2014-10-16 映画感想「ミリオンダラー・アーム」「ぶどうのなみだ」
「ミリオンダラー・アーム」
インド人初のメジャーリーガーを育てた、JB・バーンスタインの実話を基にした作品だが、本当になんの変哲もない、ストレートな人間ドラマだった。平凡といえば、そうなのだが、よくある展開を、よくあるタイミングで配置したオーソドックスな脚本は、ある意味、安心して見られたというべきだろう。
映画は、JBが、これこそと目をつけていた、名選手ポポを、別の大手に取られるところから始まる。一発逆転を狙ったJBは、苦肉の末に、インド人から、メジャーリーガーを発掘することを思いつく。
そして、メジャーリーガーになれたら百万ドルのチャンスを掴むと、ミリオンダラー・アームというイベントを開催する。当然の成り行きで、原石のような選手を見出し、アメリカに連れて行ってからの波乱万丈が描かれる。
アラン・アーキン扮する曲者スカウトレイのキャラクターが、物語にスパイスを与え、平凡ながら、連れてきた2人リンクとディネシュの挫折、JBの恋が描かれ、一度失敗したメジャーリーグ入団テストを再度行ってのハッピーエンドに流れてエンディング。
本当に。普通の作品で、なんの奇をてらった演出もないが、その分、分かりやすいといえる。凡作、というのは、表現が悪いかもそれないが、本当に普通の映画だった。
「ぶどうのなみだ」
大人のメルヘン。絵本を開いて、語りかけてくるようなとってもやさしいファンタジーでした。
理想のワインを作ろうと奮闘する一人の男の物語ですが、全体から漂う空気は、まさに童話のようにメルヘンチックなのです。
指揮者の格好をしている主人公アオが、斧を振り上げて自分に向けているシーンから始まる。丘の上に、枯れたようなぶどうの木が、絵画のように存在する構図が美しい。
弟のロクとワイン造りをしているアオ。弟は小麦を作りパンを作っている。そこへ、ある日、キャンピングカーを引っ張って一人の女性エリカがやってくるところから物語が始まる。注意しに行く駐在さんの服装や車、さらに郵便配達の男のいでたちが、ちょっと寓話的なので、この作品の色が見えてくる。
近所の女たちと一緒に演奏をするシーンはまさに絵本の中の世界である。
突発性難聴で指揮者の道を諦めて、父の農園にやってきてワイン造りを始めたアオ。何度やってもうまくいかない。
エリカはそんな農園の外に穴を掘り始める。アンモナイトを集めているのだという。
絵本のページを一ページづつめくるように物語が進んでいく。
アンモナイトがみつかり、今年も失敗したアオのために、事業で成功した母にお金を借りるエリカ。彼女はそれで、新しい樽を作りアオにプレゼントして、その場を去る。やがて時が経ち、新しい樽で作ったワインは成功、エリカに会いに行ったアオはエリカとキス。
近所の人々が音楽を奏で、ぶどう畑の中を練り歩く。
ある意味、監督の少女趣味的な感じがする映像であるが、とってもほのぼのと語りかけてくれる。この色がちょっと素敵な映画でした。