14年10月16日 / 広瀬 隆雄
欧州ソブリン債にボンヤリとした不安が再燃
欧州のソブリン債市場にボンヤリとした不安が再燃しています。その理由はギリシャの10年債の利回りが7%を超えたからです。
まさか今になって3年前のギリシャ危機の頃の懸念をぶり返すなどと誰が予想したでしょう?
いまのところ、国債価格の急落はギリシャだけの現象であり、それが南欧諸国に飛び火する兆候はありません。スペインとイタリアの5年債の利回りとドイツの5年債の利回りとの格差は、ここ数日、ほんの僅かだけ拡大しています。
イタリアやスペインの5年債利回りの水準は極めて低く、借り換え不安が出るような水準とは程遠いです。
ギリシャではアンチEUを掲げる左派SYRIZA党が草の根の支持を集めています。投資家が不安を感じている一因はそこにあると思われます。
その一方で、ギリシャ政府はここ数年、財政赤字の圧縮に最も努力してきた国のひとつと言えます。ギリシャの財政赤字がGDPに占める割合は2009年のピークの-15.6%から、今年は-2.7%にまで急改善しています。これは同じ時期、日本の財政赤字が-10.4%から-7.1%にしか改善していないことと比べても、立派です。
つまりここ数日にわかに再燃してきたソブリン不安は、余り経済の実態を反映しているとは言えないのです。
それでも不安が出る理由は、経済が低迷するとフランス、イタリア、ギリシャなどの国々は政局が混乱しやすいと考えられているからです。
これに対するクスリは経済成長です。そのためにも欧州中央銀行(ECB)は、緩和的な政策を一層推し進めることが期待されます。