の条件の確定、会社が認める際の判断基準、手を挙げた人との面接(休業を望む理由の確認など)、代替要員の手配や復職した場合の職場をどうするかの検討などが必要だ。選択を認められなかった社員への説明責任も会社側に生じる。このように多くの労力をかけないといけない。 同時に、人事担当者や管理者には交渉できるだけの力量も求められる。これはむしろ能力の高さというよりも、その人たちの向き不向きに負うところが大きい。個別交渉に向いた人材を人事部に配置する必要がある。
■ 社内FA制度の実例
最近は、社内FA(フリーエージェント)制度や職務公募制度を採用している企業も増えてきた。前者の社内FA制度は、現在の所属長を経由しないで、自分自身が希望する職務に直接、手を挙げる制度である。後者は、会社が新規事業や発展市場への職務を社員に示して、社員が直接、志願できる制度である。
最終更新:10月17日(金)12時55分
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