リニア新幹線:「おいてけぼり」あせる関西
毎日新聞 2014年10月17日 12時47分(最終更新 10月17日 13時18分)
◇名古屋−大阪間の開業は45年を予定
17日に着工が認可されたリニア中央新幹線。東京・品川−大阪間を67分で結ぶ「夢の超特急」だが、今回の認可は2027年開業予定の品川−名古屋間だけで、名古屋−大阪間の開業を事業主体のJR東海は45年と計画する。関西の自治体や財界が求める同時開業は一層遠のいたが、なお働きかけを続ける。
大阪府と大阪市、関西財界は今年7月、「リニア中央新幹線全線同時開業推進協議会」を発足させた。関西経済同友会の村尾和俊代表幹事は「あきらめずに訴えていく」と話し、大阪商工会議所の佐藤茂雄会頭も「国家プロジェクトとして早期完成を目指してほしい」と認可を歓迎しつつ、「地方創生という新たな視点が加わった今こそ、西日本の拠点・大阪への同時開業が望まれる」と強調する。
府は同時開業の経済波及効果を、品川−名古屋間の先行開業より全国で年間2150億円増えて約1.4倍になると試算し、利点を示して働きかける。さらに、JR東海が短期間での多額の建設費負担を懸念しているため、府・市は建設費の利子の一部を負担する考えも示す。松井一郎府知事は17日、「(大阪への開業が)一日でも早い方が、JR東海にも多大な利益になる」と話した。
新大阪駅から東京へ出張に向かっていた会社員、山本健司さん(34)=大阪市西区=は「月に2、3回新幹線を使って出張するが、1時間も短縮されると朝に余裕ができる。ゆっくりとコーヒーも飲めそう。開通は待ち遠しいけど、その頃はきっと退職してるんでしょう」と笑う。大阪観光を終えて帰宅途中の福岡県大野城市の男性(70)は「新幹線が開通した時は国中が盛り上がり、周囲に自慢できるので真っ先に乗った。リニアにもぜひ乗ってみたい」と期待を膨らませる。
一方、名古屋以西の路線は京都と奈良が綱引きを演じている。1973年の国の基本計画で新駅は「奈良市付近」とされ、11年5月の国の整備計画で踏襲された。太田昭宏国土交通相は17日、「そこに沿って考えるのが基本だ」と語った。
しかし、京都府と京都市、府内の経済団体などは「経済効果が高く関西国際空港へのアクセスもよい」とアピールする。門川大作京都市長は17日、「同時開業や京都駅ルートの実現をオール京都で求めていく」とコメントした。