16話 芽森柚香とうたた寝
――――はぁ……はぁ……
二人の吐息が、お互いの耳朶を震わしていた。
俺と篠宮さんは行為を終えると、しばらく身を寄せ合うようにして呆然としていた。
日が暮れはじめ、いつのまにか掻いていた汗が冷えると体と共に頭の中も冷めた冷静さを取り戻していく。
(……やっちまったな)
彼女の中に出してしまった。それ自体は、俺に達成感と征服感混じりの高揚を与えてくれるからいい。だが、同時に懸念すべき問題がひとつでき上がってしまったのだ。
それはイシュタルから授かった三つ目の異能。接吻によって子を成す可能性を無くす不妊の術についてだ。
体を交えたとはいえ、この陸上部次期エースとはいまだ、ただの友人同士――いや、俺だけでなく彼女も情欲をもって接してきているならもう「ただの」とは言えないかも知れない。
けれど、恋人である如月と違い、容易に唇を交わすことが難しい間柄なのは確かである。
肌よりも唇を重ねる方が難しいなんて奇妙な話だが、そのあたりの面倒くささはいまさらだ。
(今日はすでに改竄をしちまったし、いま不妊の術を掛けるのは難しいか……いや、するだけなら簡単なんだ)
枝垂れかかるように体を預けていた篠宮さんの肩を掴み、ゆっくりと押し起こした。
「ぁ……」
薄い布を隔てた温もりが遠ざかるのを感じ、彼女は名残惜しそうな声を漏らす。
その顔はまだ朱く染まっており、濡れた瞳もとろんとしていて、どこか夢現といった様子だ。
そこには普段の快活な姿の面影はなく、例え強引にキスを迫っても今の彼女が抵抗できるようには見えなかった。
(術を掛けた後がなぁ……篠宮さんも、いまはいっぱいっぱいなようだし――)
軽く両肩を叩いて、篠宮さんの意識をはっきりさせる。
「大丈夫、篠宮さん? 立てる?」
「……うん。まだ、ちょっと膣内が熱くてズキズキするけど……うん、立てる」
篠宮さんは俺の肩に手をついて、ベンチから下りようとして――
「あ……」
足に力が入らず、上半身が振り子のように後ろへと傾いていく。
「おっと!」
なんとか手を伸ばし、彼女の二の腕を掴んで転倒を防いだ。
下が砂利やコンクリではなく柔らかい地面とはいえ、頭を石にでもぶつけたら危ない所だった。
「あ、ありがと……」
「まだふらつくんなら、もう少し座ってなよ。どうせ、ここに警備員の見回りは来ないんだし、無理することないって」
「そうだけど……ひゃっ!」
引っ張る手に促され、俺の隣りに座ろうとした篠宮さんがビクッと身を震わして再び立ち上がる。
どうやら下に何もはいてないことを忘れていたらしく、人肌よりも冷えていたベンチの感触に驚いたようだ。
その様子を少し微笑ましい気持ちで見守っていると、
「……総太くん。着替えるから、ちょっとあっち向いてて」
体操着の裾を引っ張って秘部を隠しながら、篠宮さんは顔を赤くして恥ずかしそうに言った。
■
帰り道、俺と彼女の会話はどこかぎこちなかった。一応、彼女の体も心配しておいたが、「ちょっと痛かったけど平気」と軽く返された。
嫌悪では無さそうだが、どこか気まずさを覚える空気を漂わせたまま、帰路が分かれてしまった。
「それじゃあ、俺の家はこっちだから」
「うん。また明日、総太くん」
いまの篠宮さんの心情を、俺は想像できなかった。
改竄術で確かめることも考えたが、彼女が俺を呼び出した理由まで知れてしまうとバツが悪い。
今日の所は彼女の記憶は彼女だけのものにしておくことにして、俺は彼女に背を向ける。
「……あの、総太くん!」
数歩ほど歩いたところで、篠宮さんの決心したような声が俺の足を止めた。
振り返ると、篠宮さんは夕日を背負い顔や表情が読み取りにくい状態だった。
「さっき校舎裏に来てもらったのはその……お願いがあったの」
お願い? なんだろう。
こんな別れる直前まで言い出せなかったのを考えると、よほど大事なことだったのだろうか。
顔をハッキリ直視できないため、そのお願いの重要度が予測できない。
「えっと……その、わたしと……」
顔は見えずとも、いまの彼女が校舎裏に来てすぐの時と同じような顔をしていることは予想出来た。
ここは、あの時のように彼女に助け舟を出した方がいいのだろうか。
「あの、篠宮さ……」
「わたしと――――!!」
そんな俺の言葉を遮る形で、彼女はその『お願い』を言った。
■
とりあえず、状況を整理しようか。
まずは柚ねえ。
改竄による情欲を溜めさせる計画進行中。以上。
次に高原さん。
今朝の登校途中に出会った際、彼女はどことなく元気がなかった。
俺は改竄術を応用して、悩みがあることを突き止め、それが高原さんの妹に関することだと知った。
その解決のため、俺は高原さんに「芽森総太は妹に何度もあったことがある」という改竄を施し、明日高原宅へ訪れるよう約束した。
そして篠宮さん。
不妊の術の猶予がどれくらいかは分からないが、改竄術があるのだから明日以降であれば簡単に問題は解決できる。
それよりも、重要視すべきなのは別れ際に言われたあっちのほうだろう。
(……素直に喜びたいんだけどなぁ)
そうはさせてくれない存在――如月明衣。
恋人というシチュエーションで情欲発散をするために付き合っている、偽物の恋人。
(如月に知られたら、なにを言われるか……)
疑いを向けられるだけで疲れる困った恋人(偽)のことを考えながら、俺は自宅の敷地内へと足を踏み入れた。
――――その瞬間だった。
「だ~れだっ」
突然囁かれた言葉と共に視界が閉ざされる。
完全に気を抜いていた俺は、咄嗟に反応することができなかった。
しばし身を強張らせ、そして平常心を取り戻すと、こんなことをする人間が一人しかいないことに思い至る。
「……如月。塀の内側にいるのは普通に軽犯罪だからやめとけ」
「あら、動揺してもメイって呼んでくれないのね」
目を覆っていた手が顎や首筋、胸板を這い、そのまま二の腕を拘束するように後ろから抱きしめられる。
(噂をすれば、か)
どうやら今日もまた、如月明衣は我が家の前(というか内)で待ち伏せしていたようだ。
すりすりと頬ずりをする柔らかな感触がうなじの下あたりに広がる。
押し付けられる胸や頬の温もりは心地いいが、ここは公道のすぐ近くであり自宅の真ん前である。ご近所さんに目撃されて噂にでもなったらたまらないので、俺はその細い手首を掴んでそっと拘束を解いた。
振り返り、少しだけ俺より低い位置にある彼女の顔と対面する。
「それでどうした? 用事があるならわざわざ家で待ちかまえなくても、メールでも送ってくれれば……」
「もう、無粋なことは言わないでよ。ふふ、私はサプライズが好みなのよ。こういった遊び心があったほうが、恋愛は楽しいものでしょう?」
いや、お前いままで恋人できたことないし、俺とだって付き合い出してまだ数日だろう。
――と言いたくなる気持ちを飲み込み、「そうだな」と納得したふりをしておく。
この『恋に恋する女の子』は自分の憧れや願望をもとに動くので、基本的に相手の都合を考えてくれないらしい。それが昼の弁当など上手く作用することもあれば、ストーキング紛いの行動を取らせたりもするわけだ。
(まずいな。これははっきりと言っておかないと後々厄介なことになるかもしれん)
「なぁ如月。サプライズもいいんだけど、こういうのは――」
「さぁ、中に入りましょうか」
馬耳東風とばかりに俺の言葉を聞き流し、今度は逆にこちらの手首を掴んでそのまま玄関の方へと強引に如月に引っ張られる。
いや、ちょっと待て。どういう展開なんだ、これ。
足を踏ん張り、彼女を引き留める。
「中に入るって、急にどうし――」
「いまって、家族もおられるのかしら?」
またもこっちの話を無視した疑問を投げつけられる。
まるでこちらの話を聞こうとしない態度に、いつにもまして傍若無人ぶりが激しいなと感じながらも、素直に「姉がいると思うが」と返答する。
「ふーん。ご両親がいたほうが好都合だったのだけれど、まぁいいわ。それじゃあ、中に――」
「メイ」
再び歩き出しそうになる彼女の手をまたも引き留める。今度は声色に、さきほどよりも真剣みを滲ませて。
「なにかあったのか?」
「……」
如月が強引なのはいつものことだと思っていたが、やはり今日のはどこか違和感がある。
恋人とのデートプランを練るために、わざわざ下見をするほど几帳面な奴だ。そんな奴が、相手の了承も得ずに無理矢理自宅に上がるなんて雑で横暴なやり方をとるだろうか。
出会ってまだほんの数日とは言え、いや、数日の俺でさえも感じ取れるほど、今の彼女はなにか「焦っている」様子だった。
「別に家に上げたくないってわけじゃない。ただ、家に呼ぶならもっと、こう、ちゃんともてなす用意もしたいしさ」
「私は気にしないわよ? 例え総たんの部屋がどれだけ散らかっていようが。むしろ私が掃除してあげるわよ」
「いや、俺は……そう、初めて恋人を家にあげるっていうのは、重要な事だと思うんだ。メイを初めて家に呼ぶ記念日を、こんな唐突でなし崩し的な形で迎えたくない」
「……そうなの?」
ようやく彼女の猪突猛進な勢いが、鳴りを潜める。
やはり『初めての』だの『記念日』というワードが、彼女のロマンチストな部分に効いたのだろうか。
自分の言葉に若干、歯が浮くような感覚を覚えながら、俺は言葉を続ける。
「ああ、だから、俺の家にはまた今度という事で――」
「いつ?」
「え? えっと……」
まるで子供が親に遊園地へ連れてくようせがむ時のような純真な目で、如月は俺を見上げる。
わざとやってるのか、それとも彼女にとってはそれほど喜ばしいことなのか。
「いまちょっと、色々と忙しくてさ。それが一段落したら、必ず呼ぶから」
当然、忙しいというのは高原さんの妹についてのことである。
明日一日で解決すれば最良なのだが、そう上手くいくとは限らない。
悩みの種を知るだけなら心理フィールドを出すだけで一瞬だが、悩みを解消するのには改竄術が必要になるかもしれない。
だが、会ったこともない女子中学生に警戒されぬよう、出会い頭に改竄を行う必要があるのは目に見えている。
なら、一度だけでなく二度三度と会う必要があるかもしれないからだ。
「……むー」
そんな俺の事情を知らぬ如月は、小さく唸りながらご機嫌ななめといった目つきで睨んでくる。
けれど、その視線にはこちらが萎縮するほどの鋭さはなく、「納得はするけど不満には感じてる」程度のものだった。
なんだかんだでこちらの事情も受け止めてくれるところを見るに、ただ自分本位なだけの奴ではないようだ。
「それじゃあ、約束よ。予定があいたら、すぐに私を総たんの家に呼ぶこと。いい?」
「あぁ、分かっ……んむ!?」
如月はひょいと不意打ちのように、唇を重ねてきた。
浅く、けれど舌でこちらの唇を軽くなぞるような扇情的な動きをしてから、如月は顔を離す。
「約束の印よ。忘れないでね」
流石にむこうも気恥ずかしくなったのか、視線を外してそう告げると立ち去ろうと歩き出す。
その足取りはどこか軽く感じられ、いまにスキップでもしだしそうだ。
(しかし、なにをあんなに必死だったんだろ。確かに今日は一緒に下校しようって誘いは断ったが……信用されてないんかね)
実際、如月がこの家の敷地内で待っている時に俺は篠宮さんと会っていたわけだから、なんとも言えない。
(まぁ、ファミレスの件もあるし、疑われても仕方ないか)
別に本物の恋人ではないのだ。
俺はなにも気負うこともなく、ただ「今日も疲れた」と思いつつ、
(しかし、あいつ本当キス好きだな……)
舐められた唇をなぞり、玄関へ向かった。
■
そうして、俺はようやく玄関にたどり着くことができた。
疲労感たっぷりの溜息をつき、緩慢な動きで靴を脱いでいく。
(あっ、しまった。そういや、柚ねえになんも連絡してなかったな)
携帯で時刻を確認すると、いつもならとっくに晩飯を食べ終わってる時間である。
部活無所属の身分である俺がこんなに遅くなることも珍しく、柚ねえも心配しているかもしれない。
俺は気持ち早足で「ただいま」と、いつも通りに廊下の先にあるダイニングの扉を開けた。
(……?)
けれど、おかしなことにそこに柚ねえの姿はなかった。
玄関に柚ねえの靴はあったし、ダイニングの照明も点いている。
なら十中八九柚ねえはこの部屋に居て、いつも通り「おかえり」の一言と共に体調チェックでもされると思ったのだが。
不信感を覚え、俺は部屋を見渡す。
「柚ねえ?」
ダイニングと繋がってるリビングへと向かうと、カーテンは閉めてあるものの照明は点いていなかった。
そんな薄暗い部屋のソファに、柚ねえの姿を発見する。
どうやら俺を待ってる間に眠ってしまっていたらしい。
下半身は座った状態で、上半身だけソファとクッションに身を預けた状態の柚ねえがそこにいた。
ただ――
「……如月を家に上げなくて正解だったな。本当に」
柚ねえは裸エプロンのまま、ソファに寝てしまっていたのだ。
流石に生の尻をソファに乗せるのは抵抗があったのか(前科はあるが)、下に白いショーツを穿いていたが、どっちにしろ痴女にしか見えない。
俺はダイニングからの照明だけで照らされている薄暗い空間を横切り、柚ねえの顔に近づく。
スー……スー……と安定した寝息を確認し、俺の帰宅でも目覚めぬほど深い眠りに入っているようだ。
(じゃあ、俺と如月の会話を聞かれてたってこともなさそうだな。別にまずい話じゃないが……)
柚ねえが眠っていることを確認すると、俺の視線は顔から下の方へと移動していく。
この裸エプロンを見るのはこれで三度目だが、やはりまだ見慣れぬ感じだった。
改めて考える。なぜ、俺は肉親である柚ねえに俺は情欲を抑えられないのだろうか。
いま改竄を進めてる女性の中で……いや、俺が生きてきた中で一番長く傍にいた人物だから?
幼少の頃より俺の世話を焼き、いつも俺の心配をしてくれた姉。
いつも出張ばかりでろくに家に帰らぬ両親を持つ俺にとって、家族といえば愛猫だったキリエとこの柚ねえのことである。
(だから、柚ねえだけは穢しちゃいけない。触れてはならぬ聖域…………だったんだ)
実った果実のように並ぶ膨らみを、俺はエプロンの上から撫で擦るように触れていく。
少々強く触れると、厚手の生地の奥から重く弾力のある感触が返ってくる。
(昔から、柚ねえは魅力的過ぎた。性格や仕草はもちろんだが……)
俺の手はエプロンの端まで行くと、そのまま内側へと潜り込んでいく。
全体をわし掴みするようグニグニと一通り揉むと、埋没した乳頭付近へと愛撫を集中させる。
ちょっとずつ頭を出してくるその突起の感覚が、指先に伝わってくる。
柚ねえの胸は中学生に上がるときには、もう人並み以上に膨らんでいた記憶がある。俺はまだ幼かったけど、それはハッキリと覚えていた。
エプロンを下にずらし、完全に胸を露出すると、両手で全体的に胸を揉みあげる。
指の間から零れそうなほど、柚ねえの胸に俺の手は深く沈んでいく。
そして徐々に、手のひらの中心にグミのような感触を覚え始め、柚ねえの吐息も熱くなるのに気付く。
「……ぁ……ハァ……んんんっ」
だが、ただ揉んでいるだけでは起きている時と変わらない。
心の中で、別の欲求が湧き上がってきた。
(味とかするんだろうか)
俺はなにひとつ戸惑うことなく、その硬くなった突起を口に含んだ。
唇に、乳房の弾力と柔らかさが生々しく伝わってくる。
そして、舌先で軽く膨らみを舐めあげると、汗のせいか少ししょっぱい味がした。
それと同時に、柚ねえが大きく声をあげる。
俺は驚きのあまり、つい口を離した。
(そういえば、柚ねえはここが弱いんだった……)
「?……あ、あれ? 総くん? 帰ってたの?」
寝惚け眼をこすり、柚ねえは段々と今の状況を理解し始めてた。
寝転がった体勢のまま、起き上がろうともせず俺に疑問の視線を投げかけてくる。
「えと……これって、なにしてるの?」
柚ねえは純粋に戸惑ってるようだ。
まぁ、いまもなお柚ねえの胸を掴んでる俺の手を見ればそう思っても仕方ない。
その当然の疑問に、俺は焦ることなくあっさりと答える。
「なにって、そりゃマッサージだよ」
「マッサージって……ひゃっ!」
親指の腹を使い、再び乳首を弄び始めると裸エプロンの体が身を捩じらせる。
「遅くなったのに、連絡一つも送らなかったのは悪いと思ったからさ。せめてものお詫びにと思って」
「そんなの……ん、お姉ちゃんが寝てる時に……勝手に……しちゃ、ダメ……だよ……んあっ……」
性感を見る目によって、すでに柚ねえが興奮状態になっている事は分かっている。
放課後での高原さんの時のように、俺は改竄をしなくても強引にことを進められるのではないかと思っていた。
すると、酷使し続けて疲労困憊であるはずの俺のモノも固くなり始めていた。
(もう少し、踏み込んでみるか)
俺は並んで座っていた柚ねえの膝の片方を持って、片足を大きく開かせる。
「えっ! ちょ、ちょっと、総くん!? 一体なにを……」
「ついでに『仕事』のほうもしてもらおうと思って」
片方の手で閉じようとする足を押さえながら、もう片方の手で俺は自分のファスナーに手をかけていた。
流石に完全とまでいかないが、そこそこの硬度をもった男性器がその隙間から顔を出した。
それから、おもむろに腰と腰を近づかせていき、
「ダメ、総くん……い、挿入れちゃ……っ!」
「挿入れないよ」
近づいた性器と性器は、ショーツ一枚を隔てて重なり合った。
それから、俺はソファと柚ねえの足に手をついて、体重を調整しながらモノに圧力をかけながら腰を動かす。
射精感をもたらすまでとはいかずとも、ショーツに覆われた陰唇の弾力は俺の情欲をくすぐった。
「そんな……ぁっ……押し付けたら、わた……わたし……いっ!」
声を震えさせてこちらに訴えかけてくる柚ねえに対し、俺はどこか余裕をもってこの快感を受け止めていた。
慣れた波乗りのように、俺は心の奥から湧き上がってくる快感の波を上手く捌きつつも行為を楽しんでいたのだ。
(これはもう、完全に中毒なんかな……イシュタルと繋がった影響もあるだろうけど)
実の姉と性器を擦り合わせてるという状況に興奮するも、淡々とそんなことを考える俺もそこにはいた。
飽きではないだろうけど、慣れが生じてきてるのかもしれない。
(でも、今はいつもと違ってちょっと強引に柚ねえとしてるからか……悪くない)
自分が達することはないと分かっていると、ずいぶんと気楽に腰を動かせるものである。
そろそろスパートを掛けはじめ、柚ねえの興奮も頂点へと押し上げられていく。
そして、そのギリギリを見計らい、崖っぷちで急ブレーキをかけるイメージで、ぐっと一度腰を大きく突き出した。
「ふっ……ん、ンンんん!…………え?……あれ?」
「あぁー、ごめん、柚ねえ。やっぱり、腹減ったから晩ご飯食べよっか」
「……」
大きく突き出し、グリグリと擦りつけるよう腰を左右に揺らすと、俺はさっさと体を離した。
あれほど強引に迫った俺があっさりと行為をやめたからか、柚ねえは唖然とした顔でしばし固まっていた。
我慢汁が少量出てきたのをテーブルにあったティッシュで拭うと、大きくなったモノを中へとしまい込む。
それから、ダイニングに向かおうとするも、柚ねえに動く気配が無かった。
返事が無いのも気になり、振り返ると、
「え」
直前に迫ったクッションが目に映り――直後に、俺の顔面にクリーンヒットした。
重力に従いクッションが床に落ちると、次にどこか強張った柚ねえの顔が視界に入った。
「……総くん」
「ゆ、柚ねえ……?」
「今日の総くん、自分勝手過ぎ! 遅くなっても連絡送らないし、寝てるわたしに勝手にマッサージするし、それにいつも直前で……あ、いや……とにかく!」
柚ねえはビシッと俺に人差し指を突きつけ、
「今日からマッサージは禁止! 『仕事』も我慢してもらうから!」
ご立腹といった様子の柚ねえはそそくさと隅に置いてあった服を着だして、食卓へと向かった。
(……やっちまったか……完全に感覚がマヒしてた)
流石にまずいと思って、俺はなにか弁明の言葉を探した。
「えと、ごめん柚ねえ。柚ねえがそんなにマッサージが嫌だとは……」
「そうじゃないの。お姉ちゃんが怒ってるのは、違うところ」
(言葉を間違えたか。じゃあ……あれ? 今のって)
俺は疑問に思ったそれを、口に出した。
「じゃあ、あのマッサージは嫌いじゃない、ってこと?」
「……っ! もう! 早く着替えて、手ぇ洗ってきなさい!」
「わ、分かった!」
いつもとは違う強気な柚ねえに圧倒されながら、俺は急いで着替えに向かった。
■
その日の内に柚ねえの機嫌を直すことは出来なかった。
もちろんマッサージもしていない。
初めてのことではないけど、やはりこのときばかりは情欲が引っ込み、申し訳ない気持ちになる。
(柚ねえだって、聖人じゃないんだものな)
生活面でもそうだが、俺は情欲処理の面でも柚ねえに甘えていたのかもしれない。
これからは強引な手を使うのは控えた方が得策か。
(まぁ――)
もちろん、計画を諦める気はさらさらなかったわけだが。
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