東日本大震災で震度5強の揺れに見舞われた東京では、高層マンションを含めた通常の耐震構造の建物で倒壊や損壊などの大きな被害を受けたものはなかった。最大震度6強だった仙台においても、外壁などに大きな亀裂が生じて全壊判定を受けたマンションはかなりの数に上ったが、地震による倒壊・大破はなかった。
■新耐震基準は1981年以降
阪神大震災の際には大破が1.6%、中破が2.1%、小破が6.7%だったが、それらはほとんどが1981年6月以降の「新耐震基準」を満たしていない、いわゆる「旧耐震」のマンションであった。つまり、現在の新耐震基準を順守して、しっかりとした耐震構造で造られているマンションであれば、大地震の際も建物自体が倒壊するような被害はまずないということだ。
ただし、建築基準法の耐震基準は、建築基準法第1条に「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて(以下略)」と明記されている通り、あくまで必要最低限の基準であることに注意したい。
住宅の各種性能を等級や数値で示す「住宅性能表示制度」では、耐震等級の性能表示は3段階あり、新耐震基準のレベルは最下層の「耐震等級1」に位置づけられている。「耐震等級2」は1.25倍相当、「耐震等級3」では1.5倍相当の耐震性を有する。
耐震等級1 | 新耐震基準(建築基準法をギリギリ満たす) |
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耐震等級2 | 建築基準法の1.25倍の強さ(学校・警察など公共施設レベル) |
耐震等級3 | 建築基準法の1.5倍の強さ(病院など公共施設レベル) |
■新築マンションは「耐震等級1」が多い
ところで、一般的には「マンションのほうが、一戸建てよりも地震に強い」と思われている。しかしこれは多分に誤解を含んでいることを知っておこう。実は、新築マンションは住宅性能表示でいえば「耐震等級1」。つまり、最低限のレベルであることが多い。
最低限の耐震等級であっても、震度6強から震度7程度の大地震に見舞われた際に建物が倒壊せず人命が損なわれないという、最低限のレベルの安全性は確保されている。ただ、等級度合いが高まるほど、建物の損傷の度合いは軽くて済む。新耐震基準を満たした耐震等級1では建物が倒壊しなかったとしても、壁や柱がひび割れて大きく損傷を受ける可能性はあるということだ。そうした際には、大規模な補修をしなければ住めない、もしくは建て替えが必要となるケースもあり得る。