Melissa Pandika
for OZY
October 15, 2014
マラリアによる死者が年間60万人を超えるという現実に直面し、科学者と慈善的な支援者たちは蚊という虫けらに狙いを定めた。もし蚊を根絶させることができれば、マラリアも、またデング熱など他の感染症も消え去るだろう。
しかし除虫剤のディートによる単純な駆除ではうまくいかない。生態系に悲惨な結果を及ぼす可能性があるか
らだ。
蚊の方向感覚を失わせる、違う方向へ導く、妨害する、さらには苦痛を与えることも。世界保健機関(WHO)か
らゲイツ財団まで、研究者たちは蚊が致死性のマラリア原虫を感染させる前に蚊を混乱させようと試みている。
これらの新しい発明は、頼りになる昔ながらの蚊帳よりはるかにうまくいくものだ。蚊の神経系を阻害する光の
カーテン。ヒトの代わりにウシの血を吸わせるヒトの匂いのコロン。飛んでいる蚊をレーザー光で撃墜するフェ
ンスまである。そしてもちろん、暗闇で光る寄生虫・・・
しかし除虫剤のディートによる単純な駆除ではうまくいかない。生態系に悲惨な結果を及ぼす可能性があるか
らだ。
蚊の方向感覚を失わせる、違う方向へ導く、妨害する、さらには苦痛を与えることも。世界保健機関(WHO)か
らゲイツ財団まで、研究者たちは蚊が致死性のマラリア原虫を感染させる前に蚊を混乱させようと試みている。
これらの新しい発明は、頼りになる昔ながらの蚊帳よりはるかにうまくいくものだ。蚊の神経系を阻害する光の
カーテン。ヒトの代わりにウシの血を吸わせるヒトの匂いのコロン。飛んでいる蚊をレーザー光で撃墜するフェ
ンスまである。そしてもちろん、暗闇で光る寄生虫も。
地球規模の蚊との闘いにかかる費用の総額は?分からない。しかしここ何年にもわたって、マラリアを根絶さ
せる試みには何十億ドルという費用がかけられている。もちろん蚊のコントロールは、マラリアの蔓延に対抗す
るため3方面から行われる戦略の一部に過ぎない。マラリアはいまだ、世界で最も厄介で悲惨な健康上の課題のひ
とつだ。2012年のマラリア患者は約2億700万人、死者はおよそ62万7000人、その大部分がアフリカ各国の子ども
たちだ。この吸血昆虫を混乱させる方法だけでは、全ての解決にはならない。そのため科学者たちは、マラリア
の治療薬や予防薬の開発も進めている。複数の企業でワクチン開発に取り組んでおり、これが最終的なマラリア
対抗策となるかもしれない。
現在の最先端技術は、ベッドに吊るす殺虫剤処理した蚊帳(ITN)だ。実際効果があり、米国疾病予防管理セン
ター(CDC)によるとこの蚊帳によって子どもの死亡数(from all causes)を約20%減らすことができたという。
しかし6~12年ごとに殺虫剤を塗布し直す必要があり、ITNの殺虫剤の効果は長くても数年しか持たない。
もっと長持ちするものがある。光のカーテンだ。これはコロンビア大学の物理学教授サボルクス・マーカ
(Szabolcs Marka)氏が開発したもので、蚊の神経系を阻害する波長の光を放射する。このカーテンはドアや窓
に吊るすことができ、複数のカーテンを設置することで蚊をトラップに集めることもできる。マーカ氏と共同研
究者たちは来年、タンザニアでこの光のカーテンを試用することを計画している。
一方ISCAテクノロジーズ(ISCA Technologies)社は、ウシが一時的にヒトの匂いになって蚊をおびき寄せ、私
たちの代わりに刺されるようなウシ用の「コロン」を作っている。またインテレクチュアル・ベンチャーズ
(Intellectual Ventures)社は、羽音によってヒトを刺すメスの蚊だけを検出することができる“フォトニック
フェンス”という赤外線LEDアレイを開発した。このフェンスは、レーザーで不運な蚊を撃ち落として殺す。
科学者たちはより強力な抗マラリア薬の開発も進めている。薬剤試験は時間がかかり骨の折れる作業だ。蚊に
マラリア原虫を含む血液と薬剤を与え、蚊を解剖し、そして原虫の死亡数、生存数を数えるという過程が入る。
これを高速化するため、オランダのトロピック・ヘルス・サイエンス(TropIQ Health Sciences)社の最高経
営責任者コーエン・デチェリン(Koen Dechering)氏はホタルの遺伝子をマラリア原虫に挿入し、蚊の体内で光
るようにした。光子検出器で蚊の中腸中の光の総量を測定すると、取り込まれた薬剤によって原虫が死んだかど
うかが直ちに分かる。
もちろん有効なワクチンがあれば、間違いなくマラリアを制圧することができる。最も進んでいる候補は
RTS,S/AS01というワクチンで、アフリカ7カ国で臨床試験の第3段階にあり、この年末にも最終結果が出る見込み
だ。RTS,Sにはマラリア原虫(Plasmodium falciparum)のタンパク質断片が含まれており、このタンパク質が再
び現れた際に攻撃する抗体を産生させる。ただし、RTS,Sによってできる免疫は部分的だ。完全に感染を防ぐこと
はできず、30%のケースで重症疾患を引き起こすリスクを低減する。またこの予防効果は、3~4年後には弱まっ
てしまう。
今のところ、完全に感染を防ぐ唯一の方法は、マラリア原虫をまるごと含むワクチンを作ることだ。しかしそ
の場合、致死性の原虫を大量生産する過程が入るので安全上の問題が懸念される。そこでポルトガル、分子医学
研究所(Instituto de Medicina Molecular)のミゲル・プルデンシオ(Miguel Prudencio)氏が注目しているの
が齧歯類に感染するマラリア原虫だ。ヒトに感染するマラリア原虫と同じタンパク質を多数共有しているが、ヒ
トに対する病原性は持たない。これにヒトに感染するマラリア原虫特有のタンパク質をまとわせることを考えて
いる。
Photograph by Stephen Morrison / Corbis