The Island Times

1983年生まれの男の日常。大阪、神戸あたりをぶらぶらしてます。スポーツとスイーツが好きです。

日本代表は盛り上がっているが、Jリーグを取り巻く環境は厳しい・・・『Jリーグ再建計画』を読んだ

 ポストシーズン制の導入、秋春制への移行の検討、クラブライセンスの導入、日本代表選手の海外移籍によるJリーグの空洞化などなど・・・2013年にJリーグ開幕20周年を迎えたわけだが、Jリーグが抱える問題は多く、あまり明るい感じではない。

 『Jリーグ再建計画 (日経プレミアシリーズ) 』を読んだのでその感想。これは2014年5月刊行。

 なかなか読みごたえがあっておもしろかった。さくさく読めた。自分の興味関心が高い内容だから当然なんだろうけど。特に気になったところだけメモ。

本の概要

創設20年を越え衰弱の危機にあるJリーグは、いったいどこに行こうとしているのか。海外で勝てないJクラブ、苦しいクラブ経営、日本代表選手の海外移籍によるリーグ空洞化などの問題から、J3創設、ポストシーズン制の導入など、Jリーグ自らが問いかける再建への緊急提言書。(引用 - 本書裏表紙

 Jリーグが今何を考えているのか、将来に向けてどのように進んでいくのか、改革のプロセスなどを紹介している。個人的に特に気になっていたのが、ポストシーズン制の導入、秋春制への移行の検討、Jリーグのプレミア化構想かな。このあたりは昨年あたりからニュースにも取りざたされているので知ってる人も多いと思う。もちろんオレも知ってはいたのだが、どういう背景があって、議論され、決定、見送りされたのかまでは知らなかったので、そのあたりを知れておもしろかった。

内容の紹介

まず初めに

  • Jリーグへの世間の関心度が下がっている
  • Jリーグ中継の視聴率は概ね3~4%→地上波ではテレビスポンサーがつかない
  • J1、J2全試合をカバーしているスカパー!Jリーグビジネスは赤字と言われている
  • 電通博報堂以ってしても広告看板が完売しない

 日本代表があれだけ人気なわけだから俄かに信じられないが、Jリーグの現状はこんな感じらしい。確かに自分もテレビで見るぐらいで、スタジアムに足を運んだり、グッズを購入したり、最近全くしていない。 

ポストシーズン*1の導入について

具体的にはポストシーズン制を採用すれば、2014年度の13億円減収を回避し、さらに2015年シーズンには10億円増収するという見込みがついた。この増収見込みの10億円を未来への投資の原資にできる。こうしたビジョンのもと、ポストシーズン制の導入を決断した、というのが大まかな背景である。

 2015年、つまり来シーズンから導入される。これは本当に物議を醸した事案だったと思う。オレは最初このニュースを聞いた時に「最悪やな」と思った。ただこの本を読んだことで決定に至ったプロセスがわかり理解はできた。でも理解はできてもやっぱりポストシーズン制は微妙だなと思っている。

 これはJリーグ成長戦略という大きな枠組みについて話し合う中で、名案が出てこず、万策尽きた上で絞り出されたアイディアであった。Jリーグの中の人たちも1ステージ制の現行方式がベストであるとの認識はあるが、経営基盤の安定したJリーグを築くためには迂回することもやむを得ないとのこと。

 そしていつまでポストシーズン制を続けるかはわからない。効果を検証するためには最低5年ぐらい続けるらしい。2年ぐらいで戻すことを期待していたのだが・・・。

Jリーグ秋春制に移行するのか

ただし、この確認の中で、「秋春制」という言葉は使用されていない。というのも当の欧州が、2022年のカタールワールドカップ以降に、Jリーグと同じ「春秋制」へのシーズン移行を検討する動きがあることが2013年2月に判明したからである。

 これも難しい問題だ。個人的には「秋春制」でも「春秋制」でもどちらでもいい。ただ欧州に合わせた方が移籍やら代表戦の日程やら合わせやすいと思う。でも「秋春制」の場合、北国ではスタジアムはもちろんのこと交通やら練習場やらの積雪対策が必要になってくる。これは費用もかかるので、それをどうするかを考えないといけない。

 欧州に合わせることでJリーグのシーズン半ばに移籍するケースも少なくなるだろうし、逆に欧州でプレーする選手の移籍も促せるのではないか。日本代表選手の海外移籍によるJリーグの空洞化も指摘されているが、中村俊輔選手のように日本に戻ってきてからJリーグに新しい風を吹かせるケースも増えると思うので、海外移籍がJリーグにとってマイナスの要因になるばかりではないと。ただ移籍する際にはきちんと所属クラブに移籍金が入るように(0円移籍をなくすように)、クラブ側は契約交渉時に工夫しなければいいけない。

テレビにどんどん出ていこう

 Jリーグは創設時からプロ野球にある「珍プレー&好プレー番組」を認めないスタンスらしい。あまりにふざけ過ぎた内容はどうかと思うが、そういう番組のサッカー版がゴールデンタイムに放送されても良いと思う。若くて上手くてかっこいいサッカー選手もいるのだから、そういうのが好きな層も取り込んでいくのは大切だと思う。知名度を上げるのは大切だし、好きな選手が一人でもできたらスタジアムに足を運ぶ可能性が高まる。実際セレッソは「セレ女」ブームで観客動員も増えているわけだし。ブームなのでいつか終焉が来て続かないのかもしれないが、一時的であれそこで増えた収益を設備投資やアカデミーなど将来的に還元される可能性が高いところに投資するのも必要だと思う。

その他

 「再建計画」なので、クラブの経営改革についても当然触れている。横浜Fマリノスの改革の話はおもしろいと思った。本気出して取り組めばこんなにすぐに効果が出るんだなと。それでも現状の収支がトントンってのは、Jリーグの構造自体に問題があるのではと思わされた。

 アジア戦略についても欧州に負けているので、ここも踏ん張って何とか拡大していってほしい。

 いまだにネットメディアの取材解禁がなされていないことも微妙だな。紙媒体の既得権侵害になるから見送られているとのこと。

まとめ

 今回取り上げた問題は数年前から議論されているので特に目新しい問題ではないし、感想を書いてて気づいたけど再建計画に関係ない話題が多くなってしまった。小難しいことについては本を読んでください!

 最近では海外サッカーが簡単に見れるようになったし、情報を得ることも簡単になったから、Jリーグよりもレベルの高い海外のサッカーを好む人も多いと思う。でもオレはJリーグが好きだ。100年後にはイングランドにもスペインにもドイツにも勝っている世界最高のリーグになっていてほしい。そのためにはオレみたいなライト層がもっとスタジアムに足を運ばなければいけないと思ったし、スタジアムに足を運ばせるようにJリーグは努力する必要があると思う。

*1:ポストシーズン制の大会方式は、18クラブによる2ステージ制で、まず前期・後期各ステージ1回戦総当たりのリーグ戦を行い、リーグ戦終了後、前期優勝チーム、後期優勝チーム、年間勝ち点2位チーム、3位チームの計4チームがSS(スーパーステージ)に進み、ノックアウト方式のトーナメント戦を戦う。最後にこのSSの勝者とリーグ戦年間勝ち点1位チームによるCS(チャンピオンシップ)を開催し、年間チャンピオンを決定する。