ササニシキはなぜ消えたのか?

米離れの時代でも味をめぐる品種競争は激化

2014.10.10(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 こうしたブランド米がしのぎを削る中、不動の人気を誇るのが「コシヒカリ」だ。いろいろな産地のコシヒカリがあるが、「やはり、人気があるのは、新潟県魚沼産です。贈答用によく使われています」と同店員が続けた。

トップを独走するコシヒカリ、消えたササニシキ

 コシヒカリは、日本で一番人気のある品種だ。歴史は古く、1944年から育成が始まった。53年に福井県で育成された系統から「越南17号」が誕生し、コシヒカリと名付けられた。越の国(越前、越中、越後、加賀)に光り輝く稲という意味だという。56年には、新潟県の奨励品種に指定された。米の奨励品種の作付け年数は10年と言われており、やがて新品種に取って代わられるはずだった。

 ところが、50年以上も作付けが続き、作付面積は79年から1位を維持している。現在では、全国の水田の約4割で作付けされている。

 これほどコシヒカリが多く栽培されているのは、東北や北陸の米どころの気候に適しているのはもとより、四国や九州など暖かい地方でも実り良く収穫できるためだ。そして何より、色、ツヤ、香り、粘り、軟らかさともに優れている。粘りやうま味が強く、炊き込みご飯や寿司にしてもおいしいと評判が高い。

 一方、かつてはコシヒカリと並ぶ人気の品種だったササニシキを見かけることが少なくなった。63年に誕生し、85年から93年までは、作付面積2位を維持してきた。ピーク時には20万ヘクタール以上もあった作付面積が、2013年には3000ヘクタールまで減り、上位から完全に消えてしまった。

うるち米の品種別作付割合
(参考:食糧庁『平成4年産米穀の品種別作付状況』、米穀安定供給確保支援機構『平成26年産うるち米の品種別作付動向について(速報)』をもとに作成)
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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。


食の安全に対して国民の関心が高まっている。国民が健康を意識しているのはもちろんだが、今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。このコラムでは、日本や世界における食の安全への取り組みを様々な角度から取り上げていく。