いま、アイドルの“恋愛禁止”をどう考える? 評論家が「落としどころ」を探る
リアルサウンド 10月15日(水)7時0分配信
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ミュージカル『AKB49〜恋愛禁止条例〜』 公式HP |
ここ最近、アイドルの“恋愛禁止”をめぐるニュースや騒動が増えている。今年4月には恋愛禁止を契約書の条項にまで記載しているという青山☆聖ハチャメチャハイスクールのメンバー2人がファンと交際したとして脱退、総合プロデューサーがファン2人の実名を公表して裁判に訴える騒動に発展した。10月8日発売の『週刊文春』(文藝春秋)に乃木坂46・松村沙友理の密会写真が掲載され、波紋を呼んたのは記憶に新しい。一方、ゼロ(元AKBN 0)の運営元であるブライダルプロデュース会社カンドウが、“付き合える”アイドル「ハップニングガールズ(仮)」を結成し、恋愛禁止ルールの普及を逆手に取った手法で話題を集めている。
この問題について、アイドルカルチャーに詳しいライター・物語評論家のさやわか氏は、アイドルが“夢を売る存在”としてビジネスモデルを形成しているとして、恋愛禁止のルールにも一定の理解を示す。
「アイドルとはファンに“夢”を売るビジネスモデルであり、そこでは『恋愛禁止』が当然のように成り立っています。“夢を売っている=虚構”とも言えるでしょう。そして、その虚構に入れ込んでいるファンからは、恋愛問題が現実として明るみに出たときに、いたずらに糾弾されてしまう。このようなことは本当はあってはいけないと思っているのですが、同時に“虚構”を商売としてやっている以上は、恋愛沙汰が明るみに出るーーファンの目に触れてしまうような行為は避けるべきであるとの見方もある。もちろん、特定の誰かに恋愛感情を持つことは人間である以上、どんなアイドルだってあると思うし、仕方ないことではありますが」
メンバーの恋愛事情が明るみに出た場合、卒業や脱退といった“グループを抜ける”厳罰処分が望ましいという意見も多いが、さやわか氏は「厳罰にすることで、存続が危ぶまれるグループもある」と話す。
「恋愛をしたら卒業・脱退というケースは今までにいくつもありましたが、厳格にルールを定めればいいかといえばそうではない。実際に厳しく取り締まったグループも存在しますし、そのゲーム性が面白いと捉える運営もいますが、そうすることでグループの存続が危ぶまれることもあるし、結果的に誰も幸福になっていない。厳格にしたお蔭でそのアイドルが売れるかといわれればそうではないですし、炎上商法に近いようなことになってしまっているのが現状です。『私たちは恋愛しません!』という触れ込みは、もはや“法だけ作って取り締まらず”という非常に日本的な考え方として捉えるのが健全な気はしますね」
また、AKB48の登場により、責任の取り方についての世間の認識が変わったと分析し、シーンを持続させるためにはファン同士の支え合いも重要であるという。
「近年では峯岸みなみが坊主頭にしたり、指原莉乃がHKT48に移籍したりと、ここ数年のAKB48が取った処置により、卒業や脱退をしないで何らかの形で“禊”をするという文化が定着しました。世間に対して“事の次第がどうなるか”ということを含めてのエンターテインメントとして成り立ってしまった感もあり、運営は日々落としどころを探っています。なので、アイドル側はある種の虚構を成り立たせていることを大前提にして、スキャンダラスな部分を絶対に見せないことをパフォーマンスの一部として提唱する。そして、ファンがそれを信じてあげることは、信頼関係を成り立たせる上で大事だと思います。それが万が一壊れたときには、その推移を楽しむのが健全なのかもしれません。といっても、『ガチ恋』の人にそうしろというのは難しいですし、近年はその層がビジネスを支えている印象も持っています。なので、箱推し・DD(誰でも大好き)の人がそこまで深刻な事態にならないように、ファン同士の助け合いが重要になるのではないでしょうか。今は女の子同士の人間関係を楽しんでいる層もかなり大きいですし、そうすることでファンコミュニティが上手く回って欲しいですね」
最後に、同誌は週刊誌だけでなく、ファンの誰もがスクープ写真を撮影できる時代になったことで、より運営の手腕が問われるようになったとした。
「2000年代以降のアイドルは、ファンによる情報発信が良くも悪くも重要なものになっていて、それを取り払うことは難しくなってきています。運営側が『アイドルの私生活をファンが暴くことは許されない』という姿勢で臨むことは法律的にも間違っていませんが、ファンを利用しつつ、都合の悪いところは『私生活に干渉するな』と提示すると、ファン側の不満が溜まってくるのは当然です。だからこそ運営には、アイドルの私生活をうまくカモフラージュし、ファンに見せないように工夫する必要があり、一番手腕を問われる部分だと思います」
グループ運営上、避けては通れない問題であり、最も難しいものとされる“恋愛問題”。ファンと運営の双方が納得できる落としどころを探る試みは続きそうだ。
松下博夫
最終更新:10月15日(水)7時0分
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