思わぬ台風余波 東急線で電車が来たのに遮断棒が上がる
台風余波で、遮断棒が上がり電車が踏切通過―。14日午前5時15分ごろ、東京都大田区の東急多摩川線矢口渡(やぐちのわたし)―蒲田間の踏切で、遮断棒が上がった状態で電車が通過するトラブルがあった。けが人はいなかった。東急は、台風19号の影響で雨が降った後、急速な天候回復でレールが乾いてさびたため、電車の接近を検知する電流がレールを流れなかったとみており、原因を調べている。
台風19号の余波が、思わぬところで起きた。
東急によると、14日午前5時15分ごろ、東急多摩川線多摩川発蒲田行き下り始発3両編成の普通列車が矢口渡駅を出発。踏切844メートル手前の地点では遮断棒はいったん下りていた。しかし、54メートル手前まできて運転士が遮断棒の降下完了を示す線路沿いの信号が消灯したのに気付き、非常ブレーキをかけたが間に合わず踏切を時速53キロのスピードで通過した。
踏切で4本の遮断棒が上がりっぱなしの状態は約15秒間続いたが、警報機は点滅、鳴動していた。早朝だったこともあり人通りはほとんどなく、トラックが1台止まっていただけで、幸いけが人はいなかった。
問題の踏切は蒲田駅から約400メートル。幅12・1メートル、隣接して東急池上線の踏切もあり、長さは39・7メートルで東急電鉄計8線の中でも3番目の大きさだという。また、商店街が近くにあり、日中は人通りや行き交う車も多い。多摩川線の矢口渡駅での平日下り線は午前5時台は4本で上り線は5本だが、午前8時台のラッシュ時になると、下り線は19本、上り線は16本。ひっきりなしに遮断棒が上下する。
東急は、台風19号で大雨が降った後に、急速な天候回復でレールが乾いてさびたため、電車の接近を検知する電流がレールを流れなかったとみて原因を調査中。さびは赤さびではなく、まくのようなさびで拭けばすぐ取れて、電車が上を通過するとはじけ飛ぶようなものだったという。
トラブルの後、同線のレール上のさびを落とした上で、沿線24か所の踏切の手前で止まり、低速で通り過ぎるといった確認を2時間ほど行い、午前7時40分ごろには通常運転に戻した。大幅にダイヤは乱れたが、運休は出なかったという。
踏切近くの公園で1歳の男児を連れて散歩していた主婦(27)は「スーパーの買い出しなどでよく通る場所なので怖いです」と不安な様子だった。
東急によると、08年10月にも東急大井町線の緑が丘―自由が丘間で同様のトラブルがあった。東急は「心配かけ、深くおわびする」とコメントした。