おじさんのうちの「ボンボンどけい」のなかには、こどもがふたありいるんですよ。=中略=ひとりは、「チック」、ひとりは「タック」。童話「チックタック」は小学生の教科書に載ったこともあるので、ご存じの方も多いだろう▼作者は本県出身の児童文学者、千葉省三(1892~1975年)。宇都宮市篠井町に生まれ、鹿沼市楡木町で育った。旧制宇都宮中学を卒業し小学校の代用教員になるが、22歳の時に上京、出版界に身を置く▼児童文学雑誌の編集者として西条八十や金子みすゞらに活躍の場を与え、自らも少年時代の思い出や体験を基にした作品を発表した。「虎ちゃんの日記」「鷹巣とり」などの代表作は楡木が舞台になっている▼虎ちゃんの日記は、療養のため村にやって来た東京の少年と虎ちゃんを中心にした村の少年たちの一夏の物語である。子どもたちの心の動き、葛藤がみずみずしく描かれている▼1925年の作品だが、今の時代でも色あせていない。「児童文学に最初にリアリズムを持ち込んだ」と評価されるのもうなずける。大人が読むと少年時代に引き戻されるだろう▼地元、南押原地区の市民が省三作品を生かしたまちづくりに取り組んでいる。来秋、記念館が移転するのに合わせ、省三を紹介する漫画の制作も進む。きょう13日は省三の命日。