「味有」
手作り感溢れるバックバーを眺めると
クリステイーズやサザビーズなどヨーロッパを中心に
世界各国オークションで落札したという
一般にはなかなかお目にかかれない
貴重なお酒達が目に飛び込んでくる。
禁酒法時代をかいくぐったバーボンやカナディアン。
1世紀物のカルバドゥス、シングルモルト。
黄金色をしたシャリュトリューズ修道院で作られた
19世紀物のシャリュトリューズ。
そして大正時代に製造された至極のジンである
オールド・イングリッシュ・ドメスティック・ジン1919。
料理コミック「クッキングパパ」主人公の荒岩さんを
どことなく彷彿とさせる若き店主であり、
「法律通り20歳からお酒を飲み始めました。」という
オーナーバーテンダー井口さんは私にこう話す。
「味のあるお酒を提供していきたい。」
昔は良かった・・・とは、良くある話だが
例えば革製品。
ヴィ○ンや、エ○メスなど
高級ブランドバッグを持ち歩く姿を
このお店のある銀座界隈では
特によく見かけるが、
現在これらの商品は工業化の波には勝てず、
部分的に工場にて生産される。
しかし、元をたどればこれらも
昔は職人の手で一つ一つ手縫いで丹念に作られ
その品質は何年使えどもシッカリとした傑作品であり
同メーカーの製品を比べても前述の現在の製品とは
比べものにならない程 完成度に差が生じている。
お酒にしても同様であり
現在日本で飲む洋酒のほとんどがその酒造行程の
大部分が機械による生産であり
原料に関してもコストダウンのために
色々なものがその行程で加えられてしまい
そのお酒が本来持ち合わせいた純な味わいや香りを
失いつつあると氏は言う。
その酒造方法によるお酒はある意味では
本来のそのお酒自体の味わいが
既に無いのかもしれない。
井口さんが追求しようとする「味のあるお酒」の意味とは
誤魔化しの利かない「本物」 ということを指している。
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