バードの法則

事故の発生確率を表す目安に「バードの法則」がある。米国の労災研究者フランク・バードが１９６９年に、保険会社で扱った１７５万件の事故を分析した。すると１件の重傷事故の裏に軽傷１０件、物損３０件、事故に至らないミス６００件があった計算になるという▼ピラミッドの形のように大事故は少ないが、底辺には似通った危険がたくさんある。油断の積み重ねが重大な問題につながるのだろう。一歩間違えれば命に関わる交通機関ではなおさらだ▼ＪＲ北海道の不祥事が後を絶たない。列車の制限速度違反が判明したと思ったら、先週は自動列車停止装置のスイッチを入れずに走行していた▼幸い、大事に至らなかったものの、後でぞっとした人もいたのでは。安全に直結するミスなのに公表していなかったのも、逆に不安にさせる▼エア・ドゥも、社員が機体整備データを改ざんし、点検期限を過ぎたまま運航していた。社員は、ばれなければ良いと思ったのか。「北海道の翼」の「安定飛行」に期待していただけに残念である▼人間は不都合なことがあれば隠蔽（いんぺい）や改ざんをしがちだ。失敗学が専門の畑村洋太郎さんの説明が、分かりやすい。＜お天道さまに向かって堂々と話せないものは、失敗に結びつく＞（「回復力」講談社現代新書）。組織の論理や保身を優先すれば、かえって問題がこじれる。理にかなわない行動の代償は大きい。２０１４・１０・７