ダジャレが言いたくて、論理を考える
—— 今回の取材の前に、川上さんから僕に「cakesの取材で話したいことがある」とメッセージをいただいたんですよね。「企画者とエンジニアはどっちが偉いのか」「ドワンゴにはサウザーが多すぎる」とかそんな内容の断片のメモ書きが届きまして……。
川上量生(以下、川上) あ、サウザーね! そうだ、それが言いたかったんだ。勢いで送ったことって、1週間も経つと忘れちゃいますね。どういう話をしようとしてたんだっけ。
—— 「愛深きゆえに愛を捨てた男」ともあります。いったいなんのことやらと(笑)。
川上 ああ、だんだん思い出してきた! そう、僕はそういう意味では、結論ありきで論理を組み立てる文系的な部分もあるんですよね。というのも、僕がいろいろなサービスをつくる原動力って、そこなんです。
—— 「そこ」とは?
川上 なにかおもしろいことを思いついたとき、それを世の中の人に聞いてもらうために、あとから理屈を組み立ててるんです(笑)。しかも、その言いたいことって、けっこうダジャレとかだったりする。
—— そんな(笑)。
川上 でも、ダジャレだけ言っても聞いてもらえないから、それを聞いてもらう舞台として論理的な世界を構築するんですよ。そのなかでちょっとしゃれた感じで言うっていうのが、僕が目指してる表現です。「ニコニコ町会議」※ なんかその典型ですね。これはもともと「ニコニコ超会議」があって、「超会議(ちょうかいぎ)」のシャレで「町会議(ちょうかいぎ・まちかいぎ)」って思いついて、じゃあ「町会議」やろうよ、と。
※ 2012年から始まったniconicoをちょっとだけ再現する、ニコニコ動画の公式イベント。各地の夏祭りに併催されるかたちで、ユーザーの応募があった全国各地で開催される
—— えっ、そうだったんですか。
川上 「ニコファーレ」もそうですね。ニコファーレって名前、めちゃくちゃおもしろいじゃないですか(笑)。
—— はい。ひどいですよね(笑)。
川上 もう、「ベルファーレの跡地にニコファーレができた」って言いたくて仕方なかったんです。そう言って世の中が納得するものってなんだろうと考えた結果、あのイベント施設ができました。ああ、ほんとに僕の原動力って文系的だな(笑)。
—— 理系と文系の、両方の面をもってるんですね。
川上 だれでも、みんな両方ありますよね。どっちをどういう場面で出すか、というのが違うだけなんじゃないですか。いやー、こういうときの理屈は完全な手段ですね(笑)。だからこんな会社になるんですよ(笑)。僕はいつも、結論に向かってどういうふうにすると理屈が成立するか、という逆算で考えてるんです。
—— 本当にそうなんですか?
川上 そうですよ。オフィスを歌舞伎座タワーに移転したときも、「明治座から歌舞伎座へ」って言いたくて、それを成立させるロジックってなんだろうと考えたんですよね。それで、「大衆芸能を代表する明治座から、伝統芸能を代表する歌舞伎座に」という文言を考えたり、「IT業界の老舗ドワンゴ」っていうイメージを打ち出そうと演出したりね(笑)。
—— ただ移転するって言うより、納得感は高まってますね(笑)。でもその大本にあるのは……。
川上 すごくくだらないことが多いんですよね。でもそれでいいんだと思います。前回言ったように、論理というのは量が多くなればなるほど、現実を正確にエミュレーションできるんです。そして、その過程でなんとか論理を成立させようとするために、いろいろなことを無理やり考えますよね。ただの詭弁になっちゃいけないから、ビジネス的にも成立させようとする。
—— なるほど。
川上 おそらく、多くの人は少ない理屈でビジネスをしようとするから、競争相手がたくさんあらわれて、うまくいかないんじゃないでしょうか。普通は正しい前提の上で、少ない理屈で儲けの仕組みを考えようとしますよね。でも僕は、間違っている前提に立っているので、たくさんの理屈が必要になるんですよ。天動説と同じで矛盾だらけだから、いっぱい理屈を考えないと成立しない(笑)。
—— それって平たく言うと、新しいことをやるときは、たくさん考えないといけない、ってことですよね。
川上 当たり前のようですが、それが大事だと思いますよ。あと、この方法って、何しろ前提が間違っているから、競争相手が少ないんです。間違ってる理屈って多様性があるんですよね。でも、正しい前提の上で論理を組み立てようとすると、同じところにみんなたどり着くから競争が激しくなる。真理ってひとつだけのことが多いですからね。だから、僕はビジネス的に有効な方法だと思うな。
—— なんか、この話全体がこじつけなのかどうかわからなく……(笑)。
川上 あ、そうそう、こじつけがいかに有効かって話です(笑)。こじつけでもいいんですよ。
—— でも最近よく言われている、コンテクストデザインとか、ストーリーで経営戦略を立てるとか、それってまさにこじつけかもしれませんね。
川上 ストーリーってこじつけですよ。こじつけが力を持つ。これは正しいと思うな。
ドワンゴには「サウザー」が多すぎる
川上 じゃあ、そろそろ企画とエンジニアの話をしましょうか。だんだん思い出してきました。
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