カジノ法案:「成立目指したい」「振興なら手段選ばずか」
毎日新聞 2014年10月16日 23時32分(最終更新 10月17日 00時43分)
カジノ解禁の是非を巡る論議がにわかに盛り上がっている。超党派の「国際観光産業振興議員連盟」は16日、先の通常国会で継続審議になった議員立法「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)について、日本人の入場に一定の制限を設ける修正案を決定した。安倍晋三首相が成長戦略の目玉の一つに挙げるIRだが、経済効果への期待と治安への不安が入り交じり、候補地の反応も分かれる。与党の公明党では慎重論が大勢を占め、今国会中の法案成立はなお見通せない。【宮島寛、高本耕太、久保聡】
「これから日本を支える産業は観光だ。一気呵成(かせい)に法案成立を目指したい」。国会内で16日に開かれた議連総会で、会長を務める自民党の細田博之幹事長代行は声を張り上げた。総会には議員ら163人が出席した。
IRはカジノとホテルや国際展示場などが一体化した施設。カジノを呼び水として、国際イベントを誘致するなど相乗効果を狙う。議連が法案成立に躍起になっているのは、カジノを「アベノミクス第4の矢」(細田氏)と位置付けているためだ。海外富裕層に人気のカジノは旅行者増や外貨獲得手段として認知されており、2010年に解禁したシンガポールでは国外からの旅行者が1557万人(13年)と解禁前より5割以上増えた。
東京五輪が開催される20年までに訪日外国人を年2000万人(現在約1000万人)にする目標を掲げる政府にとって、シンガポールは魅力的な「成功例」。安倍晋三首相は5月にシンガポールの施設を視察し、6月に改定した成長戦略にIRの検討を盛り込んだ。
議連は総会で、東京五輪までに全国2、3カ所程度のIR整備を目指す方針を確認。大和総研の試算では、横浜、大阪、沖縄の3カ所に開設した場合、経済波及効果は計7.7兆円。五輪開催(約3兆円)を上回る効果が期待できるという。
ただ、カジノ解禁には、周辺の治安悪化や、資金洗浄(マネーロンダリング)を助長する恐れなど負の側面もつきまとう。競馬などの公営ギャンブルと違い、民営のカジノを刑法の賭博罪の対象外にした場合、景品交換所を介することで適法と見なしてきたパチンコ産業の法的位置付けにも論議が飛び火する可能性がある。