田端 信太郎さんの「バイラルメディアは二重の意味でダサい」という記事、非常に共感しました。海外で流行っている記事を翻訳し、ちょっと見せ方を変えてPVを集めるメディアはスピリットがなく、そこに投資家がお金を出すから二重にダサいという指摘、その通りだと思います。
さらに一つ加えると、バイラルメディアは大して付加価値を提供していないのに、サイトオープン一週間で○○十万PV達成など、自分たちでプレスリリースを出したり、メディアが取り上げたりするため、三重にダサいのではないかと思います。
Facebookなど様々な企業の役員を務め、テック界の未来予言者であるマーク・アンドリーセン氏は、「もうPV(アクセス数)やUU(訪問者数)を分析するのは時間の無駄だ!」と名言していますが、AJAXやJavascriptなどリロードしなくても、コンテンツがどんどん読み込まれる仕組みが普及しているため、これからどんどんPVの重要性は低下していくのは間違いありません。
↑もうアクセス数を分析するのは時間の無駄 (Pic by Flickr)
日本でもPVを稼ぐために「次のページへ」と、一つの記事を複数のページに分散しているメディアサイトが多くありますが、Twist Imageの代表を務めるMitch Joel氏は「一つの記事が1ページ内で読めない記事は、できるだけ読まないようにしている」と述べており、○○PVを達成しましたと告知するのがダサい時代になってきているのかもしれません。
↑Mitch 氏「もうPVを自慢する時代ではない。」(Pic by Flickr)
広告で収益を得ているメディアにとって、「アクセス数=お金」なので、とにかく数字で広告主を説得し、マネタイズしようとしますが、記事を読んでいるユーザーにとってはどうでも良いことですし、毎月アクセス数をキープしようと頑張れば頑張るほど、メディアのスピリットが失われていくように思います。
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンがグーグルを創業する前に発表した論文には、「広告は検索結果を汚染させる」と書れています。もし、検索結果と広告が混合していたら、利用者はその検索結果をかき分けるようにして、自分が読みたいウェブページにアクセスしなければなりません。
そこで彼らが考えた方法は検索結果と広告を完全に分けることでしたが、とにかく自分たちが理想とする検索エンジンを壊さないように脳みそに汗をかくほど考えたのではないかと思います。(Googleの哲学)P163
グーグル創業者「自分たちが理想とする検索エンジンを絶対に壊さない」(Pic by Flickr)
さらに余談ですが、グーグルには A株、B株、そしてC株と三種類の株があり、A株には1株1票の議決権がありますが、B株には1株につき議決権が10票あります。(C株には議決権がない)
2004年の上場当時、創業者の二人はこの B株を84%持っており、これは全体69%の議決権を保有していることになります。
↑短期的な利益のために自分たちは壊さない。(Pic by Flickr)
広告主を気にすることで、そちらの思想に傾き、メディアの本質が崩れてしまっては何の意味をもありません。早期にマネタイズするメディアが増えれば増えるほど、世の中がどんどんつまらなくなっていくような気さえします。
コンテンツを自分たちで考えず、とりあえずPVが集まればとそこに投資家がお金を出し、さらにそれをニュースやプレスリリースなどで自慢するから三重にダサい。
利益を出さなければビジネスとして成り立ちませんが、「マネタイズ」の方法一つとっても、自分の頭で考える時代にさしかかっているのではないでしょうか。