10月14日、『めざましテレビ』で、前週に行われたモーニング娘。'14のNY公演の様子が特集されました。
大型の台風が日本列島を串刺しにした翌朝だったので延期もやむなしと思っていたら、きくかわマネージャーのツイートで放送される時間帯が告げられ、安心して待っていると、CMが明けにいきなり威勢の良い声が飛び込んできました。
道重「やってきました ニューヨーク~!」
娘。全員「イエーーーイ!!!」
最初に印象に残ったのは、10人のテンションの高さ。渡航直前の武道館公演を観て「今の10人でできることをすべて出し切りたい」という意識を感じたのですが、その雰囲気がそのまま画面越しにも伝わってきました。
帰国後のブログやラジオでスケジュールきつきつの強行軍だったことが伝えられましたが、その分ぎゅっと凝縮されたものであったことがうかがえます。
ここからはじまる7分にも渡る特集は、今のモーニング娘。を様々な視点から知らしめる、現地の彼女たちのスケジュールと同じぐらい凝縮された内容でした。
今の娘。を最も知る番組の盛り沢山なリポート
この夏のめざましライブで道重リーダーはこのように言っていました。
「『めざましテレビ』さんには本当にお世話になっていて、めざましじゃんけんにも何度も出させていただきましたし、カルベヤでは軽部さんが私たちのキャラクターを沢山引き出してくれて凄く嬉しかったし、もうお世話になりすぎちゃってスタッフさんに会うと凄く安心感が感じちゃうぐらい、沢山お世話になっているなあと思います。どうもありがとうございます。」(参考 『めざましテレビ』「カルベや」 道重親方の公開稽古 - テレ娘。 )
/「めざましライブ2014」(2014.07.30)アンコール後のMCにて
道重体制のはじめから、今のモーニング娘。の姿を逐一伝えてきたのはこの番組でした。チャート1位の喜び、毎ツアーのライブ映像、とりわけ「フォーメーションダンス」というキーワードを拡散し、「今のモー娘。」の特長を存分に伝えてきてくれたことは正にリーダーのおっしゃる通りだと思います。
そんな『めざましテレビ』が伝えたもの。
ニューヨークを舞台につたない街ロケ
ある意味、一番の驚きだったのはここでした。
「ハロプロ=王道アイドル」みたいなイメージが戻りつつある昨今ですが、実はこういったアイドルらしいお仕事は、ご無沙汰だったりします。おそらくこの一年は、外向けの番組(BS日テレ『はぴ☆ぷれ』)をやっていたハロプロ研修生の方が機会が多かったはず。
初めての場所に行き、知らない人に会ったり、美味しいものを食べたりして、その感想を伝える。そんな普通のアイドルに見られるロケの映像を、まさかニューヨークを舞台に見られるとは驚きです。
でも、いきなり海外で挑戦ってのは、いきなり武道館で加入のお披露目をするようなグループなので、これも娘。らしいかもしれません。
生田衣梨奈・飯窪春菜【任務】ニューヨークでモーニング娘。'14をアピール(前編)
街行く人にモーニング娘。を宣伝するというミッション。
この御役目を、娘。の「切り込み隊長」生田と「広報担当」飯窪の両名に任されるあたり、さすが『めざまし』はよくご存知。とはいえ、英語はてんでダメなのでヒヨる二人。恐る恐るテレビインタビューの交渉をするも返ってくる答えは「No thank you.」の連続。
ここで「断られ続ける」というテロップとともにBGMは『時空を超え 宇宙を超え』に変わってにわかに悲しいムードに。「いやいやトキソラをそんな使い方しないで」と思いましたが、「(取材に応じてくれる人に)出会えると信じ 君を待つ」という意味では間違ってはいません(笑)。そして、良いか悪いかマイナー調が異様にハマります。
ビジネスマンも、散歩しているカップル連れも、果ては子どもたちにも断れた二人、一体どうなる(続く)。
ここでナレーションが入るんですが、、、
ナレーション(軽部)「もしかしたらコンサートもガラガラなのかも?」
NY公演はお客さんで埋まるのか!?というフリになっています。これは2年前のお台場での活動に対応したパートなんですよね。
初めてのめざましライブで、事前にライブ告知のビラ配りを行ったのも今ではいい思い出です。『One・Two・Three』を引っ提げた正に「1(One)からのスタート」として、謙虚な姿勢で「新生モーニング娘。」のPR活動を行いました。
※お台場合衆国で会場スタッフに扮してPRするが、道重・田中以外は誰も気づかれなかった。
/『めざましテレビ』(2012.07.25放送)
この時を再現する形で、今度は誰も知らない未開の地ニューヨークで『Password is 0』のBGMにのせ、「0からのスタート」に取り組んだわけです。
後で思ったのですが、早々にチケットが売り切れた公演の宣伝をわざわざ行っているわけではなく、ここに不安や寂しさを出すことで、後半に出てくる大盛況のコンサート会場とのコントラストを生んでいるんですよね。ちょっと冗談交じりの演出が組まれていました。*1
鞘師里保・鈴木香音【任務】ニューヨークのグルメ探し
一方、グルメレポートを鞘師・鈴木組が担当。
生田・飯窪組以上によくご存知だなあと実感するのは、この二人に美味しいもの探しをさせたことでしょう。かたやわんこそば早食い100杯超の大食いなエース・鞘師と、ぽっちゃりで食いしん坊なバラエティ担当・鈴木。同期で同い年でファンの間でも人気の高いコンビを「甘やかす」というファンにはたまらない演出に、タイムラインは大いに盛り上がりました。
情報番組のレポーターよろしく、今のNYのトレンドだという中近東料理の屋台グルメを紹介。ケバブをピタで食べるようなファーストフードのお店に立ち寄ります。
--ワゴン型の屋台に到着。
鈴木「なんて書いてあるんだろうね?」
鞘師「ふっふっ」(※この時点ですでに笑い始めてる鞘師)
鈴木「イタリアン……さうさげ?」
鞘師「さうさげ(笑) これはソーセージ[SAUSAGE]だと思うよ」
鈴木「(一寸考えて)……さうさげ(笑)」
--いざ、注文。
鈴木「アイム・ハングリー!ベリー・ベリー・ハングリー!」
店員「What's want? Would you like today?(何が食べたいの?)」
鈴木「あう?」
--いったんジャブを食らうも気を取り直して、、
鈴木「チキンジャイロ!」
店員「Chicken gyro. No lamb?(ラムじゃなくて?)」
鈴木「ラムジャイロ!」
店員「Lamb gyro?(ラムジャイロ?(苦笑))」
鞘師「食べたいもの変えちゃったよ」
「前へ前へ」の鈴木を淡々とつっこむ鞘師。普段、舞台上で鞘師が前に居て鈴木は後方でユニゾン、舞台裏で鞘師が凹めば鈴木が支え、カメラの前で鈴木がぐいぐい出てボケれば鞘師が引いた位置でツッコむ、ダブルボランチのように絶妙なコンビネーション。でも、これはファン目線のお話で、きっと知らない人が見れば無邪気な子供たちですね(笑)。
鈴木「ベリー ベリー……」
鞘師「辛いk……」
鈴木「Yummy!」
鞘師「そう、ベリーベリーYummy」
食レポらしく「辛いけど美味しい」みたいなことを言いたそうだった鞘師も勢いに負けて繰り返します。ていうか、Yummyって言いたかったんでしょうね。思えば、愛ちゃんや愛佳がブログをはじめたばかりの頃、食べ物の写真を載せる度に使っていたワードでした。2人のボキャブラリーの引き出しに入っていたのでしょう。
食べること大好きな二人の美味しそうな顔で伝える雰囲気重視のレポートは、食レポというより「はじめてのおつかい」のようでした。
生田衣梨奈・飯窪春菜【任務】ニューヨークでモーニング娘。'14をアピール(後編)
一方、カメラは戻って先ほど苦戦していた生田・飯窪組。現地在住の日本人母子に「モーニング娘。頑張って!」と声をかけられたところから運気が巡ってきて、カメラを見つけた現地の男性がそばにやってきます。
--現地の男性に日本のアイドルだと伝えると、、
現地男性「Amazing! Sing something.(すごいね 何か歌ってよ)」
生田「(通訳を介して)え!何か歌ってくれ?」
飯窪「 ♪ モーニング娘。も」
二人「 ♪ Wow Wow Wow Wow」
生田「 ♪ あんたもあたしも」
二人「 ♪ Yeah Yeah Yeah Yeah」
--歌にのせて男性が踊りだす。
二人「 ♪ Dance! Dancin' all of the night」
現地男性「Oh my god.(すごいね)」(男性が拍手)
二人「イエーイ!」
生田「人が増えてきた~!!」
0から始めて1人また1人と取り巻きを作ります。歌割り無しコンビが何と歌で惹きつけることに成功しました。
歌は万国共通だと学んだ二人、この二人は今後もこういったレポーター的なお仕事があると思いますが、何らか手応えを感じたのではないでしょうか。
役目を終え、場面はいざライブ会場の BEST BUY THEATER へ。
ナレーション(軽部)「手応えを掴んで、いざニューヨーク公演、果たしてお客さんの反応は……」
ナレーション(軽部)「超!いい感じだった!!」
意義のあるライブレポート
セットリストの1曲目『One・Two・Three』。
ライブ当日のツイートでも会場全体が始めからフルスロットルだったことは伝わっていましたが、サビの「One!」「Two!」「Three!」の掛け声は会場の一体感がとてもよく伝わります。
続いて、3曲目『わがまま 気のまま 愛のジョーク』。
ここでも会場全体にとどろく「愛されたい!愛されたい!」の大合唱。思わずワイプの三宅さんも「こんな盛り上がってるんだ……」とつぶやきます。
と、ここでお客さんへのインタビュー。
「モーニング娘。'14 何で知ったの? どこが好きなの?」
当日訪れたファンへの質問とその答えが秀逸でした。
通常の日本人の海外公演の取材で多く見られるのは、「このライブを観てどう思ったか?」と【感想】を尋ねる場面ですが、ここで訊いたのは「何故知っていて、どこが好きなのか?」という【理由】でした。つまり、予め観る前から知っていたことを前提にした質問だったのです。
そして、その期待に応える回答がずらりと並びます。
- 17歳学生、モー娘。のダンスが好き
「外国の文化について学ぶ授業で彼女たちを知って夢中になったの」
- 20歳の学生、NY生まれNY育ち
「YouTubeで知ったよ 歌も上手だしすべてにおいて最高なんだ アメリカの音楽はずいぶん聴いてないな」
- イギリスから1人で来ました
「主に曲が好きなんだ ダンスよりも曲が好き」
「(他に好きな日本のアイドルは?との問いに)お気に入りは山口百恵」
※この英国の若者は "Japanese teen idol" と訊かれたのに対し "favorite artist" で返事してました。しかも百恵ちゃん(笑)
- 22歳、ファン歴10年
「(メンバーチェンジなど)常に変化し続けているところが好き ずっと同じということがないから飽きないわ」
これらすべて、ファンが世間に知ってほしい「世界から見たモー娘。」の姿なんですよね。知名度、動画による伝播、楽曲や歌の魅力、アーティストとしてのモー娘。、そして変化し続けるグループの特徴が受け入れられている。これを引き出す質問も素晴らしいし、またインタビューでサッと答えが出てくる海外ファンの思い入れも素晴らしい。
その後、海外ファンがコールが憶えていることにもフィーチャー。
ナレーション(軽部)「外国にも詳しいファンがいてビックリ。しかも曲ごとのコールまで知っているとは!」
※会場全体で「ピース!」「Yeah×4!(LOVEマシーン)」。この辺は当たり前で、新旧問わず動画に収められているものは習得している。
楽曲に合わせて一体となる客席の様子を抑えると、終演後には泣き出す何人もの女性ファンや「モリ娘。」衣装に着替えた男性*2の興奮の声も聞かれました。
最後は、この公演を伝えるに避けては通れない、象徴的な「あの出来事」について。
世界の「ズッキ人気」
終演後の娘。メンバーへのインタビューは道重リーダーに続いて鈴木へ。
鈴木「自分のマイク使ってる声がかき消されるぐらい大きな声援をいただいちゃって……」
※会場中に揺れる大量に緑色のライト
鈴木「日本でもこんなに人気があればいいのにって思っちゃいました(笑)」
きっちりと話にオチをつけました。ネットニュースでも、取材時に自身の口から発した「アメリカンサイズ」というキーワードが必ず使われていましたが、最近は道重リーダーが言うところの「プレスが使いやすい言葉」を意識しているように見受けられます。
さて、前半のなんちゃってレポーターぶりはファンとして嬉しかったのですが、それよりもライブレポート以降の後半部分が、見どころとして非常に強かったと思います。
何が素晴らしいかって、インタビューをはじめ、歌ってる娘。たちではなく観客の海外ファンに映像の多くが割かれていたこと。ここに今回の取材のテーマがあります。
ようやく世に出た世界の「モー娘。文化」
この特集企画が伝えたかったのは、「海外公演を行なったモー娘。」ではなく、「モー娘。の海外での人気ぶり」だったのですよね。…というと分かりづらいですが、つまり、単に出来事を伝える芸能ニュースではなくて、モーニング娘。を取り巻く今の状況を見せるドキュメンタリーの要素を多く含んでいました。
モー娘。=カルチャーへの理解
今回の特集は、モーニング娘。だけでなく、モーニング娘。を取り巻く文化全体を「ポップカルチャーのケーススタディ」のように取り上げる側面を持っていたと思うんです。
動画を通じてモーニング娘。の魅力が世界に伝わっていることは、ファンとしては、「YouTubeで『踊ってみた』を見ればすぐ分かる」と思ってしまいます。が、ネットに詳しい人には伝わるかも知れませんが、ネットがあまり得意でない人には別世界に見えてしまい、「一部のオタクの遊び」としか受け取られなかったりします。日本のポップカルチャーの一つとして浸透していると伝えても、動画の数や再生回数ではインパクトに欠ける。そもそもネットの規模感が分からないので、回数が多いのか少ないのかも伝わりづらい。
ところが、それが海外の生の反応を映像に収めるとがぜん説得力を持つのですよね。現に知っていたつもりのわたしたちでさえ、NY公演を映像で見た時の熱量には少なからず驚かされました。
今どきの海外公演の傾向
昨今、特にクールジャパンの号令以降、海外公演を行うアーティストががぜん増えました。でも、そこでちょっと普段見ているニュースの芸能コーナーを思い浮かべて欲しいんです。
もし、名前の知らない歌手がどこかの国で大盛況だったと聞いたら、多様化の今の時代なので「そういう人もいるんだね」で終わってしまったりしませんか? 例えば、千原せいじが海外ロケして遠くの国で現地の人たちに人気の日本人歌手がいた!だとか、最近そういった海外ドキュメントバラエティが増えていて、知らない人なら「ふーん…」になりがちです。
また、名の知れた歌手であっても、過去の人として報じられる場合もよく見られます。一度大きく売れた後しばらく下火になっていたと思ったら海外で活動していたというお話。台湾・香港・韓国あたりの東アジア圏でよく聞く例です。
あるいは、現在進行形で注目されているメジャーアーティストの海外公演のニュースもよく聞きます。この場合は、先日のNYの現地邦字紙の代表の方のブログにもあった「ブランディング」目的の場合も多く、日本人が多く埋まった客席をあまり映さずに「大成功」という見出しが踊ったりします。
日本のアーティストがNYでライブをする際、観客の実際は現地の日本人がほとんどだったりすることも珍しくはありません。 それでも日本に帰国時の際、「NYで大盛況!!!」っていうお土産を持って帰れる。つまりはブランディングのためのライブだったりもします。 /モー娘。NYコンサート行ってきました(^^;)|NY 新聞社社長の摩天楼★日記(2014.10.07付) |
ちょうど先日のX JAPANのマジソン・スクエア・ガーデン公演のニュースで、殊更に現地の人が多いことを強調しているのを見て、「じゃあ逆に強調しない場合って……」と考えさせられました。
パリ公演を振り返り
ここで振り返って残念なのが、4年前のフランス公演です。2010年のフランス・パリで行われたANIME EXPOの公演でも『めざましテレビ』は同じような特集を組んで伝えていました。しかも中澤さんが臨時レポーターを担当するほどの力の入れ具合です。
しかし、当時のモーニング娘。自体の状況はどうだったかというと、「モー娘。まだやってたんだ」と言われていた頃だったのですよね。上の例で言えば「過去の人」のように見られてしまっていました。その前後にグループ全員でテレビ出演することが極端に少なかったので仕方ありません。
また、クールジャパンへの理解も、まだどこかオタク寄りの見られ方が強く、「ふーん…」だったところもありました。
※熱狂ぶりは伝えられたものの、VTR明けのスタジオは「へぇ~」という雰囲気。大塚キャスターは「ブームの頃の熱気を思い出しましたね」とコメント。致し方なし。
/『めざましテレビ』(2010.07.06放送)
クールジャパン政策開始直後ということで、ポップカルチャーの取材との合わせ技ですが、趣旨は「モー娘。特集」。今見るとすごく惜しいんですけどね。扱いはより文化的な側面をとらえていてかなり似ています。ファン目線だとパフォーマンスに一切触れられなかったことと日本人がほとんどいないと伝えなかったことが決定的な違いだと思うかもしれませんが、世間的には「日本で忘れられているモー娘。」なので「ふーん」だった、といったところがやっぱり大きかったと思います。結局、めざましとテレ東深夜の特番で伝えられた以外では話題になることはありませんでした。
ちなみに、今回のNY公演のレポートで、櫻井孝昌さん(@sakuraitakamasa)は当時のパリ公演の頃からの話を伝えています。
LOOKING EAST / Morning Musume triumphs on Broadway - The Japan News
櫻井さんはパリ公演以降、世界でのハロプロの反響について伝えてきていますが、やはり地上波で伝えられたかというと、わたしの記憶では同年の年末の深夜に単発のポップカルチャーを特集したドキュメンタリーがあり、そこで紹介された以外は「ポップカルチャーとしてのモー娘。」が伝えられることは無かったと思います。
そんな中、「まだやってたんだ」から、ようやく現在進行形で注目される状態にまでなった「今のモー娘。」が、いよいよ渡航することになった。これは大きなチャンスでした。
だからこそ伝えたかった
『めざましテレビ』でモーニング娘。の取り上げが顕著になったのは2年前の道重体制スタートの頃からだったと思います。
駆け出しの頃から追ってきて、子どもたちが一心不乱にダンスする様子が評判になり、それがネットで目に止まり、CDの売上が好調となり、売上チャートで結果を出す度に喜びの声をあげ、ようやく「今のモー娘。」が認知されて、「フォーメーションダンス」が一目置かれるまでになった。
その一連を追ってきた『めざましテレビ』にとって、今回のNY公演は「時が来た」と言うべきタイミングだったんだと思うんです。だからこそ、非常に丁寧に追っていたような気がします。
ここでもう一度VTRを振り返ってみます。
日本で人気が増してきたとはいえ、まだまだ顔が見えない「今のモー娘。」。
一人ひとりを見れば、恐る恐るインタビューしている子や、慣れない英語で子どものように無邪気に屋台のファーストフードを頬張る子たちです。
でも、その子たちが、ひとたび本場ブロードウェイの舞台を踏むとフォーメーションダンスがスポットに栄え、それがすさまじい熱量を持って迎え入れられている。
この時点で、このギャップは狙いだったのではと思いました。
更に畳み掛けるように、「好きな所」「好きな理由」を現地のファン(日本に来ている外人さんでないところに説得力が生まれる)の口から聞いて掘り下げ、日本発 「Momusu。」の海外での浸透ぶりを丁寧に伝えます。
日本以上に音楽の面で注目されていることや、その注目がずっと前から続いているということが語られ、海外に土壌があることが証明されるのです。
そうして、日本で人気になった若いモー娘。が、昔から応援している長年のモー娘。ファンと出会うことで大きな爆発を生んだ場面があらためて映されます。
4年前のレポートに、フォーメーションダンスという武器を持った現状の人気やインタビューで裏付けた理由を加えることで、今だけでなく「昔から」、日本だけでなく「世界中で」という、時間・場所をすべて引っくるめた「モー娘。文化」が確かに存在しているのだと、まるでガラパゴス化した箱のフタを開けるように伝えられる秀逸なライブリポートに仕上がっていたと思います。
この事実を視聴率10%前後の番組で特別に取り上げられたことは、非常に意味のあることだったと思います。
で、何故ここまでするのか考えてみたんですが、もはや単に最近番組が推してるモーニング娘。だからというだけではなく、非常に稀有なジャパンカルチャーの成功例だからという側面も強い思うんですよね。しかも、『きゃりーぱみゅぱみゅ』『Perfume』『ドラゴンボール』『ドラえもん』『キャプテン翼』に比べて、世間にもあまり知られていない。これも珍しいことです。ようやく「ふーん」にとどまらず注目してもらえるようになった今、情報番組としてこれぞ伝えなければという「使命感」を感じたんじゃないかと思います。
映像については他局を入れない独占取材の形をとり、かつ、現地レポについて緘口令を敷いていたように見受けられました。本気だったのだなと、放送されてから感じました。
NY公演は素晴らしかったのですが、伝え方も素晴らしかったと思いました。
リーダー道重の見せたい景色
さて、思い出すのは卒業発表の挨拶。
まだ時間はあるし、後輩たちに伝えたいことはまだまだあるし、見せたいなあって思ってることもあります。
/『モーニング娘。’14コンサートツアー春 ~エヴォリューション~』 (2014.04.29 山口県 周南市文化会館) アンコール後MCにて
海外公演は、現役で自分だけが知る経験でした。今年の夏に放送された『J-MELOスペシャル』でこのように語っています。
May J.「海外での全てのライブに参加しているのは、今リーダーを務めているさゆみちゃんなんですけれども、世界中でファンが増えていく様子をリアルタイムで感じて、いかがでしたでしょうか?」
道重「ホントに! 日本だけで活動してると知らないこともあったりして、海外に行くとこんなにも愛されてるんだなってスゴい実感することができて、まず空港に降りた瞬間から大スターになった気分になるくらい皆さんが歓迎してくださって、コンサートでもスゴいモーニング娘。の曲を、もう振付とかも完璧だったりとか、衣装も真似してくれた女の子が居たりとか、なんかスゴい愛を感じるので、今のこのモーニング娘。でライブしに行きたいなってスゴく思いますね。」
/『J-MELOスペシャル ~世界と作ったナンバーワンヒット~』(2014.07.06放送)※収録は5月
後輩たちに見せたいと思っていること、その一つが世界の公演の舞台から見える景色であったことは間違いありません。日頃なかなか手応えを感じられないけれど、世界には自分たちを強く待ち焦がれているファンがいる。それを知識でなく体感で得て欲しい。そう思っていたはず。
思えば1年前、世間に自分たちを知ってもらうため、日本中をプロモーションのために旅しながら「愛されたい!愛されたい!」と叫んできた彼女たち。
でも、あの誰もいないホールに実は沢山の愛してくれるファンが居たんですよね。世界中から愛されていたことを知ることとなりました。
景色を知った後輩たちのこれから
通常のグループなら、0からスタートして自分で世界の壁をこじ開けなければなりません。けれど、彼女たちは世界から招かれ温かく迎え入れられました。それは過去の積み上げも加味されているからにほかなりません。
そんな恵まれた彼女たちにこの先求められるのはこの積み上げをキープすること……では無いと思っています。先日、Billboard JAPAN編集長・平賀さんのインタビューで、鞘師はこんな不安を語っていました。
--実際、道重さゆみが卒業した後、9期、10期、11期の9人はどうなっちゃうと思いますか? 鞘師里保:うーん………………今のままだとモーニング娘。らしさが無くなっちゃうかもしれない不安はあります。 鞘師里保:メンバーが変わってその時々でモーニング娘。の印象が変わる。それはもちろんあると思うんですけど、でもどこかひとつ筋が通っていたと思うんですよ、今までは。それをこの先も継続できるか。っていうところかな? /モーニング娘。'14“エース”鞘師里保 初単独インタビュー│Special│Billboard JAPAN(2014.10.07付記事) |
読んでいて個人的に違和感を持ったのはここでした。「らしさ」が壊れることを恐れる必要は無いと思います。彼女たちに求められているのは過去のモーニング娘。の完コピではないですから。
これまでのモーニング娘。を壊したとしても、そこに何か良いものを作ろうという信念を貫き通すなら、おそらくファンは理解し応援することでしょう。なぜなら、その先にきっと面白いことがあるに違いないのだとファンは知っているから。その面白いことが新しい「モーニング娘。らしさ」になるのだと歴史が証明しているから。それがこの長く続くグループの醍醐味であるとファンは信じて疑いません。
この厚い信頼こそが、彼女たちに預けられるモーニング娘。の財産だと思うんですよね。
今回のツアーは、その厚い信頼が世界中のファンに浸透しているのだということを発見する旅でもありました。上で触れた観客へのインタビューの言葉をもう一度引用します。
「常に変化し続けているところが好き ずっと同じということがないから飽きないわ」
※テロップに「(メンバーチェンジなど)」と補足がありますが、語る言葉の中に人をさす単語はありません。音楽性やグループのキャラクターを言っているのだと思われます。
継続は単に結果であり、望まれているのは変化なのです。今回のVTRの中で、個人的に最も感銘を受けたのがこの方のこの言葉でした。これほどまでに「モーニング娘。」文化は世界に知られているのか、と。
10年来のファンというこの方の言葉は、正にモーニング娘。の存在意義をピタリと言い当てた至言であった言えるでしょう。
■
これから彼女たちは、キープよりももっと上のものに挑戦します。
モーニング娘。において「受け継ぐ」とは、「継続」ではなく「変化」や「進化」と言い換えてもいいかもしれません。過去にそれを実現してきたグループである以上、彼女たちも同様に、自分たちの色に変化させていく使命を背負っています。きっと、それは並大抵のことではないでしょう。
でも、これから旅立つにあたり、彼女たちを大きく後押ししてくれるファンが世界中にいるのだと知り、生の熱気を肌で感じ取れました。きっと彼女たちは勇気をもらい、大きな自信につなげるに違いありません。
『出し切る。走り切る。』*3 と決めたこの一年も第4四半期をむかえ、道重リーダーのラストシングルがリリースされ、最後の角を曲がりました。卒業することをメンバーに伝える際、道重さんは残り半年の過ごし方についてこう言っています。
「さゆみもリーダーとして一生懸命頑張るから、みんなも今まで以上に必死に頑張って欲しい。」
NYの地で、いつも以上にテンションの高い発声から始まる映像を見るに、時差ボケやハードスケジュールの中、一期一会の舞台や10人で最初で最後の機会に、今しかないという集中力を研ぎ澄ませて臨んでいるように思えました。時間に追いかけられるのではなく、時間を追いかけるかのよう。全力を尽くした今回の経験は、この先への助走となっていくことでしょう。
冒頭で「思い出づくり」と銘打ちつつ、その実 道重さんがほとんど出演しなかったこの映像は、これからの娘。たちが存分にフィーチャーされ、また世間に知られていない「モー娘。文化」が垣間見られる貴重なリポートでした。これを「集大成」のVTRにするのではなく、近い将来、「夜明け前」のVTRに変えるだけの発展があることを期待したいです。
◆ ◆ ◆
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*1:この点は、軽部さん的に気の毒に思ったのか、コーナーの最後にスタジオの軽部さんが「生田さんと飯窪さんはちょっと大変な取材もありましたけれども頑張ってくれました」とねぎらう配慮もありました。
*2:ワイプの三宅さんの「何でこのタイミングで着替えたの?」との疑問の声が入りますが、きっと握手する時に見せようと着替えたのですよね。
*3:勝負の年だぞ。ムービー - YouTube http://youtu.be/mnS1BwkW8Ko