噴火警戒:最低の「レベル1」実は「安全」ではない

毎日新聞 2014年10月15日 10時46分(最終更新 10月15日 13時55分)

雪で白くなった御嶽山山頂付近で、捜索に向かう自衛隊員たち(左奥)と、自衛隊のヘリコプター=御嶽山山頂付近で2014年10月15日午前9時47分、本社ヘリから小関勉撮影
雪で白くなった御嶽山山頂付近で、捜索に向かう自衛隊員たち(左奥)と、自衛隊のヘリコプター=御嶽山山頂付近で2014年10月15日午前9時47分、本社ヘリから小関勉撮影
噴火警戒レベル
噴火警戒レベル

 御嶽山(おんたけさん)の噴火を受け、「噴火警戒レベル1」の在り方が問題となっている。「レベル1=噴火の恐れがなく安全」と誤解されるケースがあり、専門家からは「静穏な状態のレベル0を新たに設けるべきだ」との声が上がっている。【飯田和樹】

 御嶽山の山頂付近で噴火に遭い、五の池小屋に避難した後、岐阜県側の小坂口に下山した千葉県松戸市の女性(69)は、登山前に火山情報を確認したという。「私がリーダーだったので、いろいろなホームページを見て情報を集めた。御嶽山はレベル1だった。噴火するとはまったく思わなかった」と話す。

 噴火警戒レベルは2007年12月、「火山活動度レベル」に代わって火山の活動状況を伝える方法として導入され、1〜5に分類されている。活動度レベルは、火山がどれほど活発かという情報だけで、地元住民や登山者が具体的にどのような対策を取ればよいかには触れていなかった。これを補うため、噴火警戒レベルでは、周辺自治体と協議しレベルごとの防災対応を明確にした。

 レベル1は「平常」と位置付けられているが、活動の度合いに幅がある。09年4月から活動がやや活発になり、今年6月にレベル2の「火口周辺規制」に引き上げられた群馬・長野県境の草津白根山について、気象庁火山課は「レベル2に引き上げる前から、実質的にはレベル1.5のような状況だった」と説明する。

 警戒レベルの導入直後から、新制度を疑問視する声はあった。静岡大防災総合センターの小山真人教授(火山防災学)は情報発信にメリハリがつくようになったことを評価する一方、「言葉の意味が住民感覚とずれている。なぜ噴火の心配の無い状態のゼロから始めないのか」と当時から指摘していた。

 災害時の情報伝達に詳しい同センターの牛山素行教授(災害情報学)は「レベル1であれ、活火山には元々リスクがあるというのだろうが、一般の人に伝わりにくい。1の状態に幅があるなら、静穏な状態をゼロにするのも一つの方法だ。現在、大雨など他の防災気象情報のレベル化を進めており、整合性も取れるかもしれない」と提案した。

 気象庁も「現状のレベル1は幅が広すぎるかもしれない。活動が静穏な火山もあれば、やや活発化した状態の火山もある」と認める。登山者に分かりやすく情報を提供する方法を考える検討会の新設を決めている。

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