2014年10月16日13時54分
旧日本軍の慰安婦問題に関し、国連人権委員会(現・理事会)の特別報告官が1996年にまとめた「クマラスワミ報告」について、菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で、日本政府がこの報告を作成したスリランカの法律家ラディカ・クマラスワミ氏に対し、「見解を修正するよう求めた」と述べ、一部修正を要請したことを明らかにした。
外務省によると、修正を申し入れたのは、報告のうち、慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の著作を引用した部分。外務省の佐藤地(くに)・人権人道担当大使が14日、ニューヨークでクマラスワミ氏と面会し、修正を求めたという。菅氏や同省によると、クマラスワミ氏は「証拠の一つに過ぎない」として、修正を拒んだという。菅氏は「国連をはじめ国際社会に粘り強く説明し、理解を求めたい」と述べた。
朝日新聞は8月5、6日の朝刊に掲載した慰安婦の特集記事で吉田氏の証言を虚偽と判断し、証言を報じた過去の記事を取り消した。菅氏は会見で、修正を求めた理由として、朝日新聞が記事を取り消したことを挙げた。報告は、吉田氏の証言を含めて、朝日新聞の報道を引用していない。
報告のうち、吉田氏に関する記述は英文字で約300字。同氏の著書からの引用だと明記したうえで「国家総動員法の一部として労務報国会のもとで自ら奴隷狩りに加わり、その他の朝鮮人とともに千人もの女性たちを『慰安婦』任務のために獲得したと告白している」と記述。現代史家・秦郁彦氏が吉田氏の著作に異議を唱えたこともあわせて掲載している。
◇
〈クマラスワミ報告〉 国連人権委員会の「女性に対する暴力」の特別報告官だったスリランカの法律家、ラディカ・クマラスワミ氏が1996年に戦時中の旧日本軍の慰安婦問題についてまとめた報告。慰安婦を「軍事的性奴隷」と位置づけ、日本政府に法的責任を認めることや、被害者への補償など6項目を勧告した。報告作成にあたって日本や韓国を訪問し、元慰安婦や研究者らに聞き取りをした。
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞官邸クラブ
PR比べてお得!