世の中のほとんどのソフトウェアは、アップデートで一番大事なのは機能の追加となる。店頭のパッケージとして販売する商品に対して、ユーザーにきちんと価値を感じてもらい、お金を支払ってもらうには、「最新版のソフトは、こんな機能と、こんな機能と、こんな機能もつけました。お得ですよ」とアピールする必要があるからだ。
しかし、OS Xはこのルールに縛られない。なぜならソフトの流通はインターネット経由でMac App Storeを通して行なわれる。パッケージ代や流通、在庫のコストがかからないこともあり、アップルはこれを無料で提供する。だから、あえてお得感や機能の「量」で勝負をする必要がない。
それでは、アップルはどこで勝負をするのかというと、相手によっては伝わりづらい「質」の部分がアップルの土俵となる。
OS X Yosemiteには、実はたくさんの新機能が搭載されている。
例えば、Finderでファイルを複数個選択後、歯車アイコンのメニューから「◯項目の名前を変更…」を選べば、名前を一括変換できてしまう。これはデジカメ写真などを大量に扱う人にとっては夢のような機能だろう。
Finderでのカラム表示以外に、選択ファイルの詳細が表示できるようになったのも便利だ(Finderの「表示」メニューで「プレビューを表示」)。
MailアプリもPDF校正ツールを呼び出して注釈が書き込めたり、巨大なファイルを相手の受信条件に関わらず、新規メールにファイルを添付するだけの簡単な操作で送ることができるMail Drop機能(送信時にファイルは自動的にiCloud Driveにアップロードされ、相手に届くメールでは添付した部分が自動的にiCloud Driveからのダウンロードリンクに差し代わる)。
国際線の飛行機、回りが寝静まった状態で一人仕事をするとき、周囲に配慮して画面を一番暗い状態にしたつもりでも、メニューなどを開いた際にその背景が白いため、一瞬、画面が明るくなってしまうことがある。ここで、新たに搭載された「メニューバーとDockを暗くする」モードを選べば、そんな心配もなくなる。
OS X Yosemiteを使い込んでいくと、そこかしこに小さな使いやすさへの工夫が散りばめられていることに驚かされるはずだ。
だが、アップルは同社の公式ホームページで、あえてそうした機能1つ1つを取り上げることはせず、いくつかの大事な機能の紹介だけに絞っている。一番重要なことは「機能の追加」ではなく、同OSにアップグレードしたことで得られる「体験の心地よさ」の向上だという姿勢の表れだろう。
もちろん、これまでのOS Xでも少なからずそういう側面はあった。しかし今回は特にMac単体での心地よさに加え「iPhoneやiPadと連携させながら、日々の生活の中で使う心地よさ」全般が向上したのが大きな特徴だ。
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