エボラ患者に早期投与を ファビピラビル、白木富山大大学院教授が強調
北日本新聞 10月16日(木)1時11分配信
エボラ出血熱の治療薬として、各国で活用が広がる富士フイルムグループの富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」。富山化学工業とファビピラビルの共同研究に取り組んだ白木公康富山大大学院医学薬学研究部教授は、エボラ出血熱の患者の治療について「早期投与が大切だ。生存率に大きく影響する」と強調した。
白木教授によると、エボラウイルスに感染した場合、2〜21日の潜伏期間を経て頭痛、嘔吐(おうと)、出血などの症状が現れる。感染から6日経過すると、体内のウイルス量が増加し、発熱や肝機能障害が起きるという。
エボラウイルスに感染させたマウスを使った実験では、感染から6日後にファビピラビルを投与した場合、8日経過しても5匹全てのマウスが生き残った。
一方、感染から8日後に投与したマウスは、症状に改善傾向がみられたものの、生存率は0%だった。白木教授はマウスと人間の病態は異なるとした上で「人間の場合は遅くとも、発熱が始まった日からの投与開始が望ましい」と推測する。
ファビピラビルは錠剤のため、へき地でも服用しやすいことや、耐性ウイルスができにくいというメリットも指摘。エボラ出血熱に感染し、ファビピラビルを含め複数の薬を投与されたフランス人女性看護師が回復しており「一例一例の積み重ねで有効性が評価され、世界の医療に貢献できれば喜ばしい」と話した。(経済部・湯浅晶子)
■細胞内増殖を阻止
ファビピラビルは、これまでのインフルエンザ治療薬とは異なる作用メカニズムを持つ。
ウイルスが細胞に入り込むと、感染した細胞内で1万個以上に増殖する。増殖したウイルスは細胞外に放出され、他の細胞にも感染を広げる。
タミフルなどの既存薬は、増殖したウイルスが細胞外に放出されるのを防いで感染拡大を抑制するのに対し、ファビピラビルはウイルスの細胞内増殖を直接阻止することができる。ウイルスが細胞内で複製を作る際に必要とする酵素「RNAポリメラーゼ」を阻害する働きがあるためだ。
効果にばらつきはあるものの、エボラ出血熱やラッサ熱といったインフルエンザと同タイプの「RNAウイルス」に、効果が期待されるという。
◆ファビピラビル◆
富山化学工業が富山事業所(富山市下奥井)で、抗ウイルス剤の研究によって見いだした化合物。開発番号T−705、商品名アビガン錠200ミリグラム。インフルエンザ治療薬として、ことし3月に日本国内で製造販売承認を取得した。エボラ出血熱の治療薬としては、富士フイルムの提携先の米製薬企業メディベクターが、米食品医薬品局(FDA)と協議の上、治験に向けた準備を進めている。フランス政府とギニア政府も、11月からギニアで臨床実験を検討している。
北日本新聞社
最終更新:10月16日(木)6時6分
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