- トップページ
- 機関紙「家族と健康」
- 【第726号】 平成26年9月1日発行(2014年)
【第726号】 平成26年9月1日発行(2014年)
9月号の目次 「家族と健康」有料購読の申込みはこちら
|
1面 ・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ委員会、本会に発足 |
3面 ・第37回性教育指導セミナー全国大会(滋賀)開催 他 |
6面 ・職域保健の現場から<23>健愛クリニック 健診センター千住曙 保健師 菅原美鈴 |
7面 ・海外情報クリップバーススペーシングと低出生体重児/ハイスクールの生徒の性と生活/十代とセクスティング |
平成26年度 健やか親子21全国大会(母子保健家族計画全国大会)に向けて |
|||||||
本年度の健やか親子21全国大会(母子保健家族計画全国大会)を、11月25日㈫~27日㈭の3日間、愛媛県松山市(ひめぎんホール)で開催します。
笑う赤ちゃんを見たとき、人は自然と「笑顔」がこぼれます。そしてその赤ちゃんが健やかであれと願う心の根底には「愛」があります。「愛」と「笑顔」が結ばれて生まれるのが「愛顔(えがお)」です。わが国は少子高齢社会となり、さまざまな社会問題による危機感・閉塞感が漂う中にあって、改めて、子どもと母親を大切にし、父親・家族・地域住民みんなで、子育てに取り組み、応援し、子どもの未来をつなげていくことが大切になっています。子どもと母親を地域の宝とし、「愛顔(えがお)」のみんなが子どもを育てる、そんな地域にこそ未来はあるものと考えます。
山縣教授は厚生労働省の「健やか親子21」検討会委員として、現計画の策定や評価、次期計画に係る報告書の取りまとめに携わっておられます。
***************
【主 催】
▼11月27日㈭
【会 場】
併設開催
「無月経」「骨粗鬆症」「摂食障害」を女性アスリートの3主徴といいます。
【テーマ】 「女性アスリートへの健康支援~親として、指導者として知っておいて欲しいこと~」
|
編集帖 |
▼低用量経口避妊薬(ピル)がわが国で発売されたのが1999年9月2日のことだから、今年でちょうど15年目を迎えている。米国での承認・発売が1960年ということは、米国に遅れること実に40年。世界で最後の承認国となった日本。その日本で、ピルは日本人女性に受け容れられているのだろうか。この間、2008年と2010年には月経困難症治療剤であるLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン)剤が発売されるなど新しい動きも起こっている。
▼私どもが収集したデータによれば、ピルとLEP剤を足し合わせた服用者は推計132万人(2013年)。「第6回男女の生活と意識に関する調査」結果では、わが国の16歳から49歳の婚姻・同棲関係にある女性でのピルの使用率は3・5%。フランス40・6%、オランダ40・0%(2013年国連報告)など他の先進諸国に比べて使用率が低い。
▼本会では、ピル発売から本年8月末までに、ピルの普及を目指した医師向けセミナーを全国で35回、コメディカル中心の「指導者のための避妊と性感染症予防セミナー(SRHセミナー)」を116回終えている。このようなたゆまぬ努力の甲斐あってか、「自分の意志で避妊できるピル」を選択する女性は着実に増え続けている。
▼その一方で、昨年12月以降、ピルやLEP剤服用に伴う血栓症死亡が話題になり、服用者は言うまでもなくピルを処方する医師の側にも動揺が拡がっている。ピル発売以来の危機的状況にあると言っても過言ではない。 ▼今後日本人女性はピルやLEP剤を安心、安全に使用していけるのか。9月1日には、これらの疑問に答えるためのメディアセミナーを開催することとしている。(KK)
|
インタビュー 子宮頸がん予防、わが国の課題 |
||||||||||||||
子宮頸がん、予防の手を緩めずに
インタビュー 子宮頸がん予防、わが国の課題
自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授 今野 良
昨年6月、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の定期接種の積極的勧奨が中止されてから、1年以上が経過しました。ワクチン接種後に報告された、痛みや運動障害などの有害事象への対応が問題となっています。これらについて厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会では、ワクチン自体との因果関係は乏しく、機能性身体症状であると判断しながらも、厚生労働省での結論が出されていません。一方、この間にHPVワクチンの接種者は激減し、わが国の子宮頸がん予防における、将来への影響も懸念されています。この問題について、長年にわたり子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV)の研究・啓発活動に取り組む、今野良氏にお話を伺いました。(編集部)
WHOがワクチンの安全声明を提示
世界で2億回も接種されているHPVワクチンの安全性に関する声明が、WHOのワクチンの安全性に関する専門委員会(GACVS)から昨年の6月(図1)と12月、そして今年3月と、3回、出されています。日本で今起きている問題を考慮したうえで、安全なワクチンであること、このワクチンを接種しないことによる将来への懸念を強調しています。
登録制度がなく疫学的評価ができない
HPVワクチンについて、英国、米国、オーストラリアなどの政府、WHOあるいは国際産婦人科連合では、「このワクチンは大丈夫」と言っています。日本でこのような問題が起きていることを承知したうえでも、同様の判断です。
検診の恩恵を受けている人はたった25%
子宮頸がん検診の対象年齢は、20歳以上です。「子宮頸がんは、がんという個人の問題なのだから、ワクチンを接種しなくても、検診さえ受ければいい」という意見があるようですが、これは子宮頸がんという病気の真実を知らない方の意見です。しかも残念なことに、現在の検診受診率は2年に1回検診を受けている人で30数%、毎年受けている人は25%です。
制度の不備のしわ寄せが社会的弱者に
日本は結局、がん検診の受診率を上げられないでいます。メタボ健診は医療保険者に検診を受診させる義務があり、とにかく「受けろ、受けろ」といろいろ対策を行っています。ところが子宮頸がんに限らず、がん検診はどこにも受診させる義務・責任がありません。
がん検診受診率向上の仕組みづくりを 英国やオーストラリアでは、英語の読めない人たちのための他言語のパンフレットが10も20もあります(写真1)。招待状の届かないホームレスの人には、食事を提供する教会などに行って、その人たちを「検診に行こう」と連れて行きます。
オーストラリアには、先住民のアボリジニの人たちがいます。英語が読めず、別の文化で生活をしていて検診を受けないために、がんの発生率が高いそうです。アボリジニの人口は本当に少ないのですが、それでもアボリジニ用の紙芝居などを作って、アボリジニで英語を話せる人と一緒に、「検診を受けよう」と受診勧奨をしています。
将来の健康格差を生まないように
一方、ワクチンの必要性について検討するとき重要なのは、それがどんな病気で、そのワクチンを接種しないとどのくらい問題が発生して、接種するとどのぐらいその問題が解消されるかということです。
7割の人が接種すれば集団免疫効果が出る
「HPVワクチンは個人防衛のワクチンである」と言う人がいます。「がんは個人の問題だ」と。それも間違っています。がんの多くは、直接の原因がまだよく分かっていません。例えば、肥満という生活習慣で発生するものは、個人の問題と言えるかもしれません。
オーストラリアでは男子にもワクチンを接種
HPV感染は、男女間で行ったり来たりしています。そこでオーストラリアでは、昨年2月から男女にワクチンを接種しています。かつては、女子だけをワクチン対象として接種率が7割以上になれば、女子がHPVを持たなくなるので男子にうつすことがなくなるから、子宮頸がんの予防は、理論的にはそれだけで足りるといわれていました。
HPV感染を防ぐワクチンの効果
「ワクチンを接種しても、効果が長続きしないのではないか」と言う人もいます。HPVワクチンは2価と4価、両方とも出てから約10年たちましたが、10年間は完璧に効いています。HPV16型、18型に関しては、ほぼ100%の効果が出ています。
慢性疼痛に悩む子どもの存在が明らかに
思春期の子どもに限らず、痛みや不随意運動で苦しんでいる人々はなかなか診断がつかず、適切な治療を受けることが難しいようです。同じ症状が常に出ている場合、例えば右の脳に異常があるから、左半身が動かないというときは、何か器質的な問題があると分かります。ところが、昨日は痛いけれど今日は痛くない、昨日は倒れるけど今日は倒れないというのは、器質的な問題ではなく、機能性症状だと判断されます。世の中にそういう症状で苦しんでいる子どもたちが相当数いるということが、HPVワクチンを接種するようになって、あぶり出されました。
機能性身体症状で、原因がはっきりしないけれども、ともかく「痛い」という人たちの治療について、日本は遅れています。大切なのは、心と体の両方からアプローチするということです。
将来の家族と健康のために
機能性身体症状には包括的な取り組みが必要
「木を見て森を見ず」にならないで メディアの影響は非常に大きいです。今回、ニュースで流れた衝撃的なビデオ映像で、多くの人がこれはワクチンが原因だと誤解しましたが、HPVワクチンが原因だと検証されたものではありません。しかし、今回、子宮頸がんワクチンが「悪者」扱いされてしまったせいで、「子宮頸がん検診を受けましょう」というキャンペーンも、今、全国的に非常に停滞しているそうです。医療や教育、行政の現場の人たち、そして保護者の方々には、事実を正確に分かってほしいと思います。
これを機会に、日本も改善すべきところをどんどん改善すべきです(表2)。HPVワクチンの積極的勧奨は当然再開すべきですし、世界のさまざまな優れた仕組みや制度を学ぶべきです。
|
平成26年度ブロック別母子保健事業研修会のご案内 |
平成26年度 ブロック別母子保健事業研修会
本会では、各都道府県との共催により、全国でブロック別母子保健事業研修会を開催いたします。母子保健従事者皆様の受講をお待ちしております。
■受講料 無料
【東北・北海道地区】
|