9月の内閣改造で入閣した新閣僚の「政治とカネ」の問題が国会の焦点になってきた。小渕優子経済産業相に関連する政治団体や資金管理団体に不透明な支出がある問題が浮上、野党は16日の参院経済産業委員会で追及した。事実関係によっては公職選挙法に触れる可能性があり、安定感を見せてきた安倍晋三首相の政権運営にとって火種になりそうだ。
野党は16日発売の週刊新潮の報道などを受けて、小渕氏の政治資金問題を追及した。
■公選法抵触も
野党が重く見るのは小渕氏が関係する政治団体「小渕優子後援会」と「自民党群馬県ふるさと振興支部」の2010年と11年の政治資金収支報告書の記載だ。後援会関係者らが参加した「観劇会」で、参加者から集めたとみられる収入と劇場側への支出に計約2600万円の差額がある。
参加者から観劇に見合う費用を受け取っていなければ、公職選挙法が禁じる選挙区内の有権者への「寄付」行為にあたる可能性がある。集票目当てなら「買収」にもなりうる。民主党の枝野幸男幹事長は記者会見で「買収の疑い、もしくは裏金を作った疑いは持たれて当然だ」と述べ、収入を少なく記載して裏金を捻出したとみることもできるとの認識を示した。
小渕氏は答弁で「私の方で補填したとなれば、法律に引っかかるという認識は持っている」と表明。「実費をもらっているのか確認できていない。団体に確認したい」と事実関係の把握に努める考えを示した。
■姉デザインの品
もう一つの問題は、小渕氏が代表を務める資金管理団体「未来産業研究会」が、小渕氏の実姉の夫が代表取締役の服飾関連会社に10~12年で計約200万円を支出していたことだ。小渕氏が関係する政治団体も含めれば計300万円を超えるとされる。
小渕氏は「私の姉のデザインしたネクタイやハンカチを贈答品や土産用に買った」と説明。民主党の安井美沙子氏はベビー用品や化粧品、小渕氏の地元特産の下仁田ネギの領収書が添付されていたと指摘した。
小渕氏は親族の店での贈答品の購入を「政治活動に必要な支出だ」「公私混同で買い求めたものではない」と強調したが、詳しい事実関係は「これから確認していきたい」と述べるにとどめた。
政治とカネの問題は、かつてロッキード事件やリクルート事件など資金集めに焦点が当たったが、最近は不適切な支出に厳しい目が向けられている。政治団体が寄付で集めた政治資金は公的な性格から税優遇などを受けられるためだ。第1次安倍内閣では、実在しない事務所の家賃や光熱費などを「事務所費」として計上した佐田玄一郎行政改革担当相らが辞任に追い込まれた。
■与党も説明要求
小渕氏は16日、菅義偉官房長官に電話し、調査を急ぐ考えを伝えた。菅氏は記者会見で「まず経産相が説明する。それほど時間がかかることはないだろう」と述べた。
政府・与党内からは小渕氏に説明を求める声が相次いだ。石破茂地方創生相は、自身に近い自民党所属議員による無派閥連絡会の会合で「国民が納得する対応をとらないと、かつての自民党みたいになってしまう」と指摘。公明党の山口那津男代表は「事実関係がはっきりしないところもある。まず説明責任を尽くすことが大切だ」と記者団に語った。
野党は辞任に追い込もうと勢いづく。民主党の海江田万里代表は記者団に「議員の資格につながる問題だ」と強調。維新の党の江田憲司共同代表は記者会見で「説明責任を果たせないなら、出処進退は自身で判断することだ」と述べた。次世代の党の山田宏幹事長は「衆院政治倫理審査会に出席を求める」と語った。
17日も衆院経産委員会で小渕氏をただすほか、松島みどり法相のうちわ配布問題や、江渡聡徳防衛・安保法制相の政治資金収支報告書の訂正を巡る問題の追及を各委員会で続ける構えだ。
▼資金管理団体 資金管理団体は政治資金規正法上の定義で、政治家が代表を務める政治団体のうち、政治資金を扱う団体として1つだけ指定する。政治家の後援会は政治団体の一つで公職選挙法上は「後援団体」とされる。
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