インターネットの最新トレンド、アプリUnbundling の動向を徹底解説

インターネットの最新トレンド、アプリUnbundling の動向を徹底解説

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こんにちは、nanapiマーケ室です。

最近インターネットでは、アプリの「アンバンドリング」に関する話題が多くなってきました。

通常での「バンドル」とは「ある製品を販売する際に、別の製品を付随させる」ことをいいます。また、「アンバンドリング」は、バンドルしていたものを別々に売ることです。

対して、昨今で使われる「アンバンドリング(unbundling)」とは、複数の機能をもったアプリを分解し、それぞれに1つの機能を持ったシンプルなアプリに機能を分割することを指します。

先日は、ベンチャーキャピタルAndreessen HorowitzのパートナーBenedict Evansさんのアンバンドリングに関する記事を紹介しました(以下)。

«アプリのアンバンドリングとサーチ、ディスカバリーに関して | nanapiマーケティングマニア

今回の記事では、別の観点からアンバンドリングのトレンドを紹介します。

Foursquareに見られるアンバンドリングの流れ

新アプリ「Swarm」と新しくなった「Foursquare」

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2014年8月6日、Foursquareは、従来の主要機能であったチェックイン機能を完全に排除した、新バージョンのFoursquareアプリをリリースしました。

新アプリである「Swarm」には、「Foursquare」の象徴だったチェックイン機能が全面的に移行されました。チェックインした場所付近にいる友達を表示し、メッセージをやりとりすることができます。

一方、バージョンアップされた「Foursquare」では、チェックイン機能がなくなり、「ローカルサーチはユーザーの好みに合わせてパーソナライズされるべきだ」という信念のもと、ユーザーに最適なローカルスポットの発見を促す機能にフォーカスされています。

アンバンドリングに対するユーザーの反応

Foursquareがおこなったアプリの分割に対して、ユーザーはどのような反応を見せているのでしょうか。2014年10月11日時点でのAppStore、Google Playストアでの、「Foursquare」「Swarm」のアプリレビューは以下のようになっていました。

»AppStoreでのアプリレビュー(全てのバージョン)
- Foursquare:「3.5」(App Store – Foursquare)
- Swarm:「2.0」(App Store – Swarm by Foursquare)

»Google Playでのアプリレビュー
- Foursquare:「4.1」(Foursquare – Google Play)
- Swarm:「3.6」(Swarm – Google Play)

AppStoreでは酷評が目立つのに対し、Google Playでは高い評価の割合が多く、一概にユーザー反応の良し悪しを判断することはできません。ただし、Twitterでは「Kill Swarm」というアカウントが作られるなど、チェックイン履歴を失ったことでアプリに不満を持つユーザーは一定数いるようです。

Facebookに見られるアンバンドリングの流れ

「Messenger」アプリのダウンロードが必須に

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Facebookでも、アプリをアンバンドリングする動きが見られます。2014年4月には、「今後、ユーザーがスマートフォンからメッセージを送るには、FacebookのMessengerアプリをインストールすることが必要になる」と公表していました。

Re/codeの記事よると、ヨーロッパでのテスト導入に続き、8月からはアメリカ国内限定で、Facebookアプリ本体でメッセージを利用したユーザーに対し7日間の猶予を設けて「Messenger」のダウンロードを促し始めています。

また、ニューヨーク・タイムズのインタビューで、CEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は次のように明言しています。「So what we’re doing with Creative Labs is basically unbundling the big blue app(我々がクリエイティブ・ラボで行っていることは、基本的に(Facebookという)青い大きなアプリを分解することだ)」。この発言からも、Facebookがアプリのアンバンドリングに注力していくことがうかがえます。

Googleに見られるアンバンドリングの流れ

Driveアプリを「Google Docs」「Google Sheets」「Google Slides」に分割

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2014年4月30日、Googleは新アプリ「Google Docs」「Google Sheets」をリリースし、従来のDriveアプリにあったドキュメントとスプレッドシートの作成/編集の機能をそちらのアプリに移行しました。また、8月25日には、プレゼンテーションに対応した「Google Slides」も、リリースされました。

従来のDriveアプリもコンテンツの保管・閲覧ツールとして引き続き利用可能ですが、GoogleはDriveアプリ本体で資料を編集しようとしたユーザーに対して、アプリ内のメッセージで新アプリのダウンロードを促しています。

スマホ・タブレットの時代に最適化

今回のアンバンドリングによって、Driveアプリ本体の機能はドキュメント/スプレッドシートの閲覧や共有のみに限定されました。それに伴い、従来の編集機能はGoogle Docs、Google Sheets、Google Slidesが個別に対応しています。また、オフラインでの編集が可能な点もユーザーから支持を得ているようです。アプリストアでのレビューは以下のようになっていました。

»AppStoreでのアプリレビュー
- Google Docs:「4.0」(Google Docs – App Store)
- Google Sheets:「4.0」(Google Sheets – App Store)
- Google Slides:「3.5」(Google Slides – App Store)

»Google Playでのアプリレビュー
- Google Docs:「4.1」(Googleドキュメント – Google Play)
- Google Sheets:「4.2」(Googleスプレッドシート – Google Play)
- Google Slides: 「4.2」(Googleスライド – Google Play)

日本国内でのアンバンドリングの流れ

「mixi」に見られるアプリのアンバンドリング

海外での動きに比べ、日本国内で複数機能を持ったアプリを分割するアンバンドリングの動きは、今のところ少ないようです。そんな中、日本発のソーシャルネットワークサービスである「mixi」は、2013年の段階で既にアプリのアンバンドリングを進めていました。

2013年10月にリリースした「mixiコミュニティ」「mixiトーク」に続き、同年12月には「mixiニュース」「mixi日記アプリ」をリリース。mixiアプリ本体にあった複数の機能を分割し、それぞれ1つの目的を持ったアプリに分割しています。

Webでは1つだったサービスが複数のアプリに分割される

ここまで紹介してきた、「本来1つだったアプリを複数に分割する」アンバンドリングの文脈からは多少逸れますが、最近では「Webで1つであったサービスを複数のアプリに分割する動き」も多くなってきました。

たとえばYahoo!では、ポータルサイトである「Yahoo! JAPAN」にあるニュース、ショッピング、天気予報などの機能を、「Yahoo!ニュース」「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!天気」「Yahoo!乗り換え案内」といった、それぞれに1機能を持ったアプリに分割しています。

複数の機能を持った複雑なWebサービスを、1つの機能のみに絞ったシンプルなアプリに分割していく動きもまた、インターネットの動向を把握するうえで注目したいところです。

アンバンドリングに向いているアプリとは?

テック企業各社で進むアプリのアンバンドリングの流れを見ていくなかで、「どんなアプリがアンバンドリングに向いているのか」という疑問が生まれます。

この点について、シリコンバレーに本拠地を置くVCである「Greylock Partners」のJohn Lily氏は、re/codeのインタビューに対し、「アプリ内で、ユーザー(の特徴/行動)が明確に分かれているサービス」と指摘しています。

例えば「Airbnb」のように、アプリ内で「部屋を借りるユーザー」と「部屋を貸すユーザー」が明確に分かれている場合、アプリをアンバンドリングするのは良いアイデアと言えそうです。また、上にご紹介したGoogleのDriveアプリの事例でも、アプリ内で「ドキュメントを編集するユーザー」と「スプレッドシートを編集するユーザー」を明確に区別することができます。

多くのアプリのなかでアンバンドリングすべきアプリを識別する基準として、「アプリ利用者の特性を明確に区別できるか」という視点は重要であると言えそうです。

アプリコンステレーション

また、アプリのアンバンドリングの流れを、「App constellation」(アプリの集まり※constellationは星座という意味も含む)と表現することもあるようです。

Union Square Venturesの共同創業者である著名なベンチャーキャピタリストFred Wilson氏は自身のブログで、Facebook、Google、Fouraquare、Twitter、Dropboxをはじめ、あらゆるリーディングカンパニーがApp constellationの流れに向かっていることを指摘し、「モバイルでは多くの機能を1アプリに詰め込むことは正しい道ではない」と述べています。

機能を分割したアプリの集合体を持つことでユーザー体験を高める動きが各リーディングカンパニーで見られることからも、アプリのアンバンドリングの流れは今後も続きそうです。

中国マーケットで進むサービスのバンドリング

ここまで紹介してきたアンバンドリングの動向とは正反対の流れが中国のインターネットマーケットで見られます

先日の記事でも紹介しましたが、「Baidu Maps」と「WeChat」は、複数の機能を1つのアプリにバンドリングすることよって成功を収めています。

「Baidu Maps」に見られるバンドリングの事例

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中国最大のインターネット検索サービスを運営するBaidu(バイドゥ)の「Baidu Maps」では、従来のマップアプリの主要機能である場所の検索に加え、マップ内でレストランや映画の予約、タクシーの手配をすることができます。

「WeChat」に見られるバンドリングの事例

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2014年8月に月間のアクティブユーザーが4万3千800人に達したことが報じられたメッセンジャーアプリ「WeChat」では、コアであるチャット機能だけでなく、タイムライン上で友達と写真を共有できる「Moment」機能や、アプリを同時に使用している全てのユーザーを表示して友達に追加できる「Friend Rader」、位置情報を読み取り近くのユーザーを表示する「People Nearby」など、多くの機能が統合されています。

アプリの機能を分割し、シンプルにすることでユーザー体験を高めるアンバンドリングとは反対に、機能を統合することによってアプリの利用価値を高める「Baidu Maps」「WeChat」両者の取り組みは、アンバンドリングと逆をいく動きであり、動向が注目されます。

iOS8によってアプリのバンドル販売が可能に

iOS8の新機能に、アプリのバンドル販売の仕組みがあります。この「App Bundles」によって、複数のアプリをセットにして販売することが可能になりました。

現段階では、複数のゲームアプリをセットにし割引価格で販売する動きがあり、スクエアエニックスは「FINAL FANTASY 6+1-in-One」(App Storeへリンク)で、複数のゲームアプリを30%オフで販売しています。

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これまで、アプリ開発側には、ニーズのない機能をアンバンドルしても、ユーザーにダウンロードされないリスクがありました。しかし、バンドル販売によってユーザーが複数のアプリを一度にダウンロードできるようになったため、開発側がアプリをアンバンドリングしやすくなったという見方があります。

今後、アプリのバンドル販売が一般化すれば、たとえばフェイスブックがInstagram、Facebook Messenger、Hyperlapseなどの自社アプリをバンドル配信する、といった動きが出てくるかも知れません。

nanapiでも

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実は、nanapiでもある種のアンバンドリングをしています。

nanapiでは、10万以上のハウツー記事を紹介していますが、「子育て大丈夫ねっと」では育児に関する情報だけを切り出し、1つのウェブサイトにしています(以下)。

«育児の悩みを解決するレシピが200以上! | 子育て大丈夫ねっと

また、アプリ版でも、育児ハウツーを1つの独立したアプリにまとめています(以下)

«育児の悩みを即解決するレシピ200以上!子育て大丈夫ねっと – Google Play の Android アプリ

nanapi(本体)・子育て大丈夫ねっと(ウェブ)・アプリで、再訪数・平均滞在時間を比較したところ、両者ともに「nanapi < 子育て大丈夫ねっと(ウェブ) < アプリ」という数値結果になりました。特に平均滞在時間は、アプリがnanapiの3倍以上長くなっています。

おわりに

今回は最近インターネットで話題となっている、アプリの「アンバンドリング」や、中国で進むアプリの「バンドリング」の流れをご紹介しました。

Foursquareの事例からわかるように、アプリのアンバンドリングはユーザー体験の質を下げてしまうリスクをはらんでいます。しかしながら、同時にFacebookやGoogleといった大手プレイヤーの動きを見ていると、アンバンドリングによる「1アプリ1機能」の動向は、重要なトレンドでもあります。

また、以下の記事ではアプリのサイズという観点からアンバンドリングの分析しています。是非ご覧ください。

«アプリのアンバンドリングは新興国市場参入に際しても重要な施策 | nanapiマーケティングマニア

参考サイト

»The Foursquare Blog — A look into the future of Foursquare, including a new app called Swarm
»This Is The New Foursquare | TechCrunch
»The Facebook Messenger App Split Is Here | Re/code
»Can Facebook Innovate? A Conversation With Mark Zuckerberg – NYTimes.com
»Why Large Tech Companies Are App ‘Unbundling’
»Google Drive Blog: New mobile apps for Docs, Sheets and Slides—work offline and on the go
»Google Unveils Google Docs and Sheets for iOS
»App unbundling, search and discovery — Benedict Evans
»WeChat Climbs to 438 Million Monthly Active Users
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