(英エコノミスト誌 2014年10月11日号)
野党は強い首相に対抗するのに悪戦苦闘している。
相次ぐ暗い経済ニュースで、安倍政権を取り巻く無敵の雰囲気が弱まった。
東京、大阪、福岡などの活気のある大都市以外では、一般市民が安倍晋三首相の政策はほとんど自分たちのためになっていないと声高に不満を訴えるようになっている。
一方、4月の消費税増税は成長に大きな打撃を与えた模様で、例えば第2四半期(4~6月期)の国内総生産(GDP)は年率換算で7.1%減少した。
これは効果的な野党にとって格好の材料のように思えたかもしれない。だが、安倍氏の人気に陰りが見え始めたとしても、同氏率いる自民党と対抗する野党は依然、有権者に痛烈な失望を与え続けている。
有権者を失望させ続ける野党の現状
日本の野党は長年、分裂し、規律を欠いていた。そうした欠点はここへ来て、一段と深刻さを増しているように見える。2年前の自民党の地滑り的勝利によって政権を追われた最大野党の民主党内でも、2大政党を取り囲む寄せ集めの小政党の間でも、状況は変わらない。
近代化を進める勢力として当初期待を集めていたのが、今は亡き自民党の実力者の息子で、同党を離党した渡辺喜美氏と、かつて民主党の希望の星だった浅尾慶一郎氏が2009年に創設したみんなの党だ。
両氏はともに、官僚が持つ力とそれぞれの出身政党の市場志向の欠如に苛立っていた。彼らが立ち上げた新党は、専門職の若手の心に訴えた。
しかし今年4月、渡辺氏は親しい実業家から借りた8億円の使途を説明できず、代表辞任に追い込まれた。現在は、自身の後を継いで代表に就いた浅尾氏の辞任を要求している。浅尾氏がみんなの党を、渡辺氏が2012年12月に首相復帰を支持した安倍氏と連携させることを拒んでいるからだ。奇妙にも、浅尾氏は中傷に耐えている。
苦しい立場に置かれたもう1人の党首は、民主党代表の海江田万里氏だ。民主党の幹部らは何カ月にもわたり、同氏に公然と反旗を翻してきた。海江田氏は、選挙での敗北から民主党が直面している危機の深刻さを十分に理解していないように見える。この9月、同氏は党執行部を刷新して批判勢力を数人招き入れることで、辛うじて代表の座にとどまることができた。