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田中均の「世界を見る眼」

困難な日韓関係の打開を図るにはどうすべきか?
未来を見据えた「大人の関係づくり」への提言

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第37回】 2014年10月15日
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ますます困難となる日韓関係
基本的スタンスの確認が必要に

 日韓関係は1965年の国交正常化後、最悪の状態にあるとされる。慰安婦問題を契機として韓国政府、特に朴槿恵大統領は、第三国においても日本批判を繰り返し、歴史問題で中国と共闘する気配を見せてきた。

 韓国の対日感情や日本の対韓感情は、悪化の一途を辿っている。ここへきて慰安婦雇用の強制の証拠とされた「吉田証言」は虚偽であったとする朝日新聞の検証結果もあり、日本側が慰安婦問題でこれまで以上の新たな方策を講じるのは、ますます困難となっている。産経新聞前ソウル支局長の名誉棄損起訴も、日韓関係に困難な要因を持ち込んでいる。

 今のところ日韓関係の現状を打開できる展望は見い出せない。来年は戦後70周年であるとともに、日韓の国交を正常化した日韓基本条約締結50周年である。現状のまま来年を迎えれば、民主主義的価値を共有し米国の同盟国であり、本来最も重要な隣国であるはずの韓国との亀裂が、決定的になるような気がしてならない。

 日韓双方は小手先ではなく、長期的視野に立って日韓関係を見直し、関係打開のためには何をする必要があるのか、真剣に考えるべきときに来ているのだろう。

 筆者は本年7月の本コラムでも、日本と中国及び韓国との関係悪化の背景や、悪循環を止める方策を提言している。本稿では、一向に改善の兆しを見せない日韓関係に的を絞り、日韓双方が相手に対する基本スタンスを再確認することが必要である点につき、議論したいと思う。

 1998年に金大中大統領が訪日した際、小渕首相との間で行った日韓共同宣言は、未来志向の日韓関係を将来に向けて基調設定する意味で、特筆するべき宣言であった。この宣言の中で日本は過去について改めて謝罪をし、双方が過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好に基づいた未来志向的な関係を発展させることを約したのである。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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