Oculus Rift(以下Oculusと表記)がウチに届いてからというもの、ひたすらOculusの布教活動と対応コンテンツ制作に明け暮れております。
で、
マジでTLのOculusコンテンツをデモしてる先駆者の人、ノウハウとか記録に残しておいて頂けると助かります。一発勝負系の展示だとギャー!ってなりそうで怖いのですorz
— izm@ 10/26DCExpo (@izm) 2014, 10月 13
というつぶやきを見かけ、ちょうど土日でガッツリとOculusをデモをする機会に恵まれたので、自分なりの現状のノウハウをまとめておきます。
今回デモを行ってきたイベント
FRENZ 2014
Web、ニコニコ界隈の新鋭気鋭の映像クリエイターとその作品を見るフォロワーが集まり、クリエイターの新作映像とトークと酒とレッドブルを2日間ほぼぶっ通しで楽しむというとてもいい意味で頭のネジが数本飛んでるイベントです(意訳)
1日目のイベントの様子を踏まえて夜通し編集して2日目の作品に反映させるとか
イベントスタッフの能力値マジパネェ。
で、そんな新鋭気鋭の映像クリエイターにもOculusの魅力に触れてもらって、そこからあわよくばOculus対応の映像作品を作ってもらえばもっと楽しいことが起こる!という意図で、デモの機会をいただいてきましたw
なお、既存のOculusで見れる映像作品については↓の拙作エントリをどうぞ。
デモ環境について注意すること
環境と手順を確認しておく
- PCを置くスペースはどれ位の大きさか
- 電源は確保できるか
- 大型のコントローラや体全体での体験も込みのデモの場合、体験者の周りに空間が確保できるか
これらの情報を事前に把握しておきましょう。
なお、開発は自宅のデスクトップPC、デモ展示は別のノートPCという体制になる場合は、必ずデモで使うノートPCでも対象コンテンツが正常に動くかのテストをしておくことが特に重要です。
時間があるようであれば自分の部屋でデモ時と同じ広さと環境を用意して、実際にコードの接続手順、ソフトの起動手順を試しておくことをお勧めします。
特定の広さで的確な設営をするというのは同人イベントのサークルスペースに近いものがあるので、自分の周りに経験者がいたら聞いてみるといいかもしれないですね。
コードを的確な長さに束ねておく(重要)
- ノートPCの電源アダプタ(コード:短)
- USBハブの電源アダプタ(コード:短)
- Oculus本体の電源アダプタ(コード:長)
- Oculusの本体ケーブル(コード:長)
- Oculusの赤外線センサー(コード:短)
これらのケーブルをデモ環境に応じて適切な長さに束ねておきます。
カッコ内は今回のデモ時の長さです。
今回のデモはスクリーンがある壇上で1回約10分という制約だったのですが、1回目はこのコードが絡まって環境構築にテンパってしまい、その結果、Oculus本体の電源アダプタの接続をし忘れ、さらに起動するexeファイルを間違えるなど色々やらかしてしまい、結果的に時間が足りなくなりDK2のトランプタワーだけしかデモができませんでした。
そのため同じ失敗をしないよう、2回目ではすべてのケーブルを適切な長さに束ね、
デモ用のPCフォルダ内から不要なファイルをいったんすべて避けておき、さらに1~3の3つのコードをあらかじめ私物の電源タップに差し込んでおき、会場のオペレータさんには 「この根っこを会場のコンセントに差すだけでOKです」という状態を作りました。
写真:整理されたケーブルの様子
その結果、実際のデモの時間も大幅に確保成功、トランプタワーに加えて、Mikulus上のお美しいTda式ミクさんも無事に登壇させることができました。
(@GOROmanさん、利用許可ありがとうございました!)
機材トラブルは覚悟しておく
どれだけ準備しても、長時間でのデモではPC自体の熱暴走やPCとOculusとUSBへの電源の給電不足などにより、OculusやPC画面側にコンテンツが表示されなくなる事は良くあります。
この辺、デモにノートPCを選ぶ場合はどうしたって限界があると思うので、環境には「落ちない堅牢性」よりも「何度落ちてもすぐ再開できる冗長性」を意識した方が精神衛生上いいと思います。
ソフト側の環境構築手順のバッチを独自に組んでおくとか、体験n人につき1回、PCの再起動を挟むとか、オペレータ自体の操作のテキパキ感を向上させるとか、そーいう方面ですね。(お金がある人はまったく同じ環境のノートとoculusをもう1セット買ってコールドスタンバイ機にしよう!)
おすすめ体験スペース
なお、10名前後のOFF会等で体験してもらうという場合は、簡単に電源が用意でき、飲食も可能で、その場で動いたり寝そべったりも可能なプライベートな空間という点で、カラオケルームを借りてしまうのが一番手っ取り早いです。
特にカラオケパセラなどはカラオケ外での利用も推奨しているらしく、部屋正面にお客様用のコンセントと、さらにLANケーブルのコネクタまでありますw
(私自身、@kingyo_souさん主催のoculus体験会をパセラで体験したクチです)
あと、一人暮らしで体験者が友人、知人の場合はフツーに家に招待した方がもっとお手軽かと。
Oculusの画面をどうやって外部出力するか
Oculusの画面をPCに映す
DK2に標準搭載の机+トランプタワーや、UE4製のジェットコースターなどはDirect HMD Accessモードに対応していて、何もしなくてもPC側の画面にコンテンツが出せるので、それをそのまま見せればOKです。
ROLLER COASTERS
http://www.vrone.pl/?page_id=255
Extend Desktop to the HMDモードのコンテンツを見せる場合、Oculus側に映ってるコンテンツを「Open Broadcaster Software」を介してPCモニタ側にOculus側の画面をミラーリングする方法があります。詳しくは以下の紹介記事を見てください。
Oculus Rift DK2とディスプレイをクローンする方法
http://d.hatena.ne.jp/tarumomi/20140908
なお、Oculusを他のユーザに体験させながらミラーリング表示を使う場合は
Open Broadcaster Software側のキャプチャのFPSやキャプチャ時の画質を下げるなどして、可能な限りOculus側のFPSを70前後にキープするようにしましょう。
※PC側でミラーリングするんじゃなくて、HDMIの分配ケーブルをかまして
表示すればFPSを維持できそうですが、Oculus側のモニタが90度回転してるせいなのか、正常に分配できるモニタには今のところ出会ったことがありません。ここのノウハウを持っている方はぜひ教えてくださいw
Oculusの画面を外部出力に映す
今回の壇上のデモ時はVGA接続のプロジェクタ+スクリーンにOculusのトラッキングの様子を映しました。本来であればHDMI接続で映したい所なんですが、
HDMI出力ポートはOculus本体に占有されてしまっていたので、やむを得ずもう一方のVGA出力を使った次第です。(HDMI出力が2ポートもある化物ノートなんて高くて買えねぇよ)。
なお、壇上のデモ時はOculus側に画面を映す必要が無かったので、Mikulus紹介時はトラッキングのFPSを稼ぐためにも「MikulusDK2_DirectToRift.exe」ではなく「MikulusDK2.exe」を起動して、何も映ってないOculusを手で動かして説明をしました。
Oculusを被らせないでOculusの魅力を伝えるのは難しい
ソニーの3D対応HMD「ProjectMorpheus」のに関わっているエライ人ですら
「百見は一体験に如かず」と言っており、Oculusをカブってない人に魅力を伝えるのは非常に難しいです。
今回の壇上デモではトランプタワーとMikulusの2本立ててトラッキング性能を見せることができたのでハードの特性を伝えることはできたと思いますが、見てる人は椅子に座ってスクリーンを見ているUXを得て、なおかつ「スクリーンに映る映像を見る」という心構えでイベントに来てるので、Oculusの真のポテンシャルとなる「360度すべてが映像になる」という部分はその場では伝わりきれなかったかなと思います。
んで、2回の登壇デモを終えた後に
『自分がピンポン球の中に入って、その中央に浮いている、と想像してください。
あたり一面、真っ白に空間が広がっているかと思います。
その真っ白いピンポン球の内側すべてに、みなさんが絵を、映像を描けるんです』
という例えを思いついて、ややクサいけどコレ使いたかったなーと後悔してますw
とは言え今回は幸いにも、イベント終了直後の参加者慰労会場みたいな場所でOculus体験ブース的なものを3~4時間ほど広げることができたので、そちらではしっかりOculus本体をかぶってもらうことに成功しました。
以下は体験付きのデモ時のレポートになります。
体験してもらったコンテンツ
体験時間は一人あたり数分程度なので、体験してもらう作品は限られます。今回イベント終了後の体験希望の方にやっていただいたコンテンツは主に以下3つです。
Mikulus
https://bowlroll.net/file/44105
イベント会場での壇上デモで紹介してますし、
コントローラ不要で楽しめるのでここは鉄板ですね。
Minecraft 非公式Oculus対応パッチ
Guide: Play Minecraft on Oculus Rift DK2 Using the Minecrift Mod
「非公式パッチですけどマイクラもできますよ」
って言ったら一気に集まってきましたw やっぱりFPS+オープンワールド系のゲームにHMDってのはいちばん想像しやすいのかなと。オフラインの新規ワールドを歩き回ってもらっていたら、気が付いたらクリエイティブモードで空飛んでTNT爆弾で空けた大穴にダイブするという遊びに変化してましたw 結果的にジェットコースター的なタマヒュン体験もやってもらえた感じですね。
なおこの際、マイクラ内の断崖絶壁上で怖がっている体験者に対して体験者の友人が「わっ!」っと背中を軽くつつく行為を行ったため、その方には『体験者の平衡感覚が狂ってパニくる可能性があるから絶対に止めてください』と強く注意しました。
とは言え注意してOKという話ではなく、本当に事故が起こってからでは遅いので、
恐怖体験を伴うコンテンツの場合はオペレータの段階でそーいう行為をさせないように事前に説明するか、体験者から他の人を離すといった環境を用意しないといけないなと感じました。
ステレオ劇場 かえりみち
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Brush/4033/st-gkj-k/index.html
ヘッドトラッキングには非対応ですが、実際にOculusで3Dで見れる映像作品として紹介。特にこの作品は初公開時が10年以上も前ということもあり、原理さえ理解していればOculus向けの映像を作るのに制作ツールは問わないという説明をするためにとても効果的でした。
多くの人に繰り返し体験してもらう時のオペレーション諸注意
衛生対策(重要)
Oculus Rift 用 フェイスペーパーを買ってたので早速試してみました。
Oculus Rift 用 フェイスペーパー製品版
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00O0R1MXI
本来は2~3名に1回で取り替えるローテーションが望ましいと思いますが、他の人と話しながら体験者の様子を見て適切なタイミングで取り替える・・という余裕は正直言って無かったですw
最終的な体験人数はたぶん3~40名で、ペーパー消費枚数は10枚。
交換の頻度は少なかったですが、乾ききっていないOculus直のフェイスカバーを使うよりはずっといいと思います。
また、他の案としては現在こんなのを作ってます。
oculusフェイスカバー汗のこり対策、これを2〜3セット作って体験終わるたびに剥がして拭いてUSB扇風機の風に晒すローテーションを組めばいいかな。100円ショップ最強伝説! pic.twitter.com/7cGrc12lKa
— まっつん◆SW1/SWF8io (@n_mattun) 2014, 9月 27
安定したオペレーションができる読みができたら次回のデモの機会ではこちらも試してみようと思います。
メガネ対策
メガネを付けている体験者には
- 先にメガネをOculusのレンズ側に装着して、Oculusごとメガネを目に当ててもらう
- その状態から体験者にOculus+メガネを押さえてもらい、自分が後ろに回って、ゴムバンドを頭に付けてあげる
というオペレーションを繰り返しました。
なおその際に1名、Oculusのレンズ側に無理矢理メガネを入れようとしたところ、メガネのレンズが片方外れるというトラブルに遭遇したので、それ以降はメガネ装着者には「無理に入れようとすると壊れるかもしれないんで裸眼でもイケる人はできればそっちでお願いします」という説明を必ず付け加えるようにしました。
この件の根本的な解決方法はハード側に頼らざるを得ないので、CV1ではメガネごとかぶれる大きさになるか、GearVRに搭載されていたピント調節ダイヤルを用意するなりして欲しい所ですねぇ。
今回のデモを一通り終えた感想など
- 体験デモ展示のオペレータ1名体制は、正直かなりキツいw
- 大学の研究室(だったかな?)でチームHashilusのスカイバンジーに近い発想で
Oculusコンテンツを作っている方がいて、その動画を見せてもらえたのが個人的にはとても収穫でした。もの見て正直「やられた!」って思いましたよホント。この記事見てたら、実際に体験できる場でまたお会いしましょう! - FRENZ出展者の皆さんと、会場にいた皆さんに改めて。『自分がピンポン球の中に入って、その中央に浮いている、と想像してください。あたり一面、真っ白に空間が広がっているかと思います。その真っ白いピンポン球の内側すべてに、みなさんが絵を、映像を描けるんです。こんな広大なキャンバスを見逃す手は無いと思いますよ!』
- 最後に、FRENZ会場の壇上でデモの機会をくれた主催のas@前田地生さん、
Mikulusの利用許可をいただいた@GOROmanさん、およびTda式ミクモデル制作者のTdaさんに、この場を借りてあらためてお礼申し上げます、ありがとうございました!