結局、人工甘味料は体にいいのか悪いのか

「ネイチャー」人工甘味料論文の衝撃(前篇)

2014.10.17(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
人工甘味料を含む飲料。「食後の血糖値の上昇を抑える」と謳うトクホ飲料も。

 「糖分は糖尿病の元凶。できることなら糖分を摂りたくない」。日頃こう考えて、糖分摂取を食事の工夫などで極力避けている人はいることだろう。コーラを飲むなら、ダイエットコーラやトクホコーラを選ぶといった具合に。

 そんな人たちを心配させるニュースがあった。9月17日、人工甘味料が糖尿病のリスクを高めている可能性があるとする論文がイギリスの科学誌「ネイチャー」に発表されたのだ。

 論文によると、人工甘味料入りの水を与えられたマウスでは糖尿病につながり得る耐糖能障害が起きやすくなったのに対し、単なる水や糖分入りの水を与えられたマウスでは変化がなかった。また400人弱の人間対象の調査でも、耐糖能障害と人工甘味料摂取の間に関連性が見られた。さらに、ふだん人工甘味料を摂取しない7人に、米国食品医薬局が推奨する最大摂取量の人工甘味料を含む食事を7日にわたり摂ってもらったところ、4人の血糖値が5日から7日以内に上昇したという。

 人工甘味料は、糖尿病患者などが砂糖の代わりとして摂ってきたもの。しかし、論文通り、もし人工甘味料の摂取で糖尿病リスクが高まるならば、これまでやってきたことは良からぬことだったことになる。

 自分の健康のために、私たちは人工甘味料とどう接すればよいというのか。

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漆原 次郎 Jiro Urushibara

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の安全に対して国民の関心が高まっている。国民が健康を意識しているのはもちろんだが、今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。このコラムでは、日本や世界における食の安全への取り組みを様々な角度から取り上げていく。