小渕経産相に、政治とカネにまつわる疑惑が浮上した。

 小渕氏はきのうの参院経産委員会で「お騒がせしていることを申し訳なく思う」と陳謝したが、まずは納得できる説明を求めたい。

 疑惑は、小渕氏の後援会などふたつの政治団体が支援者向けに催した「観劇会」で、費用の一部を負担していたのではないかというものだ。

 政治資金収支報告書によると、2005年から11年までの間で、観劇会に関連する収入に比べ、支出が5300万円あまり上回っていたという。

 政治団体がこの差額を負担していたならば、選挙区の有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に触れる可能性がある。

 小渕氏はきのう、観劇会の参加者からは実費を集めていたが、収入と支出に差があることについては「指摘を受けて初めて知った」と答弁した。

 さらに「私の方で補(ほてん)したことになれば、法律にひっかかるものだという認識は持っている」と述べた。

 経産委ではこのほか、小渕氏の資金管理団体が、小渕氏の親族が経営する企業からネクタイやハンカチを贈答品として購入していたことが「公私混同ではないか」と指摘された。

 いずれも重大な問題である。小渕氏は後援会などに事実関係の調査を求めているが、自らの責任で結果を早急に明らかにすべきだ。

 政治とカネといえば、2006年からの第1次安倍内閣では、「事務所費」などの名目による不透明な支出が次々と明らかになった。閣僚が苦しい説明を繰り返したあげく、辞任ばかりか自殺にまでいたるという悲劇も起きた。

 先の第2次内閣ではこの種の不祥事は影を潜めていた。ところが改造されたとたんに松島法相が選挙区内で自身の似顔絵入りのうちわを配ったり、江渡防衛相が政治資金収支報告書を訂正したりといった問題が表面化した。相次ぐ事態を安倍首相はどう考えているのか。

 閣僚に限らず政治家は、疑惑を持たれれば説明するのは当然だし、公選法や政治資金規正法は厳格に運用されなければならない。野党が国会で厳しく追及するのは当然だ。

 国会で議論すべき課題はたくさんある。それなのに経済の成長戦略やエネルギー問題、安全保障政策などの重要政策を担当する閣僚が、貴重な審議時間を自らの疑惑の釈明に費やさざるを得ない状況にしてしまった責任は極めて大きい。